ピアノの鍵盤は見たことがある_2019123017320000

第27回 繰り返したり終わったり

📚[📖楽典]記譜法(繰り返し記号、終止線、フェルマータ)
📚[🖋記譜法]繰り返し記号、終止線、フェルマータ、フェードアウト
📚[🧩様式論]ミニマルミュージック、ゲーム音楽、フェードアウト
📚[⚡電子音楽]フェードアウト、ミキサー、フェーダー
📚[⌁音響物理学]ミキシング

 歌には「1番歌詞」「2番歌詞」みたいに、同じメロディーを繰り返していくものが多いけど、同じ演奏が繰り返されるならば同じ楽譜を何度も繰り返して書くのはめんどうだし、枚数も増えちゃうよね。紙に書いたり印刷してあったりするならば、紙ももったいなくなっちゃう。
 曲の繰り返しというのは歌だけじゃなくて、クラシックの曲にもあるんだけど、大規模な編成で何段もあるような楽譜だったりしたら短い部分を繰り返すだけでも書くのは大変だし、何小節もあるような部分が繰り返されたりするなら、もう重労働だよね。

 もちろんそんなのをいちいち書かなくてもいいように、楽譜の一部、または全部を繰り返すような記号があるんだけど、今回はそうした繰り返し記号について紹介するね。

 まず最初は「リピート記号(リピートきごう)」。
 「リピート」というのは「繰り返し」という意味だから、そのまんまだね。

譜例_27_01

 これは太い線、細い線、そして点々でくくられた範囲を繰り返すという意味になるんだ。
 リピート開始の記号がなければ、曲の最初から繰り返すという意味になるよ。

 「1番括弧(いちばんかっこ)」というのは1回目のときに演奏する部分。2回目のときは「1番括弧」の部分は飛ばして、「2番括弧(にばんかっこ)」に飛ぶよ。

 もちろん「2番括弧」の部分にもリピート記号を置いていいし、3回目があるならば「3番括弧」を置いていいんだ。これはいくつでも増やせるよ。
 もし3回以上繰り返すときで、例えば1回目と2回目は同じ演奏になるならば、鍵かっこのような記号に書かれた数字を「1.」じゃなくて「1.2.」としておけばいいんだ。これも、1回目と3回目が同じならば「1.3.」と書けばいいし、場合に応じた書き方がいろいろできるよ。

譜例_27_02

 短い範囲ならば、最初に紹介した楽譜のように、どこからどこまでが1回目なのかをくくった感じで書くことが多いけど、オクターブ記号と同じで始まるところだけ鍵かっこのような記号を書いて省略することもできるよ。
 どっちにしてもリピート記号があるところまで演奏することになるんだしね。

 ちなみにリピート記号は、小節線のように見える記号だけど、アウフタクトを含む部分を繰り返すときは、こんな書き方をすることもできるんだ。

譜例_27_03

 次は「セーニョ」と「ダル・セーニョ」だよ。

譜例_27_04

 これも意味としてはリピート記号と同じなんだけど、「1番括弧」や「2番括弧」というものは使えないんだ。その代わり、リピート記号と比べてセーニョという目立つ記号を使うからなのかな、比較的、長い部分を繰り返すのに使うことが多いよ。
 「セーニョ」のもともとの意味は「記号」とか「しるし」で、「ダル・セーニョ」とは「セーニョから繰り返す」という意味。だから「セーニョ記号」という言い方は、もとの意味を考えるとちょっとおかしいかな。

 「D.S.」の代わりに「D.C.」と書けば「ダ・カーポ」という記号になるよ。これは「最初から」という意味で、だからこの場合はセーニョもいらないね。

 もちろん、繰り返しがあるならば、曲の終わりもなくちゃいけないよね。
 そんなわけで、ものすごくいまさらなんだけど、これまで紹介してきた楽譜にも書かれていた細い線と太い線のこの小節線…、

