ピアノの鍵盤は見たことがある_2019123017320000

第10回 倍音とオクターブの関係

📚[📖楽典]倍音
📚[⌁音響物理学]周波数、ヘルツ、倍音
📚[🎻楽器法]弦楽器

 楽譜の読み方を説明するときに、第7回で「アタック」と「リリース」という言葉が出てきたけれども、覚えているかな。
 音の仕組みをあらわす言葉はいろいろあるんだけれど、そのひとつに「ADSR」というのがあるんだ。これは「アタック」「ディケイ」「サスティーン」「リリース」の4つの英語を略したものなんだけれども、楽器の音成分を4つの部分にわける考え方なんだ。
 この「ADSR」のことは第12回であらためて紹介するとして、今回はこうした音の仕組みについて考えてみようと思うよ。

 第0回でも少し出てきたけれど、音とは、物が振動することで発生するものなんだ。振動そのものと言ってもいいよ。逆に言えば、振動がなかったり、振動するようなものが何も無ければ、音は発生しない。宇宙空間には空気もないから、その振動を伝えるものが何もない。だから音もしないんだね。
 振動というのは簡単に言えば「ゆれ」のこと。地震が起きるとき、その直前にゴゴゴ…とかズズズ…っていう、低い低い地鳴りが聴こえることがあると思うけど、あれは地震の「ゆれ」そのものの音なんだ。地面を伝わるよりも空気中のほうが「ゆれ」の伝わりは早いから、地震で揺れるよりも早く、地鳴りの方が聴こえるんだ。

 糸とかゴムとかをぴんと張ってはじくと、びぃぃぃんと振動するよね。このとき音もすると思う。振動は目に見えないくらい早いから、どれくらい振動しているかを数えることはたぶんできないと思うけど、さっきの地震の地鳴りよりも高い音が聴こえるはずなんだ。地震はこんな猛烈なスピートで揺れたりしない。激しい地震だとしても、もっとゆっくりで、数えるくらいはできることのほうが多いはずなんだ。
 ここからわかるのは、振動の多さと音の高さは関係しているってこと。もっと具体的に言うと、振動の回数が多いほど、音は高くなるってことだよね。
 どのくらい振動するのか、というのを「周波数(しゅうはすう)」と呼び、その回数をあらわす単位を「ヘルツ」と言うんだ。これは1秒間に何回ゆれるのかを数えたもので、たとえば440ヘルツならば1秒間に440回振動しているということ。もちろんこんなのは目で見て数えられるようなものじゃないけどね。

 ところで振動の回数が増えれば増えるほど音は高くなるわけだけど、振動を波と考えたとき、2倍、3倍といった倍数の振動は、もとの回数の振動と、周期的に合わさるというのは、わかるかな。

波形_10_01

 上の図では、周期的に3つの波線がまじわっているのがわかるよね。
 2つ以上の音がきれいに響くことを「協和する(きょうわする)」と言い、くだけた言い方で「ハモる」とも言うんだけど、この周期的に振動が合わさるという現象。じつはこれが「音がハモる」ということの正体なんだ。
 ではここで問題。例えば「ド」の音があったとして、この音と一番ハモる音って何の音だと思うかな?

 「ソ」? 「ミ」? 違うなぁ。答えを聞いたら、なぁんだと思うけれど、それは「ド」の音。当たり前だよね。同じ音なんだから。「ド」と「ド」の音がハモる…ということは、オクターブ離れた「ド」の音もハモる。これも想像ができるね。
 どうしてオクターブ離れた同じ音はハモるのだろうね。じつは音は1オクターブ高くなると、周波数も倍になるんだ。つまり、オクターブとは倍音のこと。…わぁ! オクターブの正体がわかったね!

 周波数が倍の音のことを「倍音(ばいおん)」と言い、もとの音のことを「基音(きおん)」と言うんだ。この言葉は音が何であるかを考えるときには必ず出てくるから、よく覚えておいてね。
 つまり、ある音を基音としたとき、その音の1オクターブ高い音は倍音の関係にあるということだよ。

 周波数が3倍ならば3倍音、4倍ならば4倍音と言う。つまり「倍音」という言葉は単位として使えるということ。これも覚えておいてね。
 では、ここでまた問題。2倍音は1オクターブ高い音だったけれど、じゃあ2オクターブ高い音は何倍音かな?

 じつはこれ、ちょっと難しい算数で、ひっかけ問題かもしれない。3倍音って答えたくなるところだけど、違うんだ。1オクターブ高くなると2倍になるんだから、2オクターブならば2倍の2倍、2×2って考えなくてはいけない。だから4倍音ということだね。
 つまりオクターブ高くなっていくというのは、周波数は倍々になっていくということ。あれっ、音符の音価と同じで数が倍々になっていくんだ。

譜例_10_02

 ちなみに弦楽器ならば弦の長さが半分になれば周波数が倍に、管楽器も管の長さが半分になれば周波数は倍になるんだ。
 管楽器は簡単に管の長さを変えられないけれど、弦楽器ならば弦の真ん中を指で押さえれば長さが半分になるよね。ギターやヴァイオリンなどの弦楽器は指で弦を押さえていろんな高さの音を出すけれど、まったく弦を押さえない状態のことを「開放弦(かいほうげん)」と言って、この開放弦で弾いたときの音と、弦を真ん中で押さえたときの音とはオクターブの関係にあるわけだ。ということは、1/4の長さになる位置で弦を押さえれば2オクターブ高い音が出るということ。
 すごい、すごい。弦楽器の仕組みまで、わかっちゃった!

 というわけで、今回は「基音」「倍音」、そして「ヘルツ」という言葉と、オクターブとの関係について勉強したよ。物理学的な意味で音とは何か、という話は、あんまり音楽とは関係がなさそうだけど、じつはすごく関係があるんだ。
 次回はこの倍音について、もっと深く調べていくよ。そうすると、関係あるのはオクターブだけじゃないということがわかるんだ。お楽しみにね。

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