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#171 大手製紙各社 2024年3月期決算短信

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

大手製紙メーカーの決算をみていこう!

さて、今回は、大手製紙メーカーの2024年3月期の決算短信が出揃いましたので、見ていきたいと思います。
取り上げるのは、王子製紙、日本製紙、レンゴー、大王製紙の4社です。

2023年3月期は、そもそもの需要減に追い打ちをかけた原燃料価格の高騰がありましたよね。
それに対する値上げの途中ということもあり、各社厳しい内容でした。

さて、2024年3月期も、紙・板紙の需要は軒並みマイナスでした。
現在も段ボールなど値上げの動きは続いていますが、一旦、2023年3月期のような大きな値上げの波は落ち着いたように思います。
という中での、各社の決算、どうだったのでしょうか。
それでは見ていきましょう。

王子ホールディングス

まずは、業界最大手の王子ホールディングス。

王子ホールディングスの2024年3月期の決算

売上高 1兆6,962億6,800万円(前年比▲0.6%)
営業利益 726億円(前年比▲14.4%)
経常利益 859億8,700万円(前年比▲9.5%)

で、「減収減益」という結果になりました。

王子ホールディングスと言えば、言わずと知れた、製紙業界のトップを走るメーカーです。
紙業界の方でなくても、王子製紙の名前を聞いたことがある方は多いんじゃないでしょうか。

さて、そんな王子ホールディングスですが、今期は、全体でみると「減収減益」という結果となりましたが、細かく見ていくと、国内事業は、値上の影響もあり、軒並み「増収増益」となっています。
しかし、海外事業が、パルプ市況の悪化、それから影響が大きかったのが、海外グループ会社のpan pac forest products社が大規模な自然災害で被災したこともあり、大きくマイナスとなっております。

前期は、厳しい国内事業を海外事業がカバーしてくれました王子ホールディングスでしたが、今期は一転、海外事業が足を引っ張る形になってしまいました。
海外売上高比率も、前期を2.7ポイント下回って34.9%となりました。

以上が、王子ホールディングスの決算でした。

日本製紙

続いて、業界2位の日本製紙。

日本製紙の2024年3月期の決算

売上高 1兆1,673億1,400万円(前年比+1.3%)
営業利益 172億6,600万円
経常利益 145億5,000万円

で、「増収増益」という結果になりました。

日本製紙と言えば、製紙業界2位であり、印刷情報用紙のトップランナーです。
この番組をいつもご視聴の方ならお察しの通り、印刷情報用紙と言えば、デジタル化の影響をもろに受けている分野です。

前期は、そんな主力の印刷情報用紙が大きな需要減とコスト増になり、また、石巻と秋田の抄紙機2台を生産停止にしたりで赤字に転じてしまい、厳しい1年でした。

しかし、今期はというと、値上げやエネルギー源の見直しの効果が大きく、黒字で着地しました。

需要減や原燃料価格の影響は依然として大きいものの、それ以上の値上げの効果が出ているといったところです。

以上が、日本製紙の決算でした。

レンゴー

続いて、業界3位のレンゴー。

レンゴーの2024年3月期の決算

売上高 9,007億9,100万円(前年比+6.5%)
営業利益 488億5,500万円(前年比+88.2%)
経常利益 479億8,400万円(前年比+67.3%)

で、「増収増益」という結果になりました。

レンゴーと言えば、なんといっても板紙。
段ボールなどの板紙が主力事業のメーカーです。

最近はメルカリなどの影響で、個人で段ボールを購入する方も多いかと思います。
そうじゃない方はお気づきじゃないかもしれませんが、段ボール、めっちゃ高くなってます。
ただ、段ボールって、メインの商品になることは稀で、一般的には資材ですよね。
つまり、利用者からすると価格を抑えたい部分なんです。

そんな、板紙を主力事業にしているレンゴーの決算は、どうだったんでしょうか。

ちなみに前期は、原燃料価格の高騰に苦しみながらも、値上げ・M&A・生産能力の強化・海外事業の拡大など、積極的に事業の拡充を進め、黒字に着地しております。

今期は、ギフト関連市場の縮小は続く中、人流増に伴う需要やPOPなどの展示品、販促物向けの回復により、生産量は前年並みとなりました。
そんな中、やはり影響が大きかったのは、王子ホールディングス・日本製紙と同様、値上げ
大きな利益増となりました。

やはり、今期のレンゴーを支えたのは、値上げです。
製品の特性上、値上げがしにくい板紙ではありますが、しっかりと値上げを行い、その結果がでております。

以上が、レンゴーの決算でした。

大王製紙

最後に、業界4位の大王製紙。

大王製紙の2024年3月期の決算

売上高  6,716億8,800万円(前年比+3.9%)
営業利益 143億6,700万円
経常利益 96億2,200万円

で、「増収増益」という結果になりました。

大王製紙と言えば、エリエールなどの家庭紙でおなじみの方も多いかと思いますが、実は、新聞用紙などの情報用紙や包装紙、板紙も大きな柱の事業なんです。
他の大手製紙メーカーと比べて、家庭紙の割合は多いけど、実は色んな紙を製造している総合製紙メーカーなんですね。

さて、そんな大王製紙の決算は、どうだったんでしょうか。

前期は、原燃料価格の高騰が大きな痛手となり赤字に着地しました。

今期は、主力の紙・板紙事業が、数量こそ減少したものの、値上の効果もあり、大きく回復しました。
一方で、もう一つの柱でもあるホーム&パーソナルケア事業は、中国での需要減(ベビーケアの需要減、出生人口の減少、ALPS処理水の影響など)が大きく、セグメント損失となっております。

しかしながら、全体としては黒字に着地しております。

大王製紙も、他の製紙メーカーと同様、値上げの効果が大きく出ております。

以上が、大王製紙の決算でした。

総括

さて、ここまで大手製紙メーカーの決算短信を見てきました。

今期は、最大手の王子ホールディングスが海外事業で予期せぬ痛手があり、減収減益となってしまいましたが、何れのメーカーも値上げの効果がしっかり出た一年だったんじゃないでしょうか。

今の紙業界は、(セルロースナノファイバーなどありますが)基本的には大きな技術革新もなく、需要はというと少しずつ減少しているといった、いわゆる成熟した業界となっています。

前期は、そこに大きなエネルギーコストの圧迫があり、とても厳しい一年となりました。

今期は、エネルギーコストの価格転嫁(値上げ)がうまくいき、各メーカーでその効果が出ていた、といった印象です。
各社それぞれに様々な努力はされていますが、基本的には堅実な原価管理がいかに重要かということがうかがえたかと思います。

という訳で、今回は以上となります。
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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