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第49回 テンションノートとアドノート

📚[🎶コード理論]ナインス、イレブンス、サーティーンス、テンションノート、アドコード

 和声法にはに和声音と非和声音というものがあって、非和声音も使っちゃいけないことはないんだけど、それは経過音だったり偶成和音だったりというのが一般的だった。
 コード理論では、ものすごくおおざっぱに言ってしまうと、よく使われそうな和音はどんな和音でも書きあらわすことができるようにしようという考え方が根っこにあって、例えば、3度ずつ音を重ねて和音ができるならば、最大で第13音まであるよね、ということで、ちゃんと確立しているんだ。

譜例_49_01

 このコードは、正しくは「Cメジャーセブンスナインスイレブンスサーティーンスコード」と呼び、「CM7(9,11,13)」と書く。
 第15音は根音から見て2オクターブ高いだけの音なので、最大でサーティーンス、第13音ということだね。

 コード理論には「テンション」という言葉があるんだ。
 これは使う場面や人によって意味が違うこともあるんだけど、ふつう、第9音よりも上の音を指すよ。
 第9音は「ナインス」、第11音は「イレブンス」、第13音は「サーティーンス」。コードネームでは、これらの数字が書かれていたら、長9度、完全11度、長13度をあらわすんだ。わかりやすくオクターブを下げて言うと、長2度、完全4度、長6度のことだね。
 テンションの音のことを「テンションノート」と呼ぶよ。

 ここで、サーティーンスとシックススはどう違うの?っていう質問が出てきそうだけど、テンションノートとして使う場合、原則としてセブンスまでは含まれているということになるんだ。
 シックススとして使う場合、セブンスは音がぶつかってしまうから原則としてセブンスは付かない。前回の授業をよく思い出してほしいんだけど、シックススと言ったとき、第5音も鳴っているんだよ。もしそこに第7音まで出てきたら、第5音、第6音、第7音が全部かたまって鳴るということになっちゃう。これはさすがに無いよね。

 イレブンスも同じで、サスフォーとは違って第3音の変位として使うのではなく、基本的には第3音も鳴っている上で使うというもの。
 だからテンションは、基本的には第7音よりも上のほうで鳴らすものになるし、原則としてはテンションの音がベースに来るような転回形はないことになっている。

 「9」は長9度、「11」は完全11度、「13」は長13度と言ったけれども、第5音が「-5」や「+5」になったように、これらの音も変位できる。
 例えば変イ長調の曲で、ⅲ度が根音で、第9音があるような和音が出てきたら、特に何も考えなければこういう和音になるよね。

譜例_49_02

 この和音は「Cm7(-9)」と書いて「Cマイナーセブンスフラッテッドナインス」と読むよ。「-5」のときと同じように日本では「-9」を「フラットナイン」と読むことのほうが多いかもしれない。
 さっきも言ったように、テンションが付くときはセブンスまであることが「おやくそく」だから、テンションの付くコードのときは「セブンス」は省略して呼んでもいいことになっている。つまり、この場合ならば「Cマイナーフラットナインス」と言えば「Cm7(-9)」のことになるんだ。

 第46回でも触れたけれど、コードネームの書き方には何通りかあって、今回の最初にも書いたように、僕の音楽教室ではテンションはカッコ付きで「CM7(9,11,13)」と書きあらわしている。こう書かないで、数字を並べて書く人もいるけど、カッコを付けてテンションであることを明示したほうがいいと僕は思ってるんだ。
 ドミナントナインスに限って、「G9」みたいな書き方はよくされているから、僕もそれにならってる。第7音が含まれているのは「おやくそく」だから、これはコードネームを見れば構成音がわかるしね。

 そんなテンションだけど、「CM7(+9)」はあっても「Cm7(+9)」は無い、ということ、わかるかな…?

 なんで?って思った人は、構成音をイメージしたり、五線譜に音を書き出したり、実際に弾いてみたりしてみよう。

譜例_49_03

 「+9」というのは増9度ということ。そんなことはわかってるって? でも、その増9度って、増2度のことで、つまり短3度の異名同音なんだ。
 メジャーコードならば増9度が付いてもテンションが乗っただけになるけど、マイナーコードは第3音と同じ音。つまり、「Cm7(+9)」はありえない。

 テンションノートにはこういったものがいくつかあって、「11」は完全4度だからsus4と合わさることは無いし、「+11」は増4度で減5度の異名同音だから「-5」や「dim」とは一緒にならない。メジャーコードで「-11」も長3度の異名同音になるから、ありえないね。

質問_2020052111010003

 うん、いい質問だね。

 第9音よりも上の音をテンションノートと呼ぶと言ったのには意味があって、これらの音は原則として第7音よりも上のほうで鳴るものなんだ。
 それは、ベースも含めて三和音以内の音と隣り合って響くとハモりにくくて、不協和音になりやすいからなんだけど、逆に言えばハモるときには使えるし、わざと不協和音を作りたいという場面でも使うことが考えられる、ということだよね。

 このような、テンションノートではない第2音や、sus4ではない第4音などのことを「アドノート」と言い、そういった音を使った和音を「アドコード」と呼んだりするんだ。

譜例_49_05

 この音は「Cadd2」と書いて「Cメジャーアデッドセカンド」と読むよ。「アデッド」は「アド」と言うほうが多いね。「セカンド」という英語特有の序数詞に不慣れな人は「アドツー」みたいに呼ぶこともあるかな。
 音程ではなく、わかりやすく音名で「CaddD」と書くこともあるよ。
たいていは不協和音的になることから、俗に「ヨゴシ」なんて言い方をすることもあるんだ。
 前回、シックススコードについて触れたけれども、コードネームで短6度をあらわす場合は、それがテンション的なのかヨゴシ的なのかで表記が違ってくる。どちらの性格を持つ第6音なのかは曲を書く人の考え方次第だとは思うけど、テンション的に使うならば「(-13)」になるし、ヨゴシ的ならば「add -6」になるかな。

 というわけで、今回はテンションとアドコードについて勉強したよ。
 次回はコードの低音に注目してみよう。

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