第０回 ピアノの鍵盤は見たことがある

📚[🎻楽器法]鍵盤楽器

　僕は琉宇。これから、ここで音楽教室をすることにしたよ。
　と言っても僕の音楽教室はよくみかける教室や講座とはちょっと違っていて、じつは「音楽」という授業で考えたらあんまり正しくない教え方もしちゃうつもりなんだ。

　これは僕が、音楽というものは一部をのぞいたら、正しいとか間違っているといったものはなくって、いろんな考え方があるもののなかのひとつが一般的になっているだけだと思っているからなんだ。
　具体的に言うと、音楽史と音響物理学。この２つだけは正しい、間違ってる、というものがあると思う。
　音楽史は音楽の歴史のこと。例えばベートーヴェンが今も生きてるなんて言ったら、それは誰が見たって間違いだよね。もちろん今、音楽史で正しいと言われていることがじつは間違っていた、なんてこともあるかもしれないけど、でもそれは、どっちにしても正しい、間違っているっていうものがあるっていうことだよね。
　そして音響物理学。こっちはちょっと難しいけど、音とは物が振動することでできるもので、振動とはつまりエネルギーだ。これは物理学、つまり理科の話になってくる。こういうエネルギーがあったらこうなる、なんていうのはとっても科学的な話になるんだ。そしてこれには正しい、間違っているというものがある。
　でも、この２つ以外には、ほとんどの場合、これが正しい、これは間違いだ、なんてものは無いって僕は思ってる。この話はまたすることになると思うので、これくらいにしちゃうけど、でもだからと言って、僕はでたらめなことを教えるつもりはないよ。ちゃんと「一般にはこう言われている」というものも説明するから、そこは心配しなくても大丈夫だからね。

　さて、それでどんな人を対象とした教室かというと、それはただひとつ。音楽について知りたいっていう人。音楽について詳しくなくても大丈夫。だから教室の名前も「ピアノの鍵盤は見たことがある」なんてのにしているんだ。ピアノの鍵盤だったら、たぶんほとんどの人が見たことはあると思うからね。
「わたしはピアノなんて見たことないよ！」っていう人も大丈夫。ほら！

　はい、これでもうピアノの鍵盤は見たことがあるよね。ずるい？　ずるくないよ。ピアノの鍵盤を見たことがあるくらいで始められる音楽教室なんだから、きみももう、その仲間入りだよ。

　じゃあ今回は、まず第０回ってことで、このピアノの鍵盤をよく見てみよう。
　白い鍵盤と黒い鍵盤があって、でも、交互ってわけでもない並び方をしているね。この並び方だけ、今日は覚えちゃおう。
　よく見ると、白い鍵盤はただ、ずらーっと並んでいるだけだけど、黒い鍵盤は２つ、３つ、２つ、３つ…という並び方をしてるよね。
　あ、そんなことは知ってるよっていう人もいるかな。うん、もういろいろと知ってる人もいると思うから、そういう人はしばらく教室を休んでくれても大丈夫だよ。でも、ずっと休んでると、突然難しくなってたりするから注意してね、あはは。

　というわけで、今日の授業はここまで。ピアノの鍵盤の並び方。それだけ覚えてくれれば、今日はもうばっちりだからね。そして、今日覚えたこれは、これからずっと必要になっていく知識だから、しっかり記憶しちゃおう。