声援を力に
社会人になってすぐ、石川県出身の人と出会った。
当時は新幹線の長野駅ー金沢駅間の延伸案すら出る前で、北海道や沖縄同等の「帰省のしづらさ」でお馴染みだった。
石川出身の彼は、高校卒業と同時に東京に出てきて以来一度も帰省しておらず、地元とは縁を切ったと言っていた。
僕が、友達はいないのか、家族は?と尋ねたら、
「僻地っていうのはね・・・」
不満そうな顔で、言い留まっていた。
きっと、首都圏出身の僕に言っても伝わらない、と判断したのだろう。
僕も、この手の田舎の話にはついていくことができない。理解してあげられる自信もなかったので、途中で話題を変えてくれた彼には助けられた。
年始から、県内あちこちで土砂崩れが発生し、物資や支援が行き届かない過酷な状況が続いている。
石川出身の彼が言いたかったことを何年か越しに、より理解できたような気がしている。
土砂災害は大雨など他の災害でも起こり得ることで、ましてや大雪ですら物流が滞ることもあるのだ。
ちょくちょく起こる首都圏の電車の運転見合わせや遅延などは、毎回困ったなと憤ることもあったが、今回を機に、大したことではないと思えるようになった。
彼が石川の、具体的にどの辺りの出身かを語ることはなかった。
きっと、新幹線を降りてすぐ、みたいな場所ではない。
少なくとも在来線一本は乗り換えて、駅を出たら誰かに車で迎えに来てもらわなければ辿り着けない。
そうでなければ、地元を僻地と呼ぶことはないから。
もう連絡先も分からなくなっているが、彼のことだ、きっと首都圏に住み続けているだろう。
地元のこと、どれくらい気にかけているだろうか。
「声援だけでは何も助からない」マインドに陥らないことが大切だ。
人からの声援や励ましをエネルギーに変えて、能動的に元の生活に戻ろうと行動を取る強さを持たなければ、これからの時代は生きていけない。
自暴自棄の先には何も無い。
これは僕の経験談。
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