第9回 でもそれでも楽譜は読みやすいのが一番
📚[🖋記譜法]五線譜(音符、オクターブ記号
📚[🛡音楽史]記譜法
第5回から、第5.1回も含めて6回にわたって五線譜の読み書きについて勉強してきたけれども、でも僕は第0回で「音楽には正しいとか間違っているといったものはない」なんて言ったのを覚えているかな。
それは楽譜だって同じで、誰もがきちんと読めなくては意味がないから記譜上の約束っていうのはあるんだけど、逆に、読みにくくなってしまうならば読みやすいように書くことも許されているのが五線譜なんだ。
今回はそんな、書き方のいろいろについて勉強してみるよ。
まず、符幹のある音符は、上下をひっくり返して書くことができる。より正しく言うと、180°回転させて書くことができるんだ。
それはつまり、こういうこと。
どうして上下の向きを変えてもいいのかというと、高い音は五線の上のほうに、低い音は下のほうに書く結果、あまり高い音になると符幹が五線を突き抜けて、ずっと上のほうまで伸びちゃうからなんだ。そうなると紙ももったいないし、楽譜としてもよみづらくなっちゃう。
だから、できるだけ符幹を五線の間に収めて、見た目にも美しくしようということなんだ。
目安としては、符頭が第3線に差し掛かったら、符幹の向きを下にするというのが一般的だね。
でも、必ずそう書かなくてはいけないというものではなくて、あくまでも読みやすさ、美しさを優先するんだ。
次に、八分音符よりも短い音価を持つ音符の符尾をつなぐ書き方で、これは「連桁(れんこう)」と呼ぶよ。
隣り合った音符の符尾をつないで省略したような書き方なんだけれども、つなぎ方はあくまでも読みやすさを優先。曲や楽譜の内容によっても変わるけれども、一般には1拍ごとやリズム単位に区切ってつなげるよ。
読みやすさやリズム感が優先される書き方なので、拍子やリズムなどの話をするときに、また詳しく勉強してみよう。
次は「オクターブ記号(オクターブきごう)」だよ。
理屈の上では、五線譜にはいくらでも高い音でもいくらでも低い音でも、加線して書くことができるんだけれども、たとえばこんな音符は読みづらいよね。
そこで、「この音は実際には1オクターブ低く弾きます」という意味の記号を使って、記譜上では1オクターブ上げて書いてしまうんだ。見た目もすっきりするし、読みやすくなるよね。
高い音の場合はこんなふうになるよ。
ちなみにオクターブ記号では、かぎかっこのような枠でくくられた範囲の音は、すべてこの記号の効果があることになる。だからひとつひとつの音符に書かずに、パソコンで範囲指定をするみたいに、高過ぎたり低過ぎたりして加線の多い部分はまとめて省略していくんだ。
省略したり、読みやすくする書き方や記号は、まだまだたくさんあるんだけど、その前に勉強しないといけないこともいっぱいあるから、それはまた今度の機会にお話することにするね。
できないよ。
まず、休符によっては、向きを変えてしまうと意味の変わってしまうものがあるということがひとつ。全休符と二分休符って、上下がさかさまになったような感じだよね。
そして、休符の連桁なんて、そもそも意味がないということ。
これは休符をタイで結ぶことに意味がないというのと同じだよ。
音符の上下をさかさにする話のついでに、左右をさかさにする話もしておこうかな。
じつは音符や休符には、左右を鏡に写したみたいなかたちで書くことがあるんだ。
でも、これは誤解をまねくことが多いから、使わないほうがいいよ。
じつはこれ、昔に使われていた記譜法で、しかも時代や地域、音楽家によって違った意味のあるものなんだ。
具体的には、たとえば四分音符を左右さかさにしたような音符は、ふつうに四分音符の意味を持つこともあるけれど、逆に四分音符よりも長い音価のために使われることもあった。つまり、四分音符をさかいに、それよりも短い音符と長い音符とで、向きを変えて書いていた時代があったんだね。
その名残は、じつは今でもあって、全音符の符頭のかたむきが、四分音符などとは逆になっているけれども、これがそうだと言われることもあるんだ。
四倍全音符や八倍全音符を紹介するときに、僕はこんなかたちで書いたけれども、本によっては左右が鏡写しになって説明しているものもあると思う。これも、長い音価を持つ音符の符幹を左右さかさに付ける書き方を載せたものだね。
15世紀くらいまではいろんな記譜法が使われていて、その後、そうした地域や音楽家によって違う楽譜の書き方を統一しようとする動きがあったというのは前にもお話したけれども、そのときにこうした誤解をまねきやすい記譜法は使わないようになっていったんだ。
というわけで、今回は符幹の向きを変える書き方や「連桁」、「オクターブ記号」について勉強したよ。終わりのほうは昔の楽譜の話になっちゃったけれどもね。
次回は、音とはそもそも何なのかについて考えていくよ。
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