第7回 音と音をつなぐ2つの記号
📚[📖楽典]五線譜、スラー、タイ
📚[🖋記譜法]五線譜(アーティキュレーション)
📚[⌁音響物理学]ADSR
前回は音符のかたちと音価について勉強して、最後に「タイ」という記号が出てきたね。
この「タイ」によく似た記号に「スラー」というものもあって、こんな記号なんだけれども…、
今回はこの「タイ」と「スラー」を一緒に勉強しようと思うんだ。
まず、タイについておさらいをしておこう。
第6回で「タイは音符と音符をつなぐ記号」と説明したね。つまり2つの四分音符をタイで結んだものと、二分音符とは、同じ長さになるってこと。
それから、四分音符と八分音符をタイで結んだものと、附点四分音符も、同じ長さだ。
言い方を変えると、タイというのは音をのばしっぱなしにして次の音符につなげる、という説明のしかたもできる。
ピアノを弾いていて、ある音符の音を出して、次の音符の音に移るとき、鍵盤から指が一瞬離れる。このとき、ほんの一瞬だけど、どの鍵盤も押されていないタイミングが出てくる。
つまり、実際の演奏では四分音符も1拍の長さを鳴りきっているわけではなくて、1拍よりもほんの少しだけ短く鳴っているんだ。
1拍の長さを100%完全に鳴りきって、次の音符に続けば、音は途切れない。じつは「タイ」とはこういうものだったんだ。
ところでこれは同じ高さの音同士だから音がつながってしまうわけで、もし違う高さの音だったら…?
それが「スラー」なんだ。
つまり音価ぶんの長さを100%完全に鳴りきらせて次の音に移る。そんなふうに演奏するとどうなるか。音がぶつ切れにならないから、なめらかに聴こえるんだ。
そうだね。音楽のテストで答えるときには別物と考えないとバツをもらっちゃうと思うよ。
ここからは少し難しい話になるんだけど、ほとんどの場合、楽器の音って鳴り始めと鳴り終わりでは音が違うんだ。これを難しい言葉で「アタック」と「リリース」と言う。
「アタック」というのは音が鳴り始めるときのことで、「リリース」は音が鳴りやむときのこと。「リリース」は「余韻(よいん)」と言ったほうがわかりやすいかもしれないね。「サスティーン」と呼ぶこともあるんだけど、厳密にはちょっと意味が違う。これについては第12回で勉強する予定だよ。
とにかく、音は「アタック」と「リリース」では別物になっているんだ。例えば鐘の音を考えてみよう。鐘って「カァーン」と鳴り響くわけだけど、鳴り始めは「カ」という強い打撃音で、そのあとは「ァーン…」という余韻に変化するよね。音が完全にやむまで鐘は鳴り続けるけれど、何度も連打すれば「カンカンカンカン」という感じに鳴る。あれ? 鳴りやんでいないってことは100%完全に鳴りきっていないはずだよね? なのに音はつながらない。
つまり、これは「アタック」と「リリース」の音が違うからなんだ。
あらためて説明し直すと、「タイ」は最初の音で「アタック」が入ったらそのままのばしっぱなしにする、ということ。「スラー」にはそれぞれの音に「アタック」が入り直す。これが「タイ」と「スラー」の違いとなってあらわれてくるんだ。
だから音楽のテストがあったら、「タイ」は「音と音をひとつにつなぐ」、「スラー」は「音をなめらかにつなぐ」と答えようね。
ちなみに「音をなめらかにつなぐ」がどういうことなのかは楽器によって意味が違ってくる。なぜって、楽器によって「アタック」の意味合いが異なってくるからなんだ。楽器はそれぞれ演奏の仕方が違うし、だから当然「アタック」も違う。「アタック」が出ないようにするというのは楽器によって違ってくる。
例えば笛などの管楽器ならば、一般には吹くのを止めないでそのまま指使いを変えることになるし、ヴァイオリンのような弓で弾く弦楽器はひと弓で弾き続けるということになるんだ。
というわけで、後半は音とは何かという、ちょっと難しい話になっちゃったけれど、今回は「タイ」と「スラー」について勉強したよ。
でも楽譜は音符だけでは成り立たない。音の鳴らない時間を作る「休符」という記号も音符と同じくらい大事なんだ。次回はこの「休符」について勉強してみよう。
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