カップ麺のフタ
午前が終わり午後1時、気づいたらもうこんな時間になっていた。PCを閉じ一呼吸つくと、私の昼メシタイムが始まる。
今日は気紛れで持ってきたカップ麺を食うことにしている。しかし─ 俺は疲れていた。
痺れた指で何の感動も無くビニールを破る。脳みそが宙に浮いたまま流れるようにフタを引っ張り剥がした。
…
そこには小坂菜緒のサインがあった。「買ってくれてありがとう」。
…
あっ、そういえばお湯を入れるんだった。私は数秒の間意識を失っていた……… カップ麺のフタを眺めながら。
命を宿したカップスターを机に置き、しばらく虚空を見つめる。食品会社社員の代わりに頭を下げることになった彼女に軽く同情しながらも、頭の中は「小坂菜緒のサインだ!」という意識がグルグルしていた。まあその物質自体はただのカップ麺のフタ、ただのインクの集合体に過ぎない。でも…小坂菜緒のサインなのだ。まあ、別にファンでも何でもないのだが…。
「買ってくれてありがとう」。いえいえ、こちらこそ俺の灰色の人生を(5秒程度)彩ってくれてどうもありがとうございます。感謝を東京かどこかに向かって無音の休憩室から送った。なお届くことは無い模様。
幸せなんてこんなもんよ。人生なんてそんなものね。
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