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MCEI Review:南吹田で育まれる時空を超えたまち

大阪での学び直し。8月・9月はお休みをもらい3か月ぶりの参加。
10月は「京都一ファンキーな不動産屋さん」こと川端組組長川端さんの<南吹田琥珀街プロジェクト>のお話を伺った。
都市機能計画室の榊原さんがモデレーターとして参加した講演会は、インタビュー形式での笑いと情熱あふれる90分となった。

少数に選ばれるために選択肢を広げる

まず、川端さんの自己紹介から。川端さんは不動産仲介業に就職され、その凝り固まったイメージや商売の仕方に違和感をもち、独立されている。
独立した川端さんのポリシーは、「住む場所 働く場所を 諦めてほしくない 諦めたくない」というもので、住空間を売り込むのではなく、住みたい場所や働きたい場所を実現させていくというものだった。

具体的には「大学生でも借りられる5万円のリノベーション物件」「エステ専門で事業ができるマンション内物件」「コンテナを住居資材した建物」など、借りたいと思う人が思い描くものを次々と商品化している。

就職された時の違和感どおり、住宅業界にはルールやしがらみが多いようで、何をするにつけても、理解を得たり、許認可の交渉で、思い描いても実現には数年かかることも多いらしい。

街づくり=ファン・サポーターを増やす

モデレーターの榊原さんは、市や町が主導する公共的な施設の計画や運営に携われている。京都という土地柄、町屋の再利用にも取り組まれており、サブリース方式を取り入れて、町屋の維持・活用の仕組みを作り上げている点がすばらしい取り組みだなぁと感じた。
市や町が主導する街づくりも参加することが多いとのことで、その紹介資料の中心に書かれていた<ファン・サポーター>を増やすというキーワードが目に留まった。
お二人の活動の根底には、住人と建物の強固な関係や周辺との関わりを意識した街の<ファン・サポーター>づくりという共通点があるのではないかと感じた。

南吹田に<宝>を見た

今回の講演会のテーマは<南吹田琥珀街プロジェクト>。川端さんがリーダーとなって進めている地域活性化のプロジェクトだ。

場所となっているのは、南吹田のJRと私鉄と川に囲まれた一角。川沿いには工場や倉庫が並び、生活感あふれる密集した家が立ち並ぶ、いつ再開発がおこるのかを待つような場所だ。
そこに川端さんは、近所との距離、生活の密着さに<宝>を見て、これを立て壊すのではなく、このまま建物や街をリノベーションして育てるという<南吹田琥珀街プロジェクト>がスタートする。

大事なポイントは、川端さんは設計士や建築士ではなく、不動産屋であるということだろう。設計士や建築士にとって、自ら新しく<宝>を作りたいと考え、そこにある一見古いものを残そうとは思わない。しかし、川端さんにとっては、その風景がすでに<宝>に見えていた。

そこからは、川端さんの<諦めない>ポリシーで、街に次々と新しい息吹が吹き込まれたいった。そして、それは理解があるオーナーさんに恵まれたからことできたのかもしれない。

遠くに発想の起点を置く

川端さんが建物のことを考えるときに、建物に関することは参考にしないのだという。その代わりに、映画や音楽からインスピレーションを得るのだそうだ。講演では、岩井俊二監督の『スワローテイル』を一例にあげていた。

この直接的ではない部分に発想の起点を置けるのが強みなのだと思う。わざと遠くからアイデアを借りてくることはあるが、自然とできるというのは活用レベルが違うように感じる。

街の中に、どのようなヒトや生活をいれていくのか、川端さんの頭の中には、凝り固まった不動産屋にはないアイデアにあふれているに違いない。

4年にひとりでいい

さらに、凝り固まった不動産業は数多くさばくことは考えるのだろうが、川端さんは感覚が違う。
1つの建物に相応しい借り手には、4年にひとり出会えればよいという。
それはつまり、最初の契約と1回の更新は続けてもらえる人にしっかりと住んでもらいたい気持ちの現れである。素晴らしい借り手に出会えれば、その人だけではなく、建物も幸せになるし、するとその街の価値もあがると考えている。事実、南吹田琥珀街には空き家がある。
マスで受け入れるのではなく、徹底的に絞り込む。そうすることで、価値が生まれ、好循環ができるという仕掛けになっている。

川端さんは、「京都一ファンキーな不動産屋さん」と称しているが、実に、今の時代にあったビジネスプロデューサーだなぁと感じたのでした。


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