ラーメンと恋は冷めないうちに
俺は沢城○○。
どこにでもいる普通の高校生2年生だ。
勉強もスポーツも平均的な特に目立つこともない。
そんな俺が唯一といっていいほど
楽しみにしていることがある…。
○○:今日はここにするか…。
そういって俺は地元の商店街にある
ラーメン屋の前にいた。
俺の楽しみは放課後にラーメン屋巡りをすること。
この世で一番好きなものはラーメンと
いってもいいぐらい好きだ。
高校は地元から電車で5駅離れたところに通っている。
その間にはラーメン屋が沢山ある。
なので帰りがけに全店舗全メニュー制覇するのが夢だ。
??:今日は何にしようかな~
俺の隣にいる女性は同じクラスの齋藤京子さん。
なぜ俺が齊藤さんと来ているかと…。
――
遡ること数日前…。
俺が休み時間に教室でラーメン情報誌を読んでいると。
京子:ねぇ!○○!
○○:何?
京子:いつもそれ読んでるけどラーメン好きなの?
○○:うん。好きだよ。この世で一番。
京子:じゃあさ!今度一緒に行ってほしい
ところあるんだけど…。
○○:俺と?
京子:そう!私もラーメン好きなんだけど一人だと
行きづらいお店もあるしさ…。
○○:あ~なるほど。
京子:じゃ決まりね!
――
ということで半ば強引なかたちで来ることになった。
京子:さ!入ろ!
俺らはラーメン屋に入った。
このお店はいわゆる二郎系のお店だ。
齊藤さんが来たいといってきたが、確かに女性一人では
入りづらい。
○○:ところで斎藤さん。なんでここなの?
京子:前から気になってはいたんだけど一人では
入りづらいし、かといって一緒に来てくれる
ような男友達もいないし…。
だから○○と出会ってよかった!
○○:そっか。
話してるうちにラーメンが届いた。
俺たちが頼んだのはもやしが山盛りの二郎系の
代表みたいなものだった。
〇京:いただきます!
俺はあまり二郎系のラーメンは食べていないがここのは
おいしい。
隣の斎藤さんの満足そうな顔を見ればここの味も
納得である。
本当にラーメンが好きなのだろう。
○○:どう?
京子:うん!おいしい!
○○:でも、食べきれる?
二郎系だから当たり前だが野菜の量がえぐい。
京子:大丈夫!ラーメンはいくらでも入るから!
そういって斎藤さんはどんどん食べ進めていく。
○○:ならいいけど…。
――
〇京:ごちそうさまでした。
俺たちは完食して店を出た。
○○:は~美味しかった~。
京子:うん!来てよかった!
○○:教えてくれてありがとうね。
京子:こちらこそ一緒に来てくれてありがと!
○○:そうだ。写真撮らなきゃ。
俺は行ったお店と頼んだラーメンの写真を必ず撮る。
中には写真お断りの店もあるが…
京子:写真毎回とってるの?
○○:うん。この為にこのカメラを買ったんだ。
もうすぐ一冊のアルバムができるよ。
京子:ほんとに好きなんだね。
○○:そういう斎藤さんもほんとにラーメン
好きなんだね。すごいいい笑顔で食べてたもん。
京子:ラーメンは最強!
また一緒に行こうね!今度は○○のおすすめで!
○○:OK。
京子:じゃラーメン部頑張ろ~。
○○:ラーメン部?
京子:そ!おいしいラーメンを追い求めてお店を巡るの!
○○:なるほどね。
京子:じゃ、また明日学校で~。
そういって齊藤さんは帰って行った。
――
俺は家に帰ると今日行ったラーメン屋の写真を
パソコンに取り込んだ。
○○:今日行ったお店ほんとおいしかったな~
パソコンに保存している写真を見ながら
今日の出来事を思い出していた。
○○:ラーメン部か…。
俺は世間一般で言えばいわゆる陰キャだ。
女子ともあまり話していないから齋藤さんとまともに話したのも今回がほぼ初めてだ。
○○:どうなるかな…。
――
それからというもの俺と齋藤さんは週に2~3の
ペースでラーメン屋に行った。
お互いが気になっていた店やもう一度行きたいお店などに行っていた。
そんな生活が一か月続いたある日…。
??:○○?ちょっといい?
○○:なんだよ。“久美”。
こいつは佐々木久美。
俺の幼馴染だ。
久美:○○ってさ、京子と付き合ってるの?
○○:ブーーー!はぁ?
俺は飲んでいたお茶を噴きだした。
久美:うわ!汚いな~。
○○:お前が変な事言うからだろ?
久美:でも噂になってるよ?心当たり無いの?
○○:まぁ強いていえば放課後に一緒に
ラーメン屋に行ってるくらいかな
久美:多分それじゃない?
○○:でもそれだけだよ?
久美:でも周りの人はそう思わないかもよ?
あの京子と一緒にいるわけだし。
齋藤さんはこの学校で1,2を争うマドンナらしい…。
久美もその一人みたいだが。
まぁそんな人が男と居れば噂にはなるか。
そんな話をしていると…。
京子:○○~!
