パスピエ synonium

2020.12.25
パスピエ synonium

曲ごとの感想。レポというより自分の考えたこと中心。

1 Q.
いつものSEを破壊するかのように始まったイントロアレンジ。薄い幕に科学的な花のような模様が映し出されて、光が重なるときに透けて見えた大胡田なつきがあんまりにも美しくてびっくりした。「今ここにいるんだな」って噛みしめて興奮と感動で感情がぐちゃぐちゃになった。今回のアルバムは本当に1曲1曲の個性が強いので、1曲目どうするんだろう?と思ってたけど、こんなぶち上がるスタートにすると思ってなかった。すげー!Cメロの「探す探す後ろ姿と 声、声だけ」のところの楽器隊が目合わせてリズム取ってて楽しそうで嬉しかった。

2 トキノワ
来ると思ってなかったな~。Q.からの流れがすごく楽しくてきれい!パスピエはいろんなことができるので、いろんな盛り上がり方があるんだけど、ライブ初めをスタンダードに盛り上げてきたのが嬉しい。やっぱりライブってこうじゃんね、楽しくて思わず体が揺れ動くような。トキノワ歌うとき、なっちゃんいつも皆と目を合わせようとしてくれるんだよなあ。自分の方見てくれたときはもちろんだけど、2階席も3階席も見てて素敵だなあと思った。終盤で聞く印象が強いんだけど、「はじめられないのは 終わっていないから なんて難しいね」をライブ初めに聞くとまた染みた。

3 まだら
音源と違いすぎるだろ楽曲その1。私はEYEにいけなかったので、初めてライブでまだらを聞いたんだが、予想外すぎて…。まだらは計算されつくしたアンバランスさによる美しさを表現していると思っていて、だからこそ音源では機械的というか、いい意味で生気がないんだけど、ライブだとめちゃくちゃ生き生きするといううか…。ドラムが打ち込みじゃなくなることもでかいのかな。音が生きてて、すごく生命力があるまだらだった。こんなまだら聞いたことないんだけど!?!?!?と困惑して興奮した。どっちも最高なんですよ。同じ曲をこうも味付け変えれるの?っていう驚きがパスピエにはいつもある。やっぱりライブに行くべきバンドなんだよなあ。照明がぐるぐるした丸い模様だったけど、解釈一致すぎる。赤と緑の補色さがいい。濁ってる底が見えない水みたいな。

4 人間合格
この曲ってこんなに乗れる曲だったの!?という衝撃。タイトルと歌詞の厳しさが目立つからそんなにライブ映えしなさそうと思ってたんだけど、Aメロの緩やかさとサビのリズムの良さのメリハリがめっちゃくちゃ楽しい。「かじかんだ徒労の犠牲は自己」のキーボードと「針の穴通すようにゆこう」のギターが物が落下するような音色で、曲の雰囲気をどこか薄暗くしている感じ。Aメロのドラムのリズムがわけわからんかったんだけど1の裏と4の表?なのかな。シンコペーションの手前で入っているから違和感を感じるんだけど、4で拍が合うから大きい波のリズムになる?でゆったり揺れる感じのAメロから、リズムが分かりやすいサビに移ることで、サビがすんごい乗りやすいんだよな。音楽の詳しいこと全然分からんけど、とにかく予想外に乗りやすい曲だった。「身体ならある」の後のドラムのテンションの上りようと言ったら…。

5 とおりゃんせ
人間合格がすんごい乗りやすかったから、この次に定番曲のとおりゃんせ聞いても流れがスムーズというか、曲ごとに独立してなくてスムーズ!今回本当にセットリストにも感動した。シノニム、アルバム曲の個性がマジでマジでマジで強いし、パスピエの曲は本当に多様なので、曲ごとに独立しちゃうだろうにそこをよくまあこんな上手いこと繋げたな…と。それこそまだらも浮いちゃうだろうけど、ライブの生命力に溢れたまだら→乗りやすい人間合格→定番曲のとおりゃんせの流れ、模範回答か?ここでとおりゃんせを持ってくることで、Q.とトキノワスタートの1,2曲目ともつながりが見える。ここまでで第1部って印象。スカート持ち上げるなっちゃん何回見ても好き~!

