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フィクションあるいはデフォルメした実話

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2020年11月の記事一覧

【短編】チャーリー・パーカーの墓さがし

真夏の暑い昼下がり、カンザス・シティの墓地で、Mと僕とで手分けしながら草ぼうぼうの平らな墓石の中から、その上に斜めの棒に羽ばたいている鳥がのっているのを探していた。蝉がうるさく鳴いていた。 墓の写真が載った本が正しければ、この目の前の藪に囲まれた100m四方くらいの範囲にその墓はあるはずだった。 Mの新婚の妻Bは、今朝、僕が車でMを迎えに行ったら、けっこう怒っていた。 「結婚式の翌日に、うちの旦那をひっぱりだして、誰かの墓さがしなんて何考えてるの!」 顔はいつものよう

いこみき

「新潟は、わたしの故郷ガリシアに、とても似ている」と、イサベルが言う。 日本語の響きが好きで、スペインの大学で専攻して、去年から日本の大学で明治時代の文学の研究をしている。 「そうだね。海岸線はリアス式、自然豊かだし、魚も美味い」 「リアスはスペイン語、日本語では溺れ谷」と僕の発言を訂正する。 「リア(入り江)よりも、溺れ谷のほうが、水が長い間かけて侵食した谷が埋没して海岸線になった感じがでています。美しい日本語は使わないと」 東京から5時間の長旅ドライブ。やっと日