見出し画像

総合商社のビジネスモデルに未来はあるのか?

こんにちは、アールです。

今回は学生から就職先として、根強い人気を誇る総合商社のビジネスの将来性について考えていきたいと思います。

上位大学の就活生の就職希望ランキングで、常に上位にランクインするほど人気の高い5大商社ですが、PBRは伊藤忠を除き軒並み1倍を切るなど(2020年12月18日時点で、三菱商事:0.73倍、三井物産:0.82倍、伊藤忠:1.2倍、住友商事:0.62倍、丸紅:0.74倍)株式市場ではあまり高く評価されていません(先日、ウォーレン・バフェット率いるバークシャーハサウェイが投資したことでニュースになりましたが、、)。企業として行っている事業の広範にわたるため、財務諸表を読んでも実態が把握しづらく、海外の機関投資家などが株式を購入することを躊躇することが大きな要因だと考えられます。商社のビジネスモデルに未来はあるのでしょうか?

三井物産の社長のインタビュー記事を読んでいて私の目を引いたのが、「商社は横連携で新しいことをやってシナジーを生み出さない限り、グローバルな競争に勝てません」という言葉です。「資源分野」と「非資源分野」の2つに大別される分野の中に、金属資源、化学品、エネルギーなど多くのセグメントを保有している総合商社ですが、私はセグメントや事業ごとの横連携によるシナジーと聞いていまいちピンときませんでした。そもそも事業間のシナジーとは何なのでしょうか?M&Aでも企業を買収することのシナジーを見込んで、のれんを計上をすることがほとんどですが、トレーディングと投資を事業の柱とする総合商社は事業の足し算を掛け算にしていくことが出来るのでしょうか

まずは、事業間のシナジーとは何かを私なりに定義したいと思います。ここでは単に企業買収を行い、人員削減したり、物流コストを削減することをシナジーとは定義しません。日本の企業でサービス間のシナジーを最も上手く確立していると個人的に思っている、楽天を例に事業シナジーについて考えていきます

楽天は広範なサービスを提供していますが、基盤はECサービスです。楽天市場が拡大したことで、楽天ポイント、金融サービスである楽天カード事業と楽天銀行というシナジーを生み出す基盤を追加しています。モバイル、保険、証券、電気やトラベルなど例を挙げればきりがないほど事業を保有していますが、シナジーの根本となっているのは全てのサービスを横でつなぐことを可能にするポイント制度と、あらゆるサービスの出口としての決済を抑えるカード事業、そしてカード事業の後方から支える銀行事業です。ものやサービスを買うというBtoC事業において、消費者とのあらゆるタッチポイントを抑えることで楽天のサービスを使えば使うほどメリットがあるというエコシステムを作り出しており、それこそが事業間のシナジーだと私は思います。

では話を戻し、総合商社の事業間のシナジーを考えてみましょう。ここでは従来のトレーディング事業は考慮せず、純利益の大半を占めている投資事業に焦点を当てます楽天の例から分かるように、BtoBのビジネスモデルよりもBtoCのモデルの方が事業間の掛け算は作り出しやすいと一般的にはいえるかと思います。そのことを考慮すると、toB向けがメインの資源事業ではなく、繊維、食品や小売りといった非資源の分野に注力することが正しい方向性だと私は思います。投資会社が保有する事業での掛け算を行った分かりやすい事例として、ソフトバンクグループ傘下のYahoo Japanと、インドの決済企業でSBGが20%以上の持ち株比率を持っているPaytmが提携し始めたペイペイが事業の掛け算と言えるかと思います。そこからいえることとしては、消費者とのタッチポイントが多いサービスほど事業間のシナジーは起こしやすいといえます。三菱商事であればローソン、伊藤忠であればファミマといった消費者の生活に根付いている投資先が掛け算が最もイメージしやすい事業と言えるかもしれません。

以上を踏まえて、今後の商社のビジネスモデルに対する私の考えとしては、

①「資源」と「非資源」という事業カテゴリの観点で考えたときには、伊藤忠が進めているように非資源分野に注力すべき

②非資源分野の投資事業の中でも、他の事業と掛け算が出来る可能性が高いtoCビジネスの比率を上げる

③toC事業へ投資を行うにあたり、SBGの「AI群戦略」のように特定のテーマカテゴリで切る

ことが、継続的に純利益を伸ばすためには大事だと思います。掛け算ができる事業はオセロの角を取ることに似ていると私は思っており、そうすることでビジネスにおいて利益率の大きな面を取っていくことが出来ると思います。

「資源」分野であったり、「非資源」分野のtoB向けの事業というものは事業間の掛け算が見込みにくい一方で、商社ならではの既存事業であるとも思っているため、そういった既存事業で一定の利益を着実に上げながら、そこで出したキャッシュを上の3点で述べた方向性で投資していくことが投資会社として最も良いポートフォリオマネジメントではないかと思います。

以上、総合商社のビジネスに関する将来性についていかがだったでしょうか。商社への就職を考えている学生さんなどにとって、就職先として商社のビジネスの将来性を理解する一助になっていれば幸いです。

大変励みになります!是非noteやXでDM頂ければと存じます!