6 OTO
yutubeで聞いた時もアルバムで聞いた時も理解できなかったんですけど、ライブで聞いたら余計に意味わからんくなっちゃった・・・・・・・・・・・。「身体なだらか 幸いさ 羽化したわとあの子は言い」のところ、ギターもキーボードもドラムもベースも全然違うことやってるじゃんね…。なんでこれが合体して曲が成り立っているんですか…???分からん…。音楽のすごい人に解説してほしい…。ずっと口開けてたから口ん中カラッカラになりました。友達が「otoはもはや音楽というか現代アートだよね」と言っていて納得。観て聴くアートです、これは。

7 名前のない鳥
OTOで意識を失っていたので記憶が曖昧。慣れた曲なのもあるかもしれないけど、メンバーがすっごい楽しそうに演奏するのが良いよね。なっちゃんの声年々良くなるな~と思うんだけど、声の伸びやかさがすごく名前のない鳥にあっていた。「ここにいるよと歌っているから 歌っているから」本当にきれいで心地よかった。ここ、ボーカルとキーボードだけなんだけど、成田さんがなっちゃんのこと見つめて真剣な顔してキーボード弾くのがたまんなく良かった。感想でワ———ッと盛り上がって昂って演奏する三澤成田見てて泣けた。

8 現代
クラップ音SEでいれてるかと思ったら、そういうシンバルあるんですね!?!?おせんべいみたいなシンバルからクラップ音聞こえてきてびっくりした。「勘違いしたくて 支度して」の後の三澤さん、三澤タイムしてた…。「うつろな変わり目を 責めずにいられたなら」の楽器鯛の集中がめちゃくちゃかっこいい。やっぱりリズムが定型ではない曲をきちんとかっちり合わせるパスピエすげ~。曲終わった後の静けさまでも曲。

9 メーデー
メーーーーーーーデーーーーーーーだーーーーーーーー!?!?!?!?!?!?イントロのテンションの上りよう、異常。ホールツアーぶりくらい?びっくりした!MCで成田さんがハードル上げてたけど、それを軽々と飛び越していった。「鬼が笑ってる」の後のベースソロもかっこいいし、その次のキーボードとギターの同じリズムで弾くところ、成田三澤がに目合わせてタイミング合わせてて最高。成田さんもうノリッノリで、片手で弾いてその右手以外踊ってたもんね。

10 真昼の夜
ここに持ってくるか真昼の夜…!納得の布陣。インタビューとかで、成田さんとなっちゃんがずっと「パスピエがいまテンポの速い曲やったらこうなるぞってのを見せたかった」って言っていたので、メーデーっていうテンポが速いノリノリの曲の次に同じようにテンポ速いけれど”今の”パスピエにしかできない真昼の夜を持ってきたことで、過去曲も新曲も良さが際立ってたな。この曲、1曲の中でいろんなリズムで乗れるからおもしろいなあ。

11 R138
本日のハイライト。露崎大運動会。突如はけたと思ったらキーボード(自作持ち手つき)持って出てくると思う???弾きながらウネウネ…って動き続けるのマジでおもしろすぎる。ちゃんとご丁寧になっちゃんと交互に中心と下手を行き来していて、「あぁこれ打合せしてたんかな…」と思い余計おもろくなってしまった。ベースもって踊るときはスゲーかっこいいのになんであんなに手振るのカチコチなんすか!?!?妙に腰が入っているせいかエアロビ感あった。こぶしを握りしめガッツポーズ2回、あまりにもダサすぎて愛おしくて観ていて気が狂ってしまった。そうなんすよ、露崎義邦ってこういうひとなんすですよ…。ポーカーフェイスでしれっとしているのに面白いことに120パーセント使って全力投球するし、その間もポーカーフェイスなんですよ・・・・・・・・・。azuchi momoyama思い出したよね。爆発的にはじけるつゆさんとそれ見て楽しそ~にするメンバー。なっちゃん1回声出して笑ってたような気がする。どこまでもはてしなく楽しい。初夢に出てくれ。

