泉水亮介/IoTスタートアップ
紛失防止タグへのUWB搭載は5年前、AirTagは初ではない。どうやって実現していた?
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紛失防止タグへのUWB搭載は5年前、AirTagは初ではない。どうやって実現していた?

泉水亮介/IoTスタートアップ

紛失防止タグの歴史を書いた過去のnoteが比較的良い反響を頂いています。
今まで紛失防止タグに関する記事書いてもPV無かったのにうなぎのぼり。これがAppleの力か。

沢山のコメントいただきありがとうございます。

尚、たまにポジショントークだ!と批判を受けますが、2020年以降の僕はMAMORIOにポジションはありませんのであしからず。

ただの紛失の研究家です。

UWBを利用したのがAirTagが最初じゃないって本当?

さて、タイトルそのまんまなのですが、今回話題になっているAirTagのUWB搭載ですが、業界人にとって、さほど驚きが無かったのは、5年も前に市販の事例があったからなのです。

仕掛けたのはイスラエルのPixie社。
テルアビブで創業したこの会社は、今から5年も前、2016年にUWBを活用した紛失防止タグを作っていました。(※たぶんもうこの会社は存在しない)

Decawave社のDW1000というUWBモジュールを利用したこの紛失防止タグ(KeyFinder)は今のAppleのAirTagと同様、ARを活用した捜索、を実現していました。

特筆すべきは5年前、つまりAR Kitも無かった時代からARによる捜索の時代を見抜いていた彼らの先見性の高さでしょう。

(AR自体は日本人はセカイカメラの時代から触れてますけどね)

当時、MAMORIO社もPixieにはとても注目しており、なんとか手に入れてみんなで弄くりまわしておりました。

ところで、開発当時のiPhoneは6あたりの世代です。UWBなんてものは積まれていません。

では、どうやってUWBによる測位を可能にしていたのでしょうか?

その話に入る前に形状を見てみましょう。
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残念ながら当時の撮った写真が見つからなかったので、ネットの拾い画ですが、見てわかる通りPixieはシール型でした。

確か両面テープが付属していた気がします。

実はこの点も先進的でした。今でこそ、MAMORIO FUDA(2018)やTile Sticker(2019)のように貼り付け型の紛失防止デバイスは存在しますが、当時は他に存在しませんでした。

まずここが重要です。

写真左のオレンジのPixieがiPhoneに貼られているのがおわかりいただけますか?

Pixieを利用するためには一つをiPhoneに貼る必要があります。

そして子機を対象物に取り付けます。貼れないモノの場合は、写真のように付属のアタッチメントを取り付けることでキーリングなどに通せます。ここもAppleが真似したポイントですね。

実は、Pixieの中にはUWBモジュールとBLEモジュールが入っており、親機と子機はこのUWBモジュール同士で接続します。
親機はBLEでiPhoneと接続しており、Pixie側のUWBモジュールの演算結果をiPhoneに送信。iPhoneアプリはその情報をカメラに重ねることでAR上への位置情報のプロットを実現しています。

画像2

実際の表示画面はこんな感じ。青いモヤモヤとした妖精が浮かび上がっているのがわかりますか?

なんだ!凄いじゃないか!売れるねコレは!となれば、めでたしめでたし、だったのですが、残念ながらコトはそう簡単には運びません。Pixieには課題がありました。

一つは、当時のスマホ性能の限界
当時のスマホは今ほど精密なジャイロセンサーも無ければ、カメラもありません。更にAR Kit登場前で、体験は各社のARロジックの出来に委ねられます。
カメラを起動するのにもちょっと待たされますし、場合によってはアプリを起動してからBLEの接続をやらねばなりませんでした。
接続が完了して、やっとカメラを起動した後は、屋内での自己位置推定及び電波をキャッチする為にスマホを水平に持ったままその場をゆっくりとグルグルと回る必要がありました。ちょうどパノラマ撮影をする時のような感じです。

使えるようになるのに数分かかるケースもあったのです。

こうなるとどうなるのか。

Tileなどで音を鳴らす方が早い。
ユーザーはカメラで見つけたいのではなく、さっさと部屋のどこかに埋もれた鍵を見つけたいだけなのだ。

大変、野心的な取り組みでしたが、少し時代が早すぎたという典型的な事例です。

まあ5年経った今、AppleのUWBも試しましたが、まだまだ音を鳴らしたほうが早いって感じはしますよね。
精度も壁が複数あると出ませんし、上下の概念もありませんので、1軒屋などでは難しいところ。

しかし、シール型、アタッチメントによる取り付け、そしてUWBとARの組み合わせを5年も前に世に送り出したPixie社には尊敬の念を抱き続けています。

僕自身も当時Decawaveに問い合わせてMAMORIOへの搭載を画策したこともありましたが、モジュールがとても高くて断念。
BLEとUWB両方積んで数千円で世に出したPixieは本当にすごい会社でした。

僕はApple大好きな方々が無邪気に「Apple凄い!UWBは世界初!」と騒いでいるのを見ると、早すぎた彼らの無念に心を痛めてしまい、こうして筆を取った次第です。

多くのスタートアップが「早すぎる」のは世の常ですが、後世にそのアイデアの恩恵を受ける我々は、きちんと先人たちに敬意を払うべきではないか、と思うのです。

では、よいGWを。

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泉水亮介/IoTスタートアップ
新産業共創とかIoTスタートアップとか ■現職 TEKION Group CEO/SUNDRED CBDO/Momo CSO/JENESIS Project Representative/トリニティ weara事業開発 ■前職 MAMORIO 取締役COO 富士ゼロックス SR