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世代は、巡り移ろい記憶は継がれる:同潤会代官山アパートメント

台風ですね。いろいろとざわざわとする気持ちもあるけれど、その分なんだかここにしかとりあえず向き合う場所はないんだと思える環境になりながらキーボードをたたいたり、積読にしていた本に手を付けたりしていた。

昨日の夜のこと。

同潤会代官山アパートメント (三上 延)を読んだ。
小説読むときのあるあるで、途中まで通学電車で読んでいたのだけれど続きが気になって深夜までそのまま寝ずに一気読みしてしまった。

ゆるやかにnoteを、あるいは読んだ記録を書いておこうと思って


同潤会代官山アパートメント

同潤会代官山アパートメント、その始まりから終わりまで、暮らした八重が主人公。
関東大震災後、新婚で同潤会代官山アパートメントに引っ越してきてから、解体直前に亡くなるときまでのお話。
およそ10年ごとに、娘、孫、ひ孫が生まれ、それぞれの時代の中で代官山アパートメントとともに日々を過ごしていく様子が描かれている。

時代と、社会の移ろいと、アパートメント

物語の中では時代の移ろいとともに、代官山、という場所が郊外から、徐々に都会になる。それと並行して、同潤会代官山アパートメントはモダンな最新のアパートから古びた、周囲の新陳代謝に取り残されるような存在になっていく。関東大震災から、第二次世界大戦、高度成長期、現代(といっても阪神淡路大震災のとき;すなわちわたしは生まれていない)まで時間が流れる。
登場キャラクターも、八重と、正反対の妹:愛子、竹井をなぞる、家族の物語らしさもわすれず、そして恋の話も時代の話も詰まったストーリーが連なる。

同潤会アパートを知らないからこそ思いをはせている部分や、昔の東京ってこんな感じかぁ、と読める部分も多く面白かった。
登場人物が年を取っていく様子も見ていて面白く。現代に近づいて、ひ孫の千夏が代官山アパートを気に入っていく様子や、不器用ながら人生を進めていく進(八重さんに似た性格というところもよい、八重さんの性格がわたしは好きだ)が、現代に近い感覚でより共感できた。若者のまま物語が終わるところもその一因の一つかもしれない。

読み終えて、最初に戻ってもう一度読むとすべてがつながった。
時代時代ごとに、いろんな社会背景や苦労、些細なできごとなんかがある。モダンで住み慣れなかったアパートといえど、人生の大半を暮らせばそこに自分の家としての愛着が、記憶が埋め込まれていくんだなぁとしみじみと感じた。東京や代官山、時代の移ろいとその時代時代の中での些細な日常の移ろいを感じられる素敵な物語だった!

※同潤会代官山アパートメント、というか同潤会アパートのほとんどを知らないのでこの機会に調べたりなんかしていたけれど、年代を経て解体前だとふるくてひっそりして歴史を感じさせる場所になっていたんだなぁと。。
もう代官山アパートメント自体は解体から二十数年…その間に代官山もすっかり変わったんだろうなと思いをはせずにはいられないように思いました。きっと今も未だあったら見に行っていたんだろうな

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