12 プラットフォーム
このつゆさんの爆発劇から、ここに落とし込めるのすごすぎるでしょ。パスピエ、曲と自分達だけで一瞬で世界を構築してしまうんだよな。なっちゃんの声の伸びやかさが本当に心地いい。「空にのぼる冬の虹を見て」って歌詞を七色のライトを背景に聞けたのが嬉しい。

13 Anemone
プラットフォームがかなりポップス寄りなので、なじませるためにもそれこそ最終電車とか、贅沢な言い訳とか持ってくるんじゃないか?と思ってたのでAnemoneが来てびっくり。そしてなっちゃんが色っぽい。目を閉じながら歌う様が艶やかでずっと見つめてしまった。でもそんななっちゃんが隣にいてもちゃんと主役を取る成田ハネダ。ラストのキーボードは、しっかり溜めて成田さんの世界でした。

14 くだらないことばかり
1番泣いて、1番感情がごちゃごちゃになった曲。今のパスピエにしかできないくだらないことばかりだった。サンプラー演奏でのくだらないことばかりは今までのバンドサウンドと全然違って、でもどっちも等しく美しくて唇をかみしめて泣いた。5人が横1列に並んでる姿を見て、今のパスピエの姿だなって思ったら、苦しくてでもそれ以上に嬉しくて。私は2017年5月10日からもうずっとパスピエのやおさんの亡霊みたいなものを探していたんですよね。そんなことしても何にもならないから、やめようとも思ったし、実際にやめようとしたけど、それでも曲を聴いたときライブに行ったときどうしても脳裏から消えなくて。チャイナタウンで「ワン、ツー!」って叫ぶ声とか、マタタビでサビ前で両手を振るとことか、なんかの拍子にずっとやおさんが出てきてそのたびに脱退っていう事実を思い出してやるせない気持ちになって。でもパスピエは脱退という事実を悲観も楽観もせずに、「じゃあどうしようか」って前だけ見て進んでいるその姿がこのサンプラー演奏のくだらないことばかりだと思う。「きっと泣いても泣いても泣き足りないけど今日は必ず終わるんだ」を聞いて、このパスピエっていうバンドの在り方が私はとても好きだと思った。それをやおさんが一番好きだといっていたこの曲でやったのは、偶然なのか必然なのか分からないし知る由もないけれど、パスピエが前を向き続けていることの証明だった。

15 ワールドエンド
ワールドエンドは武道館を思い出した。この流れは…こんなん…。謙介さんのドラムなのか、個々の演奏技術の変化なのか、なっちゃんの声によるものか分からないけど、今まで聞いたワールドエンドよりも芯があるというか力強い感じでまっすぐ刺さってきた。くだらないことばかりで泣きすぎて記憶がおぼろげ。

16 tika
スモーク!?とびっくりしてたら三味線の音が聞こえてきたときの興奮と言ったら…。もうなんて楽しいダンスナンバーなんでしょう!!身体が勝手に揺れる揺れる。あ~これ、立って手挙げて踊りながら聞きたい!!って1番思った曲。成田さんの右手からは三味線の音、左手からは尺八の音が同じキーボードから聞こえてた気がするんだけどどうなんだろ…?スモークが雲みたいでその上にしゃがみこむなっちゃんがあまりにも天上人すぎる。やっぱり人間じゃないよ!

17 つむぎ
tikaのスモークがまだ残る中でのつむぎ、異世界さが際立って良かった。この曲の駆け抜けるような雰囲気がすごく好きで…。イントロのクラシックキーボード(それこそドビュッシーみがある気がする)から、なっちゃんのボーカルが加わっていくのがパスピエの象徴みたいで素敵だった。「受け取った分は返すよ」って、誰を思って書いたのか分からないけど、聞き手のことを指しているとしたら嬉しいなあと思った。なっちゃんはよくライブのMCで「私たち(パスピエとファン)っていい関係だよね」って言うんだけど、私はこの距離感が本当に本当に好きだ。作りてと聞き手はどこまでいっても他人だし、お互いにお互いのことを全然知らないんだけど、それでも作品を通して私は何度もパスピエに救われている。そして(これは推測になるが)きっとパスピエも、自分達のの音楽を聞き手が受け取り咀嚼することを嬉しく思ってくれているのかなと感じた。どこまでも他人な私たちが、音楽を通して相互作用を及ぼし合っているの、すごいよ。こんなことって軌跡だよ、と思ったら嬉しくてたまらなくなった。ずっとステージに立ってください、ずっと音楽を続けてください、ずっと受け取るから。だって私たちはいい関係だから!