齋藤さんが来た。
久美:あ、噂をすれば…。
京子:ん?なんの噂?
久美:ううん。なんでもない。
京子:そう…。ところで○○。
次のラーメン部の活動なんだけど…。
久美:ラーメン部?
○○:俺ら二人のこと。
久美:ほんとにラーメン好きなのね。
京子:ラーメンは最強だもん!
久美:ってか、京子にとって○○ってどういう存在なの?
京子:う~んラーメン友達かな。
ズキッ…。
なんでだろう…。その言葉を聞いた時、
心が痛んだ気がした。
俺にとっても齋藤さんはラーメン仲間なはずなのに…。
それからというもの“ラーメン部”の時に変に
意識してしまう。
京子:今日行くところは家系だよね?
○○:へ?あぁ、そ、そうだよ?
京子:ん?どうかした?
齋藤さんが僕の顔を覗き込む。
齋藤さんはマドンナといわれるだけあって可愛い。
その顔が近くにあってドキッとした。
○○:な、なんでもないよ!
京子:そっか。早く行こ!
――
週末、俺は近くのショッピングモールに
買い物に来ていた。
入ってすぐに…。
久美:あれっ?○○?
○○:あぁ久美か。
久美:今日は京子と一緒じゃないの?
○○:えっ、あ、いや、違うけど…。
久美:そんな焦ってどうしたの?
〇〇:そ、それは…
俺らはショッピングモール内にあるカフェに入った。
久美:それで?相談って?
○○:実はさ…。
久美:京子のこと?
○○:えっ…?
久美:図星みたいだね。
さすがは幼馴染。勘が鋭い。
久美:京子こと好きになっちゃった?
○○:そうなのかな…?
正直人を好きになったことが
ないからわからない…。
俺はいままで異性のことをそういった目で
見たことがない。
だから俺は初恋というものを知らない。
久美:じゃ聞き方を変えるね?
こないだ京子が○○のこと友達って言った時
どう思った?
○○:なんというか…。心が痛んだ気がした。
久美:やっぱりね。
その時のあんたの顔がすこし暗くなったから。
○○:よくわかったね。
久美:そりゃね。幼馴染ですから。
○○:これが恋ってことかな?
久美:ま、そういうことじゃない?
京子と一緒にいてどう思うの?
○○:なんというか、少し抜けてるところもあるけど
そこが可愛く思う。
あと俺のラーメントークを退屈な顔せず
ずっと笑顔で聞いてくれる。
ラーメン食べた後の満足そうな顔を
見るとほっこりする。
久美:めちゃめちゃ好きじゃん…。
○○:でもどうしたらいいかな?
久美:うーん、京子がどうかわからないからね…。
たぶんマイナスなことはないだろうけど…。
とにかく一緒に居続けてみるしかないね。
○○:うん、わかった。ありがとな。
久美:いえいえ。あんたにしては珍しかったからね。
頑張んな。
そういって久美はカフェから出ていった。
○○:これが初恋ってやつか…。
俺もしばらくして、家に帰った。
――
俺はそれからも久美のアドバイス通りに
齊藤さんといままでと変わらずにラーメン屋に通った。
俺は相変わらず齋藤さんを見るとドキドキしていたが、
齋藤さんは満面の笑みでラーメンを食べていた。
次に行くラーメン屋をネットで探していると…。
○○:うん?なんだこの店…。
あるネット記事が目に入ってきた。
○○:幸運のラーメン屋?
そこには行くと幸せになるといわれているラーメン屋
のことがかかれていた。
そのラーメン屋は移動販売らしく見つかるのが
少ないらしい…。
特徴は黄色い暖簾が掛かっているそう。
目撃情報が少ないのと黄色い暖簾ということで
幸運が訪れるというもの…。
○○:ほんとかね…。
俺は昔から占いとかオカルトは信じていない。
○○:でもここに齋藤さんといければ…。
すこし淡い期待を抱き、その記事をブックマークした。
――
久美:どう最近?
○○:まぁ進展なしかな。
久美:噂はまだずっと続いてるけどね。
にしてもよくそんなにラーメン屋いくね。
○○:それでなんだけど…。これ見てくれる?
俺は久美に幸運のラーメン屋の記事を見せた。
久美:これ京子誘ったの?
○○:ううん、まだ。断られそうだし…。
久美:でもこういうの信じないんじゃなかったっけ?
○○:まぁね。でもなんか引っかかって。
久美:ほんとかわったね。
最近身だしなみとか気にしてるみたいだし…。
○○:うん…。いまのとこはたぶん友達のままだし…。
久美:まぁいいことじゃない?
いままではただのラーメンバカだったわけだし。
○○:それはいいすぎだろ…。
――
記事を見つけてから一か月…。
俺は幸運のラーメン屋を探していたが
中々見つけられずにいた。
京子:最悪…。
○○:まさか臨時休業とはね…。
今日は齋藤さんがずっと行きたいといっていた店に
向かっていたが、臨時休業だった。
京子:なんか最近ついてないな~。
お気に入りだったお店も閉店しちゃったし…。
2人で落ち込んで歩いていたその時…。
パララ~ラ、パララララ~。
○○:あの音って…。
遠くからラッパの音が聞こえた。
○○:間違いない…。
あの音はラーメン屋の屋台のラッパだ。
○○:齋藤さん!向こう行ってみよう?
