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延々と続く小さな絶望こそつらいのかもしれない

書類の整理をしていたら、ホチキスの針で指を刺してしまった。中指の腹の皮がめくれた。
血も出ないほどの小さな傷だけど、スマホを持ったり、キーボードを叩くたびに、チク、チクと痛みが走る。
めくれた皮膚が、触れたものに引っかかると痛みが増す。わずらしくなって、浮いた皮膚をぷちっとちぎると、傷口が赤い点になって現れた。失敗だった。

それから四六時中、チクチクするようになった。かゆみと区別がつかないくらいの痛さだけど、これが存外、ストレスになった。いたっと思うたびに集中力が途切れる。静電気が怖くておっかびっくりドアノブに触るときみたいに、何を触るのもドキドキする。

ネズミのシッポに小さいクリップを付けると、ネズミはその小さなストレスで死んでしまうと出典不明の話を聞いたことがある。

さすがに死ぬというのは大げさだけど、きっと相当ストレスホルモンが分泌されてさぞかしネズミはつらかっただろう。
チクチクと痛む指先でスマホを打ちながら、おかしな実験の被験者になったネズミに同情した。

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