第37回 属七の和音
📚[🎼和声法]属七の和音、ドッペルドミナント
📚[🎶コード理論]ドミナントセブンスコード、ドミナントモーション
長三和音と短三和音については勉強したけれども、今回はそれよりももう1つ音を増やした「四和音(よんわおん)」について紹介するよ。これは「しわおん」とも読むよ。
「三和音」のことを「トライアド」とも呼ぶことは紹介したけれども、「四和音」にも英語の「テトラッド」という呼び方があるんだ。
三和音が根音、第3音、第5音を重ねた和音だったように、さらにこの3度上に音を乗せて第7音が追加されるから「七の和音(ななのわおん、しちのわおん)」なんていう呼び方をされることもあるよ。
長調の音階の音を、それぞれ四和音にすると、こんな感じになるよね。
ここで注目してほしいのは、三和音のときは長三和音と短三和音、そしてⅶ度を根音として短3度音程を2つ重ねた「減三和音(げんさんわおん)」と呼ばれる、3種類の和音しか無かったのに、四和音にしたら長三和音だったうちのⅤだけが違ったかたちになったということ。
順番に長3度、短3度、短3度という音の重なり方をしているよね。
この、属音特有の四和音のことを「属七の和音(ぞくしちのわおん)」と呼ぶよ。これは和声を勉強する上では、とっても重要な言葉だから、よく覚えておいてね。
三和音でもⅤのことを「属和音」と呼んだけれども、ふつう「属和音」と言えば、この「属七の和音」のことを指すんだ。。
記号では「Ⅴ₇」と書いて、こう書けば「属七の和音」のこと、特に和音の重ね方のことを表すよ。第7音があることを小さく下側に「₇」で書いているけれども、これは和声の世界では転回形を小さく上側に書く習慣があって、たとえばⅠの第2転回形だったら「Ⅰ²」なんて書いたりするんだけど、それと区別をするためなんだ。。
さて、第36回で短音階を三和音にしたものが出てきたけれども…、
このとき、Ⅴの第3音に♮記号が付いていることにも触れたよね。
じつは短音階を四和音にすると、こんな感じになるんだ。
Ⅴだけが長音階と同じ構成音になっていることに注目してね。
ハ短調ではB音に♭が付いているけれども、導音を作るために、この♭を消さなければならない。だから♮が付くのだけど、そうすると構成音はG音、B音、D音、F音の4つで、これは長音階のⅤ₇とも同じ。当たり前だよね。
このⅤ₇という和音は、三和音のⅤに比べて、より強いドミナント性を持っていると言われている。そして、その秘密が第7音のⅳ度の音なんだ。
ⅳ度の音はハ長調でもハ短調も同じF音。このⅤ₇のⅳ度が、じつはⅲ度への導音的な力を持っていて、そのように進行させることで、そのあとに続くトニック感も強まるんだ。
試しに、第36回でⅡを加えた『きらきら星』のⅤ、これをⅤ₇にしてみよう。
三和音から四和音にして、ⅳ度をⅲ度に解決させるのだから、和音は転回形になったりしているものもあるし、Ⅳ₇なんて和音も使っているけれども、今はあまり気にしないでね。
赤い矢印は解決の進行をあらわしているよ。Ⅴ₇の第3音(ⅶ度)はⅰ度に、第7音(ⅳ度)はⅲ度に解決。つまり、シはド、ファはミに進行しているってこと。
このⅤからⅠ、Ⅴ₇からⅠへ解決する進行のことを「ドミナントモーション」と呼ぶよ。
もっとも、「ドミナントモーション」と言ったときは、もう少し大きな意味があって、この4度上の和音に進行して解決すること全般を指すんだけれどね。
たとえばⅡの和音をⅡ₇にするとD音、F音、A音、C音だけど、このうちF音を半音上げると、構成音のかたちはⅤ₇と同じになる。
Ⅴ₇の上にⅴを書いた記号があるけれども、これは「ⅴ度調上のⅤ₇」という意味だよ。ⅴ度調とは属調のこと。つまりこの場合はト長調だよね。ト長調の音階を四和音にすると、こうなっている。
Ⅴ₇の構成音はD音、F♯音、A音、C音。
もちろんこれはト長調のⅠ、つまりG音、B音、D音の和音に解決するもの。これって当たり前だけど、ハ長調のⅤと同じ構成音だよね。
この、属調のⅤのことを「ドッペルドミナント」と言うよ。
さっきの『きらきら星』のⅡを、さらにドッペルドミナントを使って書き換えてみよう。
ついでにⅠからⅣへの進行も4度上の和音だから「ⅳ度調上のⅤ₇」を使ったドミナントモーションにしてみると…、
どんどんおしゃれな感じになってきたね。
もちろん、ただ単にドミナントモーションにすればいいっていうものでもないし、これはこれでやりすぎだし、かたよってもいるんだけれども、Ⅴ₇の和音というのは音楽性を高めて豊かにするし、いろんな場面で使える音なんだっていうことをわかってもらえれば、今回はいいかな。
次回は「進行」について、あらためて説明するよ。進行やリズムが組み合わさることで音楽ができていくのを感じてみよう。