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患者さんを捉える -左頸部付け根に痛みが生じた症例 前半-
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
20代の女性。数日前に腹筋ローラーを使用した体操を行ってから左頸部の付け根に鈍痛が出現した。
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触診では、圧痛があり筋が緊張していた。
姿勢による症状
座位で症状が強まり、次に立位である。
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![](https://assets.st-note.com/img/1693020651524-cXijxYkhLi.png)
頸部の肢位の変化による訴えとしては
屈曲位では症状はない。
![](https://assets.st-note.com/img/1693020729639-pAYynKC3tn.png)
伸展位では痛みが強くなる。
![](https://assets.st-note.com/img/1693020768085-nHPltQmwUE.png)
左回旋で左頸部が詰まる感じがする。
可動域は左回旋が右回旋に比べて少ない。
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右側屈で左頚部から肩にかけて張り感がある。
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![](https://assets.st-note.com/img/1693020917779-5e0rztISEI.png)
Q) どのように考えていけばよいか?
A) 頸部のある特定の肢位で起こるメカニカルストレスである。
そのストレスを除去してあげればよい。
Q) どのようなストレスか?
A) 鈍重感から考えられる組織として、筋、関節包、骨、神経がある。
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評価では、その部位の圧痛と筋の緊張があるので筋が候補にあがる。
次に、どのような肢位で起こるかを見ると伸展位で起こる。
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![](https://assets.st-note.com/img/1693021303633-qvZdzbTLF1.png)
ここで、原因が僧帽筋、あるいは頸部伸展筋とすると、屈曲では筋に伸張ストレスがかかる。
また、伸展では動作時は収縮するが、伸展位では動作時よりも少ない筋収縮ですむ。
筋への負荷とした場合、屈曲位による筋の伸張や動作時の筋収縮の方が伸展位よりも負荷が大きい。
ところが、症例は伸展位で症状が出るので筋の可能性は低い。
神経とした場合は神経絞扼になるが、部位から筋緊張による絞扼が考えられる。
その場合も上記同様である。
Q) では、骨や関節包と考えると?
A) 骨や関節包とした場合、頸椎の動きと関係してくる。
症状は頸椎伸展位で出現する。
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この時、頸椎の関節包内運動は後方滑りが起きている。
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また、頸椎の回旋では左回旋で詰まり感があると言っていた。
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そして、左回旋が右回旋に比べて可動域が少ない。
![](https://assets.st-note.com/img/1693021669094-lWdy83CtSY.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1693021683574-uhFUAeFnyx.png)
この回旋の関節包内運動は、同側では後方滑りが起こる。
![](https://assets.st-note.com/img/1693021751696-val6lG70wf.png?width=800)
以上から関節包内の後方すべり運動に何か問題がありそうである。
そこで、症例の椎間関節の動きを触診で調べた。
Q) どうだったか?
A) 頸椎を伸展させると、左C4、C5の横突起が突出した。
これは、C4、C5が後方に滑らないため、他の関節の後方滑りと相対的な位置関係でC4、C5の横突起が突出したように感じる。
Q) 後方に滑らない原因は?
A) よくわからない。
Q) どうする?
A) C4、C5が滑らない分、C5/6やC3/4はC4/5分を補うために過可動になる。
特にC3/4よりもC5/6の方が動きが大きい。
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このことから、C4/5より下位の後方滑りが大きくなり、C4/5以下の椎間関節の圧迫、あるいは椎間関節をとりまく関節包の伸張により症状が出現したことが考えられる。
Q) 評価では?
A) C4、C5の横突起が前方に突出しているのを感じたので、それ以下の関節が大きく後方に滑ったと判断した。
ここで、頸椎は総頸動脈や横突孔から椎骨動脈が走行する。
これら動脈は生命に関わるので、頸椎の過可動に対して周囲の筋は緊張を高めて動きを押さえようとする。
そこで、僧帽筋以外の頸椎安定化筋を触診すると、左右差で左の緊張が高いことが確認された。
触診した筋は、肩甲挙筋(C1~C4)、斜角筋群(C2~C7)、頭半棘筋(C4~C7)である。
以上から、上記推論の可能性がより高くなった。
Q) 頸椎の伸展位、回旋以外の現象も、C4/5以下の過可動によるものとして説明できるか?
A) 座位で症状が強く、ついで立位の理由として、座位と立位の矢状面を見ると、座位は立位より胸椎の後弯が大きい。
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胸椎の後弯が大きいと頸椎の前方突出が大きくなり、正面を向くために頸椎の伸展を強める。
右側屈で左頸部から肩にかけての張りは、左頸椎を固定するための筋の緊張から来る。
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Q) アプローチは?
A) C4、C5の後方滑りを引き出すROMである。
Q) 方法は?
A) 頸椎伸展の際、C4、C5の横突起を押し、前方突出を押さえる。
場所が場所だけに、他者が行なうと危険なので、本人に説明し、加減しながら慎重に自身で行なってもらった。
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背臥位でロールタオルをC5以下に当て、頸椎を伸展気味で寝てもらう。
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これにより、C5以下の後方すべりを押さえ、C4/5の後方滑りを引出す。
Q) 結果は?
A) 頸椎伸展の可動域は拡大して症状は軽減した。
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Q) なぜ、このような事が起きたのか?
A) 腹筋ローラーは四つばいから両手でローラーの取っ手を持ち、身体を徐々に伸展させる。
その時、姿勢を維持するための腹部筋群を遠心性に働かせることで腹筋を鍛える道具である。
身体が伸びるにつれて姿勢維持がきつくなる。
症例は身体を伸ばそうとした時、潰れないように対称性緊張性頸反射(STNR)が出現して、頸椎伸展が強くなったのではないかと考える。
要は、原始反射が出現するほど無理をした。
Q) 症状は、なぜ、左だけなのか?
A) 次回の後半に続く。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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