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フィクションあるいはデフォルメした実話

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2020年9月の記事一覧

【小説】ユア・アイリッシュ・パブ インバウンド繁盛記

「しんちゃん、それ、大きな間違い。外人はさ、1年、暗~い空の街で、毎日嫌々働きながら、今年の3週間の休暇はどこへ行こうかなとそれだけをおもって生きてるわけよ。で、タイのビーチとかに行くんだけど、今年は、職場のダニエル夫婦が行ったらえらくよかったという日本に行ってみようかとなるわけ。でもね、休暇でくるから、スシ、テンプラ、サケ、イザカヤ、だけじゃだめなんだよ」。 白あご髭と鼻髭をたくわえた初老のおやじが、中年後期の髪がちょと薄くなりかけてきた男にむかって、諭すように言う。

とんでとんで アルゼンチン

昔、将来のことなんて何も考えていなかった若い頃、往復のチケットと日本だと1ヶ月くらい生活できるかなという現金を持って、南米を旅した。 当時の南米は、20年くらい続いた軍事政権のもとで進められた経済政策が破綻して、年間数百%、国によっては数千%のハイパーインフレだった。国庫は破綻して、国は荒れていた。 はしょって解説を試みると、資源豊かなアルゼンチンとかブラジルとかが、1960年代に、資源輸出が先進工業国に買い叩かれる一方で割高の工業製品を輸入させられたら、だんだん自分たち