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【水色の恋】

先週末、ふらふらと街を歩いていたら、特に思い出の曲というわけでは全然ないのですが、突然、この70年代昭和アイドルポップスのメロディが、まったく脈絡なく頭の中を流れてきました。

そして、「あ、このメロディ、同じようなフレーズが調性の中でずれて展開していって、エモいな」と気が付きました。

ぐぐってみたら、さすがインターネット、いろんな人がいろんな考察をしていて、音楽的解釈がでていました。これおもしろかったです。

天地真理って、近年メディアにでてくる姿は、往年のアイドル、いまや顔が大きめのおばはんというかもうおばあちゃんですが、70年代のデビューの頃は、なかなか可愛くて可憐だったんですよね。

その彼女が、たしか、「あのひとにさよならを言わなかったの さよならはお別れのことばだから」とか、「あなたの姿 あなたの声は いつまでもわたしの思い出に」とか歌うもんだから(歌詞よく覚えているな)、それはそれは、水色な感じでしたね。

アルゼンチン・タンゴのフレーズからの盗用?があったというのは驚きでしたが、まあ、とてもシンプルないかにも昭和のアイドルのバラードという感じのメロディだとおもいます。リンクにある、コードの動きとかメジャーでマイナー感というところもおもしろいですが、僕としては、フレーズが展開していくのがなんともいいなと再認識しました。

ジャズのアドリブも、テンポが速い曲はどんなプロでもその場で即興で「自由に歌う」というより、コード音を意識してちょっと機械的にアレンジして並べているのかなと思いますが、ゆっくりな曲だと、即興で歌うようなメロディックなソロがでてきたりします。エモい感じの。そんなときでも、アドリブっぽいなと思うのは、そういうフレーズが少しづつ音階がずれて変形して展開していく時。

この曲も、鍵盤とかあったらメロディを弾いてみてください。ちょっとずれて展開していくんですよね。そこらへん、構造的というか。まあ、クラッシックとかも最初のモチーフみたいのを展開させていくということだと、同じなのでしょうか。よく知らんけど。

さらにサビというか、エモいクライマックスのところ、「あなたの姿 あなたの声は いつまでもわたしの思い出に」になると、「あなたの姿」のフレーズが、あ→あ→いと、一音づつ下降してくんですよね。こういうの、ずるいほどエモいですよね。へたすると、くさいくらい感傷的になりますが。70年代の天地真理が歌うそれは、とても、せつなかったですね。

昔、ジャズサックスのチャーリー・パーカーのソロを写譜していた知り合いが、譜面をみながらつくづく、「パーカーのソロって、譜面にしても美しいんだよな」と言っていたのを思い出します。

やはり、音楽は周波数の違う音の組み合わせだから、構造的な美しさが絵画とかにも共通しているのか、あるいは幾何学的というか数学的な調和があるからきれいに聞こえるのか、なんとも謎ですが、この水色の恋も、同じようなフレーズがずれながら展開していくというところは、譜面の上でもそれなりにきれいなのかな。まあ、パーカーと天地真理を比べるのはなんですが。

なぜ、この水色の恋が、40年以上の年月を経て脳裏に再生されたのかは謎です。実は日曜早朝にシンガポールから夜行便で着いて、荷物をホテルに預けた後で、蒸し暑い日本の週末の昼、赤坂から日比谷のほうを歩いていたら、この曲が頭のなかで流れてきました。もしかすると、この気候が遠い昔の記憶を再生させたのかもしれません。駆け足でバタバタ仕事だけの滞在を終え、大雨の東京から再び熱帯へと帰路につきます。■

(タイトル画は、水色の恋で検索してでてきたものを拝借。いい色ですね)

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