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下肢の影響で肩にクリック音を生じた症例
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
20代の方である。
右肩関節を写真の様な肢位で外転させると、写真の位置で音がなり、軽い痛みを伴う。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189172004-Ll7mpFXCSz.png)
クリック音と軽度の痛みが生じる箇所は肩峰下部である。
Q) 肩峰下部でのクリック音と痛みが、この肢位で起こる場合に考えられる原因は何か?
A) 肩関節の外転角度から肩峰下の有痛孤の痛みとして捉えられる。
Q) 評価では?
A) 触診による左右差で、上腕骨頭上方偏位が確認された。
Q) 上腕骨頭の上方偏位が起こる原因は何か?
A) 腱板筋の低下は確認されなかった。
Q) 他には?
A) 三角筋の過収縮が考えられる。
Q) 三角筋の過収縮が起きてしまう要因として?
A) 骨頭の引き下げを押さえるための活動が考えられる。
Q) 骨頭の引き下げが起こるものとしては?
A) 評価で右肩甲骨が左に比べて、下制、下方回旋していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189430950-FtfSGN1z95.png)
下方回旋は、関節窩に骨頭が乗らず重力により下方への牽引力が増す。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189469298-4ln8MesHTb.png)
Q) 右肩甲骨の下方回旋の原因は?
A) 脊柱の側弯の影響があり、評価で左凸の側弯があった。
Q) 側弯の原因は?
A) 体幹、骨盤、下肢の影響があり、その各々の筋や関節の問題とアライメントに影響を与える姿勢反射がある。
ここで、立位前額面を見ると荷重線が右寄りである。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189565362-O0okwlYlWx.png)
Q) 評価は?
A) 下肢から体幹への影響に荷重連鎖や姿勢反射などがある。
そこで、まず観察しやすい姿勢反射の影響を見るために、左右へ重心移動を行わせた。
この時、重心移動による反応に違いがあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189642337-IQN53zRZ23.png)
特徴としては、左荷重では骨盤が左移動するが、右荷重ではそれがなく、体幹の右傾斜で対応する。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189694369-mDZcs2oLUh.png)
そこで、骨盤の移動を他動で実施した。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189731530-sMl1rhXt7k.png)
他動的な右荷重で右への骨盤移動は行えた。
しかし、左荷重ほどの移動ではなかった。
また、右荷重では左肩関節の外転角度が大きくなり、右荷重を避けようとする抵抗が見られた。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189814215-7JJCs73N40.png)
Q) これら反応から考えられることは?
A) まず、上肢の反応だが、左凸側弯による体幹の左側屈が右側屈ほど行かないため、右荷重でのバランスを上肢でカバーしていた。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189910693-RyCyKbMfRp.png)
骨盤の移動については、評価で股関節内転角度に左右差はほぼなかった。
また、骨盤を水平保持する股関節外転筋も、歩行を見る限りでは問題なかった。
ここで、骨盤中央から垂線を見ると、右は左に比べて内側荷重である。
![](https://assets.st-note.com/img/1712189980676-zCw9ZqYdom.png)
これは、立位でも同様であった。
![](https://assets.st-note.com/img/1712190018794-GEqOcg1v0U.png)
そこから、右足底外側荷重が行えないための反応と考えた。
Q) アプローチは?
A) 足の内返し筋を強化して、荷重足底外側にかかっても支持できるようにする。
Q) 方法は?
A) 下腿三頭筋を強化するために、つま先立ち運動を5分間実施した。
Q) 結果は?
A) クリック音と痛みは消失した。
Q) 立位では右荷重なのに、何故、右内返し筋が低下したのか?
![](https://assets.st-note.com/img/1712190165535-ObQ2rx7ip9.png)
A) 推論であるが
荷重線は右足底内側にある。
![](https://assets.st-note.com/img/1712190225335-KwD7fqZMGa.png)
恐らく、右内側縦アーチが潰れ、支持期底面が広くとれて、この位置で重心が安定する。
すると、左下肢はフリーになり、左足底内側・外側荷重に対応するが、右に関しては、内側荷重を主とし、それ以上の外側荷重が起こらないように立ち振る舞う。
要するに、右足底内側と左下肢で二足歩行の対応を行なっていた可能性がある。
まとめ)
右足底内側荷重でバランスをとるために、体幹の右側屈が左凸の側弯を招いた。
側弯により右肩甲骨は下方回旋し、上腕骨頭が下がりやすくなった。
それに対応しようと三角筋の緊張を高めた。
三角筋の緊張よる過活動が、上肢挙上において骨頭を上方偏位させてクリック音や痛みを生じさせた。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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