ラーメン屋の屋台があるはず!
そういって俺は音のする方に向かった。
京子:えっ、ちょ、まって!
――
音が近くの路地から聞こえる。
○○:(頼む!幸運のラーメン屋であってくれ!)
そう願って路地を見ると…。
○○:…あった。
そこには黄色い暖簾が掛かった屋台があった。
京子:はぁ…はぁ…。早いよ…。
○○:あぁ、ごめん!でも齊藤さん!
ラーメン屋あったよ?
京子:あの屋台?
○○:うん。行ってみない?
京子:いいよ。この辺他にはラーメン屋なさそうだし。
俺ら2人は屋台に入った。
大将:へいらっしゃい!
元気のいい大将が迎えてくれた。
大将:うち種類が一種類だけだけどそれでいいかい?
○○:はい!お願いします!
大将:そちらの彼女さんもいいかい?
京子:へっ!?あ、はい…。大丈夫です…。
大将:よーし、すぐ作るから待ってな!
そういって大将は作り始めた。
にしてもさっき彼女って言った?
そういう風に見えたのかな?
齋藤さんを見てみるとさっきまで走っていたせいか
顔が赤い。
この屋台はちっちゃいので齋藤さんとの距離が近い。
そのせいでいつも以上にドキドキしてしまう。
大将:へいおまち!
ほどなくしてラーメンが出来上がった。
大将:冷めないうちにどうぞ!
○京:いただきます!
ラーメンをすする。
○○:うまっ!
そのラーメンは昔ながらの醤油ラーメンだが
今まで食べたどのラーメンがうまかった。
京子:おいしい!!
齋藤さんもいままでより満足そうな顔で食べていた。
その顔は今まで以上に可愛い…。
○京:ごちそうさまでした!
大将:あい、まいど!
俺が会計してる間、齊藤さんは外に出ていた。
お会計を済ませると…。
大将:兄ちゃん!
○○:はい?
大将:“何事も冷めないうちにな”
小声で齋藤さんの方を見ながら言った。
○○:えっ、あ、はい…。
大将:がんばれよ!少年!
なんか見透かされてたな…。
――
俺らは帰り道を歩いていた。
京子:あの屋台おいしかったね。
○○:うん。今までで一番だよ。
“何事も冷めないうちにな”
さっき大将に言われた言葉がずっと頭に残っている。
齋藤さんはモテる。
現にちょくちょく告白されているらしい。
そのうちこの気持ち伝えることもできずに
齋藤さんに彼氏ができるんだろうか…。
いやだ…。
ラーメン以外でこんなに何かに熱中することはない!
○京:あのさ!
○○:え、あ、先どうぞ?
京子:いやっ、○○からいいよ?
○○:…うん、その…。
ひよるな。伝えるんだ。ここで言わなきゃ一生後悔する。
○○:齋藤さん。俺は…
齋藤さんのことが好きです。
京子:えっ!?
○○:正直な話、今まで誰かを好きになることは
なかった。
最初は齋藤さんのことも友達して接してた。
京子:…。
○○:でも一緒にラーメン食べてておいしそうに
食べるとこ見てて、その顔をずっと見ていたいと
思ったし、齊藤さんと一緒にいると楽しい。
京子:○○…。
○○:こんなこと思うの齋藤さんが初めて…。
だから斎藤さん!
僕と付き合ってください。
俺は手を差し出して頭を下げた。
すると差し出した手に別の手の感触が広がった。
京子:顔上げて?
そういわれ顔を上げると、
笑顔の齋藤さんの顔があった。
京子:こちらこそよろしくお願いします。
○○:え!?いいの!?
京子:私嬉しい!○○がそういう風に思っててくれて。
齋藤さんが手を握る強さを強めた。
京子:私も○○が好き…。
こうしていられるのがうれしい…。
○○:齋藤さん…。
京子:やっぱりあの屋台、幸運のラーメン屋だったね!
○○:知ってたの?
京子:ネットで前に見てね…。
○○と行きたいと思って探してたけどこんな形で
見つかるとはね。
○○:うん、俺も探してて…。見つかってよかった。
俺は齋藤さんの手を引いて抱きしめた。
京子:えっ!?ちょ、○○!!
○○:ごめん、なんかこうしたくなって…。
京子:もう、しょうがないな…。
そういって齋藤さんは抱きしめ返してくれた。
○○:齋藤さん。俺、今幸せだよ。
京子:京子って呼んで。
○○:え?
京子:彼女なんだから京子って呼んで!
○○:京子。
京子:ふふっ。なあに?
俺の腕の中にいる京子が上目遣いで見て来る。
○○:ごめん、可愛すぎ…。
京子:これから慣れてよね?彼氏くん♡
大将の言う通りだ。
ラーメンと恋は冷めないうちに。
Fin
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