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Welcome,Apple.Seriously.紛失防止タグ市場3度目の正直。

このnoteが公開されたということは、やっとAppleから紛失防止タグが発表されたということだろう。

この記事を書いたのは、2019年の中頃である。
いつまで経っても出てこないので、書いて下書きに入れてから随分時間が経ってしまった。
待ってるあいだに僕は色々あってMAMORIOのCOOを退任してしまった。

なので、以下の記事は現役の社員ではなく、あくまで外部の人間が書いたものとしてお楽しみください。今となっては若かりし頃のギラギラが恥ずかしい部分もあります。

この数年、我々はこの日を待っていた。Apple参入のシナリオは常に頭にあった。


スタートアップの生命線ともいえる投資家とのコミュニケーションの中で、競合の不在は必ずしも良いことではない。

競合の不在とは即ち、市場の不在なのである。

2014年のクラウドファンディングからプロジェクトがスタートし、そこそこの知名度を持った国産唯一の紛失防止タグメーカーとなったMAMORIOという会社にとって、他社の参入によって爆発的に市場が広がるのではないか?と期待を寄せたタイミングは大きく分けて2回あった。

1度目は2016年にQrioさんがSONYデザインを引っさげてクラウドファンディングを開始したタイミングだ。

しかしながら、SONYのものづくり経験とマーケティング支援をウリにし、彼らの販路開拓ノウハウもあったであろうに、この製品は市場を席巻するほどには売れず、結果としてスマートタグは放置気味になり、今(2019年)は完全にスマートロックの会社になっている。


紛失防止タグ市場はあまり広がらなかった。

2回目は、Tileがシリコンバレーからやってきたタイミングだ。
Tileは弊社内では「パイセン」と呼ばれ、アメリカにおいて圧倒的地位を占めるHWスタートアップの星である。
私自身、シリコンバレーの訪問を通してその凄さを実感していた。
Tileの勢いは凄まじかった。

Tileの日本市場への参入については時期も含めかなり確度高い情報を掴んでいたこともあり、当時、日本以外の各国でTileと先に戦っていた有名ベンダーのCEO達から打倒Tile連合加入のお声がけを頂いたこともある。
結果的に巨大連合とはならず、Chipolo,Wistikiの2社が連携するに留まったわけだが。

しかしながら、そのTileも日本市場においてはヨーロッパ等でやってのけた市場蹂躙は起こせなかった。
ある国では8割近い市場シェアを持っていた企業(Wistiki)がわずか1年そこそこでシェア1割程度まで後退せざるを得なくなった事例があるが、日本で同じような立ち位置であった我々への影響は軽微であった。

理由としてTileの紛失防止機能は長らく日本では正式に提供されていなかった上に、月額300円程度の有償サービスであり、逆にMAMORIOは最初から音を鳴らして探すという方向を最初から目指していないので市場がガチンコでバッティングしなかったというのがある。

でも市場はちょっとだけ広がった。

そして、今回はAppleである。

我々はある意味で美味しい位置にいる。

AppleがAirpodsの発売で完全ワイヤレスイヤホンの市場を生み出したが、今回、同じように市場が立ち上がる可能性があるのだ。

そしてワイヤレスイヤホンと違うことは、紛失防止タグというのがネットワーク効果も加味して検討される製品であることだ。
ならばiPhoneユーザーが全部捜索ネットワークに加わるAppleが最高じゃないか?って多くの人は思うだろう。

しかし、我々は知っている。

実際にクラウドトラッキングが効果を発揮するのは紛失して、かつ自分がなくした場所からモノが移動してしまった時という非常に稀なケースであり、普段は全く使わない機能だということを。

日本の落とし物はそもそもかなりの割合がモノが移動した場合には遺失物センターに届けられることを。

全国の遺失物センターに張り巡らされたMAMORIO Spot網がこれを絡め取ることが出来ることを。

そもそも「なくすを、なくす。」ことで 99.9%紛失は防げるということを。

グローバルではそうもいかないのであるが、日本には日本の遺失物事情がある。

しかし、そうした機能比較に入る前に最も重要なのは、Appleという巨大資本の手によって人々が紛失防止タグを知ることだ。
正直、今までは小さなスタートアップ同士の鍔迫り合いでしかなかった。

狭い市場でのシェア争いなんて、スクールカースト上位を競うハイスクールの世界くらい井の中の蛙な話だ。
あくまでも社会に出てから、大きなマーケットに出てからが勝負なのである。

だから私はAppleの参入を心から喜ばしいことだと思っている。

紛失防止というニッチなことに長年取り組んできたMAMORIOの方向性を、名実ともに世界一のメーカーが認めてくれたことに変わりはないから。

ついにニッチがニッチじゃなくなり、ガジェット界のメインストリームとなる。
発売後、世界の殆どはApple一色になるだろう。

何故なら自国に根ざした紛失防止タグメーカーを持っている国は殆ど無いからだ。

でも日本にはMAMORIOがある。

日本の紛失防止タグ市場も外資の手に渡るのか、日本のメーカー達が意地を見せるのか。これまで築き上げてきたインフラ整備の真価が問われる。

頑張らないと。

しかし、競合は?と聞かれて「Appleです」と答える日が来るとは当初は思わなかったなぁ。笑
スタートアップ冥利に尽きるとはこのことです。

Welcome,Apple.Seriously.

歓迎します、Appleさん。いや本当に。





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