譜例_27_05

 これは「終止線(しゅうしせん)」と言うんだ。リピート記号から点々がなくなったものだね。

 ちなみにこんな書き方もあるよ。

譜例_27_06

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 そうだね。

 じつはフェルマータは音符や休符の上に付けば「その音を適度にのばす」という意味になるけど、小節線の上に付くと「繰り返したあとはここで曲が終わる」という意味になるんだ。
 イタリア語での、もともとの意味を思い出してみよう。フェルマータとは…、そう、「停止する」。バスの停留所にも使われてるマークだったよね。つまり、そういうことなんだ。
 上の楽譜では終止線の上に書いてあるけど、楽譜の途中で終わる場合はふつうの小節線で書くよ。

 このほかにも「Fine」という記号もあるよ。

譜例_27_07

 これは「フィーネ」と読んで、そんまんま「終わり」という意味の言葉なんだ。使い方はフェルマータで終わらせるときと一緒で、楽譜の途中で終わらせるときは、ふつうの小節線で書くよ。

 終止線は楽譜の終わりに必ず入れるものだけど、リピートやダル・セーニョ等で繰り返したときは楽譜の途中で曲が終わるということもあるんだ。
 そんなときに使うのがフェルマータやフィーネなんだよ。

 最後に、永久に繰り返す様式の音楽について紹介するよ。

 ゲームに使われる音楽なんかが典型的だけど、曲に終わりがなくて、いつまでも繰り返すという様式があるんだ。歌の音楽なんかでも、最後が何度も繰り返されながら音が小さくなっていくというものがあるよね。
 「永久に繰り返す」というのを実際に演奏するのは不可能だけど、現代曲としてはよく見られるもので、1900年代後半に、短い旋律を何度も繰り返す「ミニマルミュージック」という様式がそのはじまりだと言われているんだ。「ミニマル音楽」、または単に「ミニマル」と呼ばれることもあるよ。
 もちろんそれ以前にもオルゴールみたいに無限に繰り返す音楽はあったんだけど、様式化したのはその時代とされることが多いね。

 ゲーム音楽の話が出てきたけど、1970~1980年代のゲーム音楽には4小節とか8小節くらいで繰り返される曲がたくさんあって、時代的にもミニマル音楽の影響を受けていた感じはするかな。もっとも、その頃のコンピューターは今と違って容量も少ないから、そんなに長い曲が入らなかったという理由もあるんだけどね。

 話がそれちゃったけど、こうした音楽には終わりというものが無い。でも、CDなどに録音するときには、どこかで終わってくれないと困っちゃう。そんなわけで、いつまでも繰り返し続けるのは変わらないんだけど、だんだんと音が小さくなって、最後には聴こえなくなっちゃうという感じにするのが、よく使われている方法だね。
 これを「フェードアウト」と言うよ。

 「フェード」とは、もともとは「しぼむ」とか「薄れる」という意味の英語なんだけど、音楽や音響の世界では、「ミキサー」と呼ばれる機械の音量を調整するスライド式のつまみをイメージすることの多いかもしれないかな。

ミキサーのフェーダー

 これを「フェードするもの」という意味で「フェーダー」と言うんだ。
 上に動かすと音が大きく、下に動かすと小さくなって、一番下にすると音が消える仕組みになっているよ。
 つまり、もともとは、このフェーダーを少しずつ下に動かしていって、音を消していくことを「フェードアウト」と言っていたんだ。

 もちろん音楽表現としてフェードアウトするときに、必ずミキサーを使わなくちゃいけないというわけじゃないけど、言葉だけは使われて、楽譜ではこんな感じに書いたりするよ。

譜例_27_09

 「F.O.」というのは「フェードアウト」の頭文字だよ。これで「リピートしながらフェードアウトしていく」という意味になるんだ。
 生演奏のときにこれをどう扱うかは、楽曲や演奏する人によって違うかもしれないね。

 というわけで今回は繰り返し記号について、いろいろと触れてみたよ。
 次回は「調号(ちょうごう)」について勉強するよ。第3回や第4回で学んだことがたくさん出てくるから、忘れちゃった人は要注意。復習もかねて、じっくりやっていこう。

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