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#160 今世界が注目!サステナブルな航空燃料「SAF」

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

レンゴーのプレスリリース

先日、製紙大手のレンゴーが、気になるプレスリリースを出していましたので、そちらをご紹介していきます。
まずは、記事の内容をご紹介したいと思います。

大興製紙株式会社における第二世代バイオエタノール生産実証事業(NEDO助成・委託事業)開始のお知らせ
レンゴー株式会社の連結子会社である大興製紙株式会社は、このたび、株式会社Biomaterial in Tokyo(本社:福岡県大野城市、代表取締役社長:泉 可也)と提携し、持続可能な航空燃料(SAF;Sustainable Aviation Fuel)の原料となる第二世代バイオエタノール※の生産実証事業を開始しますのでお知らせいたします。
本実証事業は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成および委託を受け、実施します。
2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、国際航空分野ではSAFの導入を各国において義務化する動きがあり、世界的に需要が高まる中、日本でも国産原料を用いたSAFの安定調達に向けた技術開発の取組みが急務となっています。 大興製紙(株)は、建築廃材などの未利用バイオマス資源から生成するクラフトパルプを原料として、産業用微生物による自製酵素を用いたバイオエタノール生産技術の開発・実証を行い、2027年までに年間2万klのバイオエタノール生産を目指します。バイオエタノールは、販売先の燃料事業者においてSAFに転換され、航空燃料として使用される予定です。
なお、大興製紙(株)は、本実証事業開始と並行して、事業ポートフォリオの見直しを行います。本実証事業用の設備を導入するとともに、5号抄紙機の設備更新を行い、老朽化した1号・2号抄紙機を停機して5号・6号抄紙機へ生産を集約することで、品質および生産性の向上とマテリアルバランスの最適化を図ります。
当社グループは、環境問題への対応を経営の重要課題の一つとして位置付けており、今後も環境負荷低減につながる製品の開発や再生可能エネルギーの利用拡大など多様な取組みを行ってまいります。

レンゴー株式会社 HP記事より

レンゴーと言えば、もう説明不要ですよね。
メイン事業は「板紙」。いわゆる段ボールとかをメインに作っている大手製紙メーカーです。
そんなレンゴーの連結子会社である大興製紙が、大きな事業転換を考えている、という記事でした。

大興製紙は、段ボールの原紙になるような「クラフト紙」とか、防水紙や耐油紙といった「機能紙」、変わったものでいうと金属を貼り合わせた「金属合紙」なんかを製造している製紙メーカーです。

大興製紙は、全部で抄紙機が4機あるのですが、そのうち2機、つまり半分を停止して、あるものの生産を本格的に進めようとしています。

それが、記事の中で取り上げられていた「持続可能な航空燃料(通称SAF)」です。

今注目が集まる「SAF」

「SAF」。あまり聞きなじみのない方もいらっしゃるかと思いますが、こちら、今めちゃくちゃホットなものなんです。

簡単に説明していきます。
飛行機は、「ジェット燃料」を使って飛びます。
車は最近、電気を使って走る「電気自動車」がグイグイきていますが、飛行機を飛ばすには電気じゃ難しくて、やはり「ジェット燃料」が必要なんですね。

ここで問題になってくるのが、「CO2の排出量」。
そう、飛行機ってめちゃくちゃCO2を排出しているんです。

でも、いまさら飛行機を使わなくするなんて無理じゃないですか。
ここで注目が集まっているが、「SAF」なんです。

「SAF」の原料と課題

通常のジェット燃料は、ガソリンとか灯油とかと同様に、「原油」から精製されます。
一方の「SAF」は、使用済みの食用油とか、サトウキビなんかのバイオマス燃料、それから廃プラスチックなんかを使って生産されます。

そう、これまでは廃棄されていた「廃油」とか「廃プラスチック」が原料になる訳です。
いま、飛行機の燃料にする為に、そういったものが取引されているんですねー。

しかし、問題もあるんです。
単純に「高い」これまでのジェット燃料と比べて数倍~十数倍の価格になってしまうんです。
もちろん、「SAF」の取引量が増えていけばコストダウンに繋がっていくけれども、なかなか時間がかかりそうですよね。

「SAF」の普及に向けた動き

そんな中、この「SAF」にとっていい動きが出てきているんです。

例えば、「炭素税」
これは聞いたことがある方も多いと思いますが、化石燃料の炭素含有量に応じて国などが企業や個人の使用者に課す税金のことです。
つまり、CO2を排出することによるdisincentiveがある、という状況。

それから、欧州連合(EU)では、燃料事業者に対して、2030年に6%をSAFにすることを義務付けています。

国内でも、経済産業省の管轄「持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進に向けた官民協議会」という組織ができて、「SAF」の導入に向けた議論がされています。

こうした状況を受けて、経済産業省によると、「今後のSAFの需要は、国内で2030年に約250万kL~約560万kL、2050年に約2,300万kL。世界で2050年に約2.94億kL~4.25億kLが見込まれている」そうです。

そう、各国が国をあげて「SAF」への移行が進められようとしているんですね。

大手製紙メーカーが進める「SAF」への事業転換

さて、今回の大興製紙のプレスリリースに戻ります。

大興製紙は、どんな原料で「SAF」を作ろうとしているのでしょう。
記事にあがっていたのは、「建築廃材等」でした。
つまり、「木材」です。
建築廃材(木材)をパルプ化して、糖化・発酵を経ることで、バイオエタノールを生産しよう、という流れです。
パルプ化はこれまでもやってきたことなので、そこから紙を作るか、燃料をつくるか、の違いですね。

紙の需要が落ち込んで、「SAF」の需要が増えようとしている今、すごくいい事業転換ですよね。
実はこの動き、今回のレンゴーに限らず、王子ホールディングスや日本製紙も進めています。

「SAF」。
まさに、紙・パルプ業界の過渡期と言える今、製紙メーカーの大きなテーマと言えるんじゃないでしょうか。

はい、という訳で今回は、今大手製紙メーカーが注目するサステナブルな航空燃料「SAF」について解説させていただきました。
いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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