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もしも、セールスイネーブルメントの武器として「暗記パン」が使えたら

こんにちは。あるです。
みなさんは、「暗記パン(アンキパン)」をご存知でしょうか。
ご存知の方も多いかと思いますが、漫画「ドラえもん」にでてくる秘密道具の1つです。

スライスされた食パン。ノートや本のページに押しつけ書かれた内容をパンの表面に写して食べると、その内容が確実に暗記できる。

wikipedia

なぜ、この記事を書こうと思ったのか

結論、暗記パンの活用方法を考えることが、営業成果に繋がる本質的なセールスイネーブルメントを検討する上で最も重要なことと考えたからです。

この記事を読んでいただいている皆さんは、今現在、誰かを育成する立場にある方(セールスマネージャーやイネーブラー)、もしくは、今後そのポジションを担っていかれる方が多いと想像しています。

セールスイネーブルメントの考え方や捉え方は様々ありますが、ここでは「セールスイネーブルメント=営業マンに”何か”をインプット(習得)させ、狙い通りのアウトプットを引き出すこと」と定義したいと思います。

その前提に立った時に、改めて皆さんにお伺いします。

もし、皆さんの目の前に「暗記パン(=書いたことはなんでも必ず習得させられる)」があったら、皆さんはどんなことを書きますか(写しますか)?

暗記パンに書くべきことは”何か”。つまり、イネーブルメントにおいて、真にインプット(習得)させるべきことは”何か”。皆さんはそう問われたらなんと答えるでしょうか。また、皆さんの組織では、その”何か”は定義されていますでしょうか。

「うちの会社のイネーブルメント施策はしっかりしてるし、もちろん定義されているよ!」
という方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら、私が日々、営業組織のイネーブラーの方とお話しする中で、そう言っていただくケースはほぼゼロに近いです。

ここ数年、セールスイネーブルメントに関する情報やツールは増えてきました。

SFA・CRM導入によるファネル管理でKPIを正しく計測し、組織課題を特定している組織や、議事録等の自動化ツール、ナレッジ管理ツールを使い、業務時間の削減を実現できている組織は増えてきましたが、一方で、トップライン改善を実現できている組織はどれくらい存在するのでしょうか。
多くの営業組織は、セールスイネーブルメントの推進において、解決すべき課題は見当がついており、その課題にアプローチする時間もできつつあるが、一方で、その課題の解決策(具体的に"何を"習得させるのか)は明らかになっていない状態かと想像しています。

「暗記パンに”何”を書くか」。
最後はそれを定義しない限り、再現性のあるトップライン向上は実現しないと考えています。

「暗記パン」に書くべきものは”何”なのか

それは「知識」だと考えます。

改めて、セールスイネーブルメントの考え方を整理したいと思います。
まずは、こちらの図をご覧ください。

引用「Sales Enablementとは?」(アールスクエア・アンド・カンパニーHP)

私が「暗記パン」に書くべきと考えているものは図の中の③であると考えています。③を定義して、それを習得する(④)ことができれば、行動が変わり(⑤)、成果につながる(⑥)のではないか、これに関しては皆さんも大きな違和感はないかと思います。

その上で、注目したいことは、③には「知識」に加えて「スキル」が含まれているということです。先ほど、「暗記パン」に書くべきものは「知識」とお伝えしました。では、営業成果に最も直結しそうなスキルは書かなくてもよい(習得しなくてもよい)のか、もちろん違います。

セールスイネーブルメントにおいて、最も重要なことの1つは、この「スキル」をどのように「知識」に変換するのかということです。

例えるとこんな感じです。

つまり、一般的に語られる営業スキルは抽象度が高いため、営業スキルを言葉として丸暗記しても、当然、営業成果の改善にはつながりません(ノウハウ本を読破して、気持ちよくなっている状態)。
重要なことは、抽象度の高いスキルを、具体的なアクション(≒知識やトーク)に変換することができるかです。

もちろん、営業スキルの習得を目指すコンテンツは沢山ありますが、一般的には、抽象的な内容が多い印象です。ハイパフォーマーは得た情報をを自分の業務にパーソナライズ化し、アウトプットまで繋げられますが、ローパフォーマーの多くは、抽象→具体化のステップがうまく踏めず、パフォーマンスできないケースが多い印象です(潜在ニーズを引き出すスキルが重要だ、確かにそうだけど、じゃあどうすればいいの?具体的にどういうトークをすればいいの?状態)。

このように、抽象→具体化のステップを個人任せにしていると、同じ学習環境を提供していても、パフォーマンスにはバラツキが生じてしまう、その要因となってしまいます。

狙ったアウトプットを出させるための知識(スキルを具体化したトークも含む)をいかに定義できるか、その上で、OJTに依存している育成をどれだけOFF-JT化できるかが、イネーブラーの腕の見せ所だと考えています。

暗記パンに書くべきもの

例①:質問への打ち返し

  • BAD(≒それだけでは不十分)

    • 他社との違いを聞かれた際は、他社のことを下げることなく、自社のメリットを分かりやすく説明すべきである

    • ※それはそうであるが、HOWが明確でない。

  • GOOD

    • 弊社目線で申しますと、A社様は〇〇が強みと伺いしておりまして、多くの企業様に導入されていると認識しております。その上で、A社から弊社へ切り替えいただいた私のお客様からのお声ですと、弊社サービスの〇〇なポイントが決め手になったとお伺いしております。

例②:クロージング(決裁者の確認)

  • BAD(≒それだけでは不十分)

    • BANT条件とは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Time frame(導入時期)であり、ヒアリングの際は必ず聞くべきである

    • ※何を聞くべきかは大前提重要であるが、どのように聞くかが不足している

  • GOOD

    •  「ここまでのお話の中で、〇〇までに△△を実現したいと伺いまして、いただいた理想の実現のためにお伺いしたいのですが、今後社内的な決裁を取られる上で、どのような方との調整や承認が必要になりますでしょうか。」

なぜ、多くの組織がトークの型化を行えていないのか

ここまでお伝えしてきた通り、暗記パンに書くべき”何か”は「知識」である、正しくいうと「知識」+「具体的なトーク」だとお伝えしてきました。その上で、最後に考えたいのは、トークは型化は有効なのか、あるいはトークの型化はできるのかという点です。

私としては、もちろん、成果の再現性を高めるという観点で、トークは型化すべきだと考えています。正しくは、まずは型を身につけるべきであると考えています
型を暗記させてしまうと、創造性や思考力が失われると言われることもありますが、そんなことはありません。確かにすでにハイパフォーマーである営業パーソンに、基礎的な型を暗記させる必要はないと思いますが、セールスイネーブルメントはどちらかというとローパフォーマーの底上げといったニュアンスがあるということ考えた時には、まず模倣できるお手本があった方がよいことは明白かと思います

ではなぜ、多くの組織がトークに関して型化ができていないのか。
ここはまだまだ私も解像度の低いところでもありますが、主には3つの理由があると考えています。

1.何を型化の対象にすべきかがわからいない
一口にトークといっても、会社紹介やヒアリング、事例紹介、クロージングなど様々なトークが存在します。自組織ではほぼ全てを型化しているのですが、まずは会話の中で分岐の発生がしづらいトーク(会社紹介、サービス紹介、Q&A、事例紹介など)から定義していくことがおすすめです。これに関しては、トップパフォーマーの音声を文字起こしして、微修正をすればすぐに実現可能です。一方で、ヒアリングなど分岐の多いものや会話の手順が重要なものについても、いくつか検討ポイントがあるのですが、型化は十分可能です。

2.型化したトークの正しさを誰も証明できない
トークの正しさ(クオリティ)を証明する方法としては、そのトークがどのような成果に繋がったか、相関関係を明らかにすることが1つの方法論としてあるかと思います。ただ、そもそも型化したトークを個人がどの程度覚えているのかを確認できない(ロープレでチェックすることはできますが、短期的な記憶なのか、長期的な記憶なのかを判断する術がない)ので、本質的な習得レベルが把握できず、営業成果との突合もできません。
つまり、イネーブラーがトークを型化しようとしても、そのトークってどのくらい正しいの?と現場のマネージャーやメンバーから聞かれた際、ぐぬぬ…とならざるを得ないのが、リアルなところではないでしょうか。
最後は勇気を持ってではないですが、ハイパフォーマーや影響力のある社員がエイヤーで決めるしかないところです。

3.正解を求め過ぎてしまっている
セールスも顧客も、全く異なる特徴を持った個人だということを考えた時に、大前提、発すべき言葉は変わるべきだと思っています。ただし、イネーブルメントの主目的をローパフォーマーの底上げとした時には、まずはハイパフォーマーのマネから入ることが重要であり、その粒度であれば型化はできるかと考えています。
守破離の「守」の部分を整えるだけでも、ローパフォーマーの一定の底上げ、あるいは新入社員のランプタイム短縮においては、十分効果を発揮できるのではないでしょうか。

まとめ

無邪気に考えていることを書き殴っていたら、文字数が4,000字を超えておりました…思いのほか超大作になってしまいましたが、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本記事が、皆さんのセールスイネーブルメントを考える上での参考になっていたら大変嬉しく思います。今回は解決策までを記載しておりませんが、普段私は、本記事で触れた課題感を解決するためのプロダクトを開発しておりますので、また、皆さんに有益と思ってもらえる情報を発信していきたいと思います。

ではでは。

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