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第40回 連符とポリリズム

📚[📖楽典]連符
📚[🖋記譜法]連符
📚[🧩様式論]ポリリズム

 第6回で勉強したように、音価は基本的に全音符に対して何倍の長さ、または何分の一の長さかをあらわすもので、それは2倍、4倍、8倍とか、1/2倍、1/4倍、1/8倍のように倍々の関係になっている。そして、そうした音価では表現できない長さは、第7回で出てきたタイを使うのだけど、ところがこれでも、あらわすことのできない音価があって、それが第22回で出てきた「連符(れんぷ)」と呼ばれるもの。
 ここまでは覚えていると思う。

 ところで前回、グリッサンドの説明で、こんな連符が出てきたよね。

譜例_40_01

 説明しなくても気が付いている人もいるかもしれないけれど、これは「七連符(ななれんぷ)」と呼ばれるもの。この場合は、四分音符の長さ分の尺に7つの音符を入れているものだね。
 これよりも1つ音符が増えると8つで、つまり三十二分音符ということになるから、この七連符の音ひとつ分の長さは三十二分音符よりも少しだけ長いということになるのかな。

 ちなみに、正確にはこの七連符は「1拍七連符(いっぱくななれんぷ)」と呼ぶよ。四分音符、つまり1拍を7つに分けた長さということ。
 こういった呼び方は第22.2回で出てきたね。

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 もちろんできるよ。
 でも、呼び名は「1/2拍三連符」とか「半拍三連符」とか、あまり決まったものはないみたいなんだよね。
 もともと「何拍何連符」と言わなければならない場面は限られているから、そこまで気にしなくてもいいとは思うよ。

 むしろ気を付けなくてはいけないのは符尾の数かな。

 たとえば、さっきの1拍七連符。符尾は連桁になっているけれども、なんとなく3本にしたくなるという人も多いんじゃないかな。三十二分音符の符尾が3本で、これに近い長さなんだから符尾を3本にしたくなる気持ちはわかるんだ。
 でも、連符の符尾の数は、次に短い音価よりも1つ少ないと決められているんだ。

 わかりにくいかもしれないから、こんなふうに考えてみよう。
 たとえば、四分音符の長さ分の尺に、いくつかの音符を入れないとならないとする。
 このとき、2つだったら当然それは連符ではなくて、八分音符になる。これは問題ないよね。4つだったら十六分音符、これも大丈夫なはず。
 3つのとき、これは4つよりも少ないけれど、2つよりも多い。そこで「2つと、1つあまり」と考えてみる。
 5つだったら、これは8つよりも少ないけど、4つよりは多い。だから「4つと、1つあまり」。

譜例_40_03

 この方法で、7つや9つ、15個の場合も考えてみると、7つも8つより多くて4つより多い「4つと、3つあまり」、9つは8つより多くて16個よりも少ない「8つと、1つあまり」、15個も8つより多くて16個よりも少ない「8つと、7つあまり」。
 この「あまり」の部分を切り捨てて、「2つ」「4つ」「8つ」と考えて、その音価の符尾を書く。

譜例_40_04

 連符の符尾の数は、かんちがいをしてしまう人が結構いるから、これは注意してしっかり覚えておこうね。

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 つまり「3拍四連符」ということだね。
 もし3拍子ならば、こんなふうに書けば3拍四連符になるよ。

譜例_40_06

 八分音符6つに3拍四連符のズレが不思議に気持ちいいリズム感を生んで聴こえるね。
 この場合の符尾も同じで、3/4拍子ならば1小節に3つでは四分音符、6つならば八分音符、12個ならば十六分音符だよね。だから3拍を連符にするならば、四連符と五連符が符尾の無い四分音符の姿で、七連符から十一連符までが符尾1本、十三連符から二十三連符までが符尾2本になるわけだね。

譜例_40_07

 だけど、3拍四連符とか5拍六連符みたいなものを使う機会は限られていると思うよ。
 現代曲には少なくないのだけど、割り切れない拍の長さは拍子としても取りづらい。試しに手拍子で3拍を四連符で刻んだり、5拍を六連符で刻んだりしてみるとわかると思うけれども、これはなかなかむずかしい。
 久石譲さんが映画『天空の城ラピュタ』に書いた音楽には6/8拍子の四連符と5/8拍子の三連符、つまり3拍四連符と2.5拍三連符が交互に何度もくりかえして出てくる『ティディスの要塞』という曲があったりするんだけど、弾くのはかなりむずかしいと思う。実際には6拍子と4拍子、5拍子と4拍子を同時に演奏するようなものだからね。

 こういった、複数の拍子感が同時に演奏されるものを「ポリリズム」、または「クロスリズム」と言うよ。連符を使った曲は複数の拍子感がからむことになるからポリリズムになりやすいね。
 広くは連符だけでなく、小節を越えた拍子感をポリリズムと呼ぶこともあるんだ。

 たとえば1900年代初期のイギリスの音楽家、グスターヴ・ホルストさんが作曲した『組曲 惑星』の4曲目「木星」にはにこんな部分がある。

譜例_40_08

 一見すると何のへんてつもないスコアに見えるんだけど、じつは木管群のパートがこんなふうになっている。

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 十六分音符が並んでいるけれども、よく見るとそれが3つで1セットのリズムになっているのがわかるかな。
 しかも、さらによく見ると、それぞれのパートの強拍もずれている。むりやり小節線を引くとしたら、こんな感じになっているんだ。

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 トランペットは2/4拍子で刻んでいるけれども、これも途中から八分音符が3つで1セットのリズムになっていく。
 これはオーケストラの曲で、それぞれのパートをそれぞれの楽器奏者が演奏するからいいけれども、こういう互い違いのリズムを1人で弾くとなると、それはやっぱりむずかしいと思うんだよね。

 というわけで今回はここまで。
 次回は音楽を専門的に学ぼうとしたら避けることはできないドイツ音名と調、和声記号について勉強していくね。

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