見出し画像

もしも…笑顔が素敵なカフェの店員さんがいたら…



僕は毎朝出勤前にあるカフェによる。


ここのカフェのコーヒーが本当においしくて、
これを飲むと憂鬱な仕事も頑張れる。


カランコロン


??:いらっしゃいませ!


カウンターに行くと初めて見る女性が立っていた。


??:何にされますか?


胸のところのネームプレートを見ると、
“S.SUGAWARA”と書いてあった。


○○:カフェラテで。


咲月:かしこまりました!
   お持ち帰りでよろしいでしょうか?


○○:はい。お願いします。


その女性はすぐに準備に入った。


咲月:これからお仕事ですか?


○○:そうですね。


咲月:朝早くきていただいてありがとうございます!


○○:いえいえ、ここのコーヒーが本当に
   美味しいんです!


咲月:ありがとうございます!


そんな会話をしているとコーヒーが出来上がった。


咲月:はい!お待たせしました!
   お仕事頑張ってください!


○○:はい。ありがとうございます!



咲月:いってらっしゃ~い!


菅原さんは笑顔で送ってくれた。


ズズーッ


○○:うん。今日もおいしい…おっ。


カップを見ると、“お仕事頑張ってください!”
とかわいらしい文字で書いてあった。


○○:よ~し、頑張ろ!


見送ってくれた時の笑顔を思い出すと
不思議と仕事は集中できた。


――


それから毎朝カフェに行くと菅原さんもいた。


咲月:いらっしゃ…あ!○○さん!!



○○:おはようございます。


咲月:おはようございます!
   今日もいつもので大丈夫ですか?


○○:はい!


コーヒーもそうだが最近は菅原さんの笑顔も
朝の楽しみになっていた。


咲月:お待たせしました!いってらっしゃ~い!


カップにも


“今日もお疲れ様!”


“今日も頑張って!!”


などとコメントを書いてくれる。


――


とある日…


午後の取引先に行く予定が2件あり向かっている。


会社を出てすぐ…。


プルルルル…


ピッ


○○:はい。△△商事の○○です。


先方:“あー○○さん!急で申し訳ないんですけど、
   この後のアポを別日に移動できないですか?”


○○:どうかなさいました?


先方:“ちょっと会議がおしてまして…。”


○○:わかりました。大丈夫ですよ。


先方:“本当に申し訳ございません!
   またご連絡いたしますので…”


○○:はい。おまちしてます。


ピッ


さて、どうしようかな…。


こうなってくると次の予定まで時間はかなりある…。


かといって会社に戻るのもめんどくさい…。


そういえば…


――


カランコロン…


咲月:いらしゃいませ…って○○さん!?




○○:こんにちは。


咲月:どうされたんですか?


○○:これから行く予定の相手がキャンセルになって
   その次の約束までの時間、
   ここで資料を確認しようかと…。


咲月:そうだったんですね!じゃあこちらにどうぞ!


このカフェはカウンター席しかない小さなカフェ。


僕はレジ近くの席に座った。


咲月:いつもので大丈夫ですか?


○○:はい!お願いします!


咲月:は~い!


菅原さんはコーヒーを作り始めた。


咲月:フフッ笑 なんか新鮮ですね!


○○:?


咲月:いつもは朝のちょっとしか会わないのに
   今日はこうしてカウンターに座ってるって!


○○:そう言いわれたらそうですね。


咲月:そう言えば、いつからうちに来てくれるように
   なったんですか?


○○:3か月くらい前にここの前を通ったらいい匂いが
   したんで気になって買ってみたんです。
   そうしたら本当に美味しかったんで
   そこからずっと…。


咲月:確かにここいい匂いしてますもんね!


○○:そういえば…いつもいる男性の方は…。


僕が通い始めた頃は白髪の似合う
ダンディな男性がいた気がするけど…


咲月:あ!おじいちゃんのことですね!


○○:おじいちゃん?


咲月:はい!このお店はおじいちゃんのお店なんですけど
   こないだ体調を崩しちゃって…。
   それで元々別のカフェで働いてた
   私がここで働くことにしたんです!


○○:そうだったんですね!


咲月:私…ここのお店が好きなんです。
   だから私もこういうお店を持ちたいって
   思ったんです。

○○:へ~。


咲月:まだまだおじいちゃんみたいに美味しいコーヒーは
   淹れられないかもしれないけど…。
   いつかはおじいちゃんみたいになりたいんです!


○○:立派ですね!


咲月:えへへ//あ!はい!カフェラテです!


○○:ありがとうございます!


咲月:ごゆっくりどうぞ!


その後次の取引の資料をコーヒーを飲みながら見ていた。


グゥ~


○○:あっ///


僕しかお客さんがいない店内におなかの音が響く。


咲月:フフッ笑 ○○さん?おなかすいてます?


○○:そ、そうですね///


咲月:なにか食べます?軽食も用意してますよ!


菅原さんはメニュー表を見せてくれた。


○○:なにかおすすめはありますか?


咲月:う~ん、自信があるのはナポリタンですかね。


○○:じゃあそれでお願いします!


咲月:はい!


そう言って菅原さんはナポリタンを作り始めた。


しばらくするとケチャップの焼けたいい匂いがしてきた。


咲月:お待たせしました!


出てきたのは銀のお皿に乗った昔ながらのナポリタンだ。


○○:モグモグ…ん!おいしい!


咲月:ホントですか!?



○○:はい!おいしいし、
   なんだか懐かしい気もしてきました!


咲月:よかった…。


僕は空腹もあってすぐに食べきった。


○○:ごちそうさまでした!


咲月:お粗末様!


○○:さて…そろそろ時間なんでいきますね。


咲月:はい!お仕事頑張ってください!


○○:はい!行ってきます!


ナポリタン…美味しかったな…。


――


それから僕は毎朝のコーヒーに加え、
週に2,3回は昼食にカフェに通っていた。


通ってる内に打ち解けくる内に僕と同い年という事が
わかり、敬語はなくなっていた。


そんな生活が一か月続いたある週末…


僕はいつものようにカフェに向かった。


カランコロン



咲月:い、いらっしゃいませ!


○○:おはよ!


咲月:お、おはよ!い、いつものでいい?


○○:うん、よろしく。


なんだろ、なんか今日の菅原さん。ぎごちないな…。


咲月:はい!カフェラテ!


○○:うん。ありがと。


咲月:あの…その…。


○○:?


咲月:私…待ってるから!

○○:??


咲月:そ、それじゃ行ってらっしゃい!


○○:いっ…てきます…。


待ってる?何をだろう…。


ゴクゴク…


○○:そう言えば…今日は何書いてるんだろう…。


カップを見ると…。


○○:?


そこにはラインのIDと”待ってるね”の文字が
書いてあった。


○○:菅原さんの連絡先…だよな…。


僕はスマホを開き、IDを打ち込んだ。


すると”菅原咲月”と出てきた。


そのアカウントを登録し、簡単な挨拶を送った。


――


その日の夜…。


プルルルル…


スマホに着信が入った。


○○:菅原さん?


ピッ


○○:もしもし?


咲月:”あ、もしもし?今大丈夫?”


○○:うん。大丈夫だよ。何かあった?


咲月:”いやっ、なにかあった訳じゃ無いけど…。”


○○:どうしたの?


咲月:”あ、明日って空いてるかな?”


○○:明日は…休みだし空いてるよ。


咲月:"そ、そしたらさ!明日私もお休みだからさ、
   どこかお出かけにいかない?"


○○:え!?


咲月:”い、嫌ならいいんだよ!急な話だし…”


確かに急な話だが、断る理由も見つからない。


○○:うん。いいよ!