見出し画像

『Napoleon1815』:なぜフランス軍の勝率は悪いのか

とても面白いゲームなのですが、ゲームバランスの悪さが指摘されています。フランス軍が分が悪そう。私も3人戦で4回フランス軍をプレイしていますが戦績は1勝3敗です。

ネットのプレイリポートを見てもフランス軍が負けているものばかりで、何でそんなことになっているのか考えてみたいと思います。

勝利得点の構造

10ターンの間に勝利得点が0になればフランス軍の勝利です。

勝利得点の構造は
π=10点(基礎点) + X(損害点) + G(街の占領)+ B(ボーナス)
となっています。

損害点はフランス軍が連合軍に1損害与えれば-1点、連合軍がフランス軍に1損害与えれば+1点です。ボーナスはターン終了時に連合軍がVP都市を7か所以上持っていると+1点されるものです。

他の得点方法として、ブリュッヒャーやウェリントンの除去やナポレオンが参加した戦闘で敗北する、などもありますが、ややこしくなるのでいったん無視します。

フランス軍が勝つためにはπ=0にしないといけません。

Xの変域は-58≦X≦40
Gの変域は-10≦G≦3
Bの変域は0≦B≦10 です。

ここで分かるのはGだけでは勝てないということです。X=0のとき、Bが1点以上入れば、マップ上の全ての都市を占領したとしても最終得点は1点以上になるのでフランス軍の負けです。

以前の記事で書いた連合軍にとって決戦を避け続けるのが支配戦略になるのではというのはこの話です。

損害の構造

フランス軍は会戦での勝利が絶対に必要です。では、どうやったら損害点を稼げるでしょうか?

vs英普全軍

フランス軍全軍とイギリス・プロイセンの全軍が1か所で戦う場合を考えてみます。フランス軍の引けるカードは16枚、連合軍が引けるカードは20枚です。地形と作戦カードによるカード追加は無視します。

フランス軍デッキは18/36がダメージカードの確率なので、フランス軍が与える損害の期待値は16*(18/36)で8.00ダメージです。連合軍デッキは12/36がダメージカードの確率なので20*(12/36)で6.67ダメージです。

差引して、フランス軍全軍と連合軍全軍が戦うと1回の会戦での期待得点は-1.33点となります。ボーナス1回分ですね。まるで足りんわ!

vs英軍/vs普軍

フランス軍全軍とイギリス軍単独、プロイセン軍単独が戦う場合をそれぞれ考えてみます。イギリス軍、プロイセン軍が引けるカードはそれぞれ10枚です。

なので、損害期待値は10*(12/36)で3.33ダメージです。差引すると期待得点は-4.67点です。だいぶマシになりました。

実際のゲームでもどちらかの軍に戦力を集中投入するのはかなり効果的な印象です。ではイギリス、プロイセンのどちらを狙うかですが、これはプロイセン一択でしょう。

イギリス軍の陣取る地域はかなり広大で、逃げ場が多いです。逃げ回るイギリス軍を捕まえるのは困難です。

プロイセン軍のほうは5ターンと7ターンに出てくる増援が人質の役目を果たしてくれて、派手に逃げまわるのが難しく、決戦に応じてくれると思います。もし、リニー以西に逃げたら、フランス軍はわざと増援を出しておいて、それから囲んで殴るという技があるためです。以前鹿内さんに指摘されたときは自信がなくてやめましたが、めっちゃ強力です。簡単に7~8点取れました。

πへ当てはめる

この期待得点-4.67を先ほどのπの式に当てはめてみましょう。

π=10-4.67x+G+B

xは会戦の回数です。

どちらかにだけ軍団を集中するということは、もう一方の軍団には自由を与えることになるので、GやBの得点は伸びるでしょう。自分の経験も踏まえてG=0(ナミュール・リニーとモブージュ・ボーモンが相殺)、B=8で計算してみることにしてみます。

代入すると、フランス軍が勝利するπ=0のとき、xの値はx=3.85となり、フランス軍が3.85回会戦を仕掛ければこのゲームに勝利できることが分かります。

これは期待値なので確率の偏りを考慮するとフランス軍が4回会戦を行えばほぼ勝つことができ、3回ではほぼ勝てない。ということが言えるでしょう。

ダメージを受けたことによる引けるカード枚数の変化を考慮していなかったり、色々と目の粗い推論ですが、自分のプレイ経験とはかなり一致している数値です。

しかし、4回の全力会戦というのは、このゲームをプレイした方なら分かってくれると思いますが、無理です。不可能です。これがフランス軍の勝率が伸びない要因ではないでしょうか?

山札圧縮の効果

会戦回数をなるべく少なくする方法として、期待得点をもっと小さくするという手段が取れます。それが山札圧縮です。

引いてきたカードのうち、ダメージカードはそのターンのうちに使いきり、逆にダメージのないカードは手札に貯めておくことで山札の中のダメージカードの比率を上げるテクニックです。

これはマジでものすごく強力です。5ターン目にプロイセン軍と1回目の会戦を行うことを仮定しましょう。フランス軍が手札に引けるカードの枚数は3*4+4で16枚です。連合軍が引けるカードの枚数は2人戦想定で11枚です。これらがすべてノーダメカードだったとすると、

フランス軍:16*(18/20)=14.4
プロイセン軍:10*(12/25)=4.8
期待得点:4.8-14.4=-9.6

すごい。期待得点は-9.6となります。まあ、実際には強制カードがありますし、ノーダメカードをそんなに引けることはあり得ないのでね。無理です。

しかし、半分がダメージカードならありえるのでは?

フランス軍:16*(18/28)=10.29
プロイセン軍:10*(12/32)=3.75
期待得点:3.75-10.29=-6.54

これでπ=0を解くと、x=2.75です。
おお!3回仕掛ければ勝てそうってことですね。だいぶ現実的な数値になりました。

この方法を使うときの注意点は、デッキを切り直すたびにノーダメカードを手札に引き入れる確率は下がっていくので、ノーダメカードが手札に溜まるまではなるべく山札を回転させないことですね。哨戒騎兵を動かしている暇はなさそう。

しかし、この数値も強制カードの存在を無視していたり、連合軍側の圧縮が進むことを考慮してなかったり、山札回転によるノーダメカード引き入れ率の低下を考えていなかったり、あと疲労が溜まって回復カードを使わざるを得ない、ということもあるので粗い数字です。

超極端な例として、リニーもナミュールもいらねえ!ボーナスもくれてやる!で、8枚ノーダメカードを持っている条件を考えると、必要な会戦回数は3.52回となり、3回会戦を仕掛ければまあまあ勝てそうな感じになります。

まとめ

会戦回数のノルマが達成不可能な数値だから、フランス軍の勝率が低いのではないかと私は思っています。1日に1会戦(2ターンに1回)がシステム的に限界じゃないでしょうか。損害差の分だけ退却しちゃうしねー。

ただし、山札圧縮をして、執拗にプロイセン軍だけを狙うことで活路は開けるかもしれません。

計算をしたら、ターン終了間際以外で町を占領するのは意味ないなー(△G<△Xだから)とか分かったんで、整理してみて良かったです。

あとはもっとプレイしたいすねー。連合軍1回もやったことないしね。そんな感じ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?