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"価値"を巡る私小説① 比較

東京都品川区の外れ。隣接する目黒区との境が良く分からないこの地域は、古い住宅地と日陰を生み出す新しい集合住宅が混在していて、比較的年齢の若い人も流入し、人口が増えているエリアだ。人の集まるところには、商売する人や場所も集まるもの。飲食店はもとより、スーパー、コンビニなどの小売店、果ては理容店や美容院、歯科医院などがひしめく。

駅から半径100m以内には、スーパーが4店舗ほどあり、コンビニも同じくらいだから、密集度は高いほうだろうか。3年前のコロナ禍初期の頃には買いだめが殺到し、駅近のスーパーの食料品棚が空になったのを覚えている。

スーパーなどの小売店は、いわゆる生活必需品を販売する店で、"価格"というものに最も多くの人が触れていり。特に食料品は、魚にしろ肉にしろ、同じ商品でも量や重さの違いで、価格は1円単位で変わる。そのため、購入者は自分の家庭や用途に応じて、それぞれの価値観で品定めをすることができる。

近年、秋の風物詩であった秋刀魚の値段が上がったとか、卵🥚10個入りパックが300円になったとか、物価の上昇に関する話題が増えている。
サンマやたまご🥚の値段が以前と比べて上がれば、それが例え100円、50円であろうと高いと感じてしまう。

反対に、スーパーなどでは惣菜なお弁当、生鮮食品が、店頭に並んで一定の時間が経過すると値引きがされたりする。500円の弁当が2割引になれば400円で買えたりする。同じ商品が買うタイミングの違いで50円、100円値段が下がれば安いと感じる。

あるものの値段、価格が、高いか安いかは、まず過去に見た価格に比べて、今の価格が上か下かで判断されることが多い。そして買い手にとっても売り手にとっても、その時々の事情で価値を定め、適正だと判断したらその価格を受け入れるのだろうと思う。

実は投資や投機で取引される、株式や債券、為替商品も基本的には大体同じだ。
その時その時に受け入れられた価格で売買されるものの、比較対象となる価格は、過去の価格というよりは、将来の価格であることが違う。もちろんモノの価格にも、ガソリン価格や供給懸念から将来上がりそうという理由で今の価格を判断することはある。

今年、株式や為替相場は、歴史的な水準を更新することが相次いだ。スーパーの様な小売店にも影響があった大幅な円安。為替市場においては米ドルが対円で1ドル151円台の水準まで上がった。実に32年ぶりの高値だそうだ。
12月に入り、やや米ドルの上昇は収まっているものの、過去と比較すると決して安い水準ではない。例えば、外貨預金などの為替商品を購入することで、米ドルを買おうと思うだろうか?

                  つづく

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