18 正しいままではいられない
つむぎでパスピエ愛に溺れていたところでの正しいままでははもうダメ。音楽を続けてくれって祈ったその次の瞬間に「正しいままではいられない 知らない景色はまだ続いてる 言えない言葉は歌にして 今を抜け出す」って歌われたらもう、叶ったも同義でしょう。眩しくて多幸感に溢れて、ありがとー!!って気持ちになる。音源だとフェードアウトだけど、ライブだと最後の最後まで堪能できるところが良い。とにかくずっと幸せだった。

19 SYNTHESIZE
正しいままではの多幸感をそのままに、最高にハッピーなSYNTHESIZEだった。音源と違いすぎるだろ楽曲その2。今回のアルバムで1番好きな曲がラストにきてびっくりした。(つむぎが絶対ラストだと思っていた)シノニムはパスピエがどんどん進んでいった先にあった新しいパスピエの顔だと思うんだけど、でもその中でもSYNTHESIZEは初期のパスピエらしさもあると思う。やっぱりシンセの音と大胡田なつきの特徴的な声とその二つが輝けるだけの土壌を築く楽器隊とのバランスが、初期のパスピエの持っていた魅力だと思うので、それをふんだんにちりばめられているこの曲を、正しいままではの多幸感を加えて演奏されたら…もう…。来てよかったって心から思った。

アンコール
20 つくり囃子
「配信されていないからって素出してこうとすんなよ」成田さんの忠告を聞いて「違うよ!」って怒るなつき嬢。これだよこれ~!!!!!!MCのゆるさも久しぶりで心にしみる。元気出る。一生キングスプレイスやってくれ。そしてベースソロ。もう今日のつゆさんどうしたん?久しぶりのライブ楽しかったのかな??EDOの時も相当溜めてはじけていた記憶だけど、越してくるからたまんねぇ。曲を…曲を作るやん…。ベースソロってかベースの新曲。やっっっっっっっっっっぱりこの世で1番かっこいい人間は露崎義邦なんですよね…。成田さんもうキーボードから離れてしゃがみこんでつゆさん見に行ってるのおもしろすぎるでしょ。授業参観か?なっちゃん成田さん爆笑、三澤さん謙介さんが慈愛の笑みで見つめる中、心行くまで暴れたおしたベーシスト、最高でした。

21 マイ・フィクション
最後の最後の曲。いつも私は終わらないでくれってライブに縋ってしまうんだけど、しっとり〆るでもなく、大盛り上がりさせるでもなく、良い意味で平坦なこの曲を選んでくれた良かったなと思う。このコロナ禍の中で次がいつになるか分からない世界で、「幕が下りても現実だよ 熱が冷めても誠実だよ」の歌詞がこんなに前向きさに繋がるなんてなあ。ここからは友人の解釈なんだけど、つくり囃子で「今夜は作り話でいい」「今夜が作り話なら」って歌った後に「おとぎ話も空想の世界のことも 本当じゃないけど優しい嘘で 誰かを救ってる」って歌うの、意味があるのかなって。ライブってそういうものだものね。現実離れしていてどこか夢のような時間なんだけど、それでもその先の現実は続いていって、でもそこにその熱がった事実は残るもんね。すごく前向きな気持ちで終わったライブでした。いろんな迷いがあったけど、それを振り払っても来てよかった、来る意味があったと思えるライブだった。

いろんなことを書いたけど、パスピエの今を最大出力で見れたと思う。こんな時代でも、こんな時代だからこそ、いろんなことを感じた。ずっと聞き手を思ってくれるバンドだなと思う。行ってよかった!ありがとう、パスピエ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?