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目標設定の葛藤を『逃走中』に見る

マーケティングとクリエイティブをリサーチから考えたい管理職です

フジテレビ系での人気番組に『逃走中』というゲーム番組があります。初回放送が2004年ということで、すでに15年以上の長寿企画になっている。

『逃走中』のルールを簡単に整理すると

  • 基本は、参加者=<逃走者>と鬼=<ハンター>の鬼ごっこ

  • 賞金が、1秒ごとに100円~300円ずつ加算され、100分前後の設定時間を逃げ切れば、<逃走者>は秒数分の高額賞金がもらえる(1秒200円で120分だと144万円)。

  • ただし、<ハンター>に捕まれば賞金は0円

  • 「自首」という救済ルールがあり、逃走エリア内の指定電話から本部に連絡すればその時点までの賞金を獲得することもできる。

『逃走中』の魅力=逃走者の目標設定が揺るがされる

『逃走中』は、<達成目標を立て、適切な解決策を考えるチカラ>を養うのにとてもよい。いわゆる【目標設定力】が鍛えられる。

基本は鬼ごっこなので、捕まらずに逃げ切ることが第一条件となる。
単純に「逃げ切る」という達成目標のためには、<捕まらないところに居続けたい>が正しい選択で、子どものころのかくれんぼの経験をいかせば、鬼がこれないところに、隠れたり・居続けたりを考えるのが大事な行動になる。

『逃走中』では、この目標設定が、次々仕掛けられる試練=<ミッション>で揺るがされることになる。

ミッションとは・・

  • <逃走者>全員に通知され、失敗すると<ハンター>が増える

  • ミッションを成功した場合のボーナスは基本的にない。(達成感と名誉は残る)

  • 多くの場合、ハンターが10人単位で増える<最大のミッション>が終盤に仕掛けられている。

終盤にハンターが10人単位で増えれば、どこにいても捕まってしまう考えられ、基本形の「逃げ切る」という目標設定では行き詰まってしまう。

【目標設定力】では、設定目標の本質を捕まえ具体的に解釈するできることが重要。
『逃走中』でいえば<最大のミッション>に備えるには、ミッションを突破できるだけの人数(リソース)が必要で、ここで「逃げ切る」という達成目標は『リソースを確保しながら逃げ切る』という形に変えなくてはならない。

ただ、参加者全員が同じ目線になるかというそうもいかない。それぞれの能力やモチベーションが異なる集団では、「逃げ切る」という総論は合意でも、人数を残しながら生き残ろうという各論にはなかなか合意できない。私はじっとしていますという<逃走者>を出てきてしまう。
『逃走中』が15年以上続くコンテンツとなっているのは、いつの時代もかわらないヒトが目標設定の揺らぎによる心理変化を、リアルなドキュメントとしてとらえ続け、苦悩する姿をとらえているからだと感じます。

成功者の【目標設定力】

【目標設定力】のもう1つのポイントに、達成ラインと解決策に<柔軟である>ことがあげられる。
最後まで目標を変えずに、一途に頑張ることを賞賛することもあるが、結果が失敗では元も子もない。目標が変われば、取るべき行動は変わる。裏返すと、取れる行動にあわせて達成目標を最大化することもできる。
この時に、闇雲に達成ラインと解決策を変えていくのではなく、根拠や情報によって変えられるかが大事になる。もし、根拠や情報がないならば、ただひたすらに目標を変えずに一途に頑張った方がよい。

根拠や情報の活用について、ベイズ推定という方法がある。迷惑メールかどうかを判定するときに、情報や条件を加えると実績に基づいて確率が上下する考え方だ。近くに<ハンター>がいれば、そこで捕まる可能性は高い。単純に言えば、できるだけ遠くに拠点を構えなおしさ方がよい。

戦争での、意思決定のための情報収集をインテリジェンスと表現される。攻めと守りを、勇気や勢いではなく情報戦で最適解を探し続けることが必要とされる。<逃走者>が互いに情報交換しながら、達成ラインや解決策を見直していく姿は、もっと番組の中で描かれてもよいと思う。

【目標設定力】において、情報やきっかけをつかむことはとても重要だ。だた、情報にはいわゆるフェイクもあるので、すべてを鵜呑みにすればよいわけではない、見極める目も必要になってくる。

『逃走中』の中で、ヒーローになるような逃走者は、目標設定力が高く、視聴者からの共感を得ているのではないか。
ちなみに、<最大のミッション>への対応として、もともと10人単位のハンターの登場に備えて、隠れる力、脚力、体力をつけておくという解決策もある。最初から終盤までじっとして、最大のミッションが失敗してからが勝負として出ていくスタイルを作る。ただ、テレビ番組というエンターテイメントでは、2度目の出演はないスタイルだろう。

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