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動作時に肩痛が生じる症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
左肩関節に内旋抵抗運動を行うと、肩峰あたり~三角筋粗面にかけて重い痛みが生じる。

痛みが出現する左肩関節の内旋抵抗運動


重い痛み部位


仕事上、このような動作があるため困っている。

他には、左肩関節外転90度前後で三角筋後部あたりに重い痛みが生じる。

       右


痛み部位


また、左肩関節の外旋に制限がある。

        右


きっかけは、ズボンのポケットに手を入れて、うつ伏せで寝てからである。


Q) 原因は何か?

A) きかっけとなる肢位からは想像できないので、各現象から共通点を見出す。

Q) 共通点は?

A) 内旋抵抗運動は内旋筋を作用させている。

左肩関節の外旋制限は、内旋筋による影響と解釈することができる。

       右


どうやら内旋筋と何らかの関係がありそうである。

Q) それは?

A) 上記だけでは、どう関係しているかわからない。

そこで、痛みの部位を見ると、三角筋を指していた。


また、重い痛みからも筋の可能性がある。

そこで、外転時に三角筋を触診すると、左肩では三角筋後部に強い収縮があった。

        右


内旋抵抗運動や外旋運動でも同様の現象が起きていた。


Q) これは?

A) 三角筋後部は肩関節外転、水平伸展、外旋の作用がある。
すると、外旋以外の動きは、選択的に強く働く筋ではない。

        右


このことから、三角筋後部は本来あるべき肩の動きへの作用とは別の働きを行っている可能性がある。

Q) それは?

A) 症例は、うつ伏せで寝てから症状が出現したと言っている。

この肢位でのうつ伏せ状態を想像すると、上腕骨頭は前方に位置しているので、このままうつ伏せになると骨頭はベッドにより、後方偏位と外旋方向の力を受ける。


すると、肩関節の前方に付着する組織が伸張される。

これにより、前方関節包の伸張性が増し、それに付着する肩甲下筋の緊張では骨頭を安定化できない。

そこで、三角筋後部の緊張を増することで骨頭を後方へ引き、前方関節包の伸張性を高めて骨頭を安定化させた。

Q) 上記推論を各々の現象に当てはめて説明できるか?

A) 内旋抵抗運動や外転は、肩関節内旋や外転の力を発揮するための骨頭の安定化作用として三角筋後部のオーバーユースが起きた。


外旋は、三角筋後部の収縮による骨頭後方偏位で、前方関節包の伸張が強まり制限が起きた。

        右


Q) アプローチは?

A) 関節包の前面に付着する肩甲下筋の緊張を高めて、三角筋後部を使用しなくても適切な関節包の張りを生み出す。

Q) 方法は?

A) スキャプラプレーン上で肩関節内旋運動を行う。

このとき、肩関節の挙上は30度程として、関節包の緩み(関節包が均等に緊張する肢位)を出させ、関節包の影響を少なくすることで筋の活動を高めた。


Q) 結果は?

A) 動作時痛は消失した。 


最後までお読み頂きましてありがとうございます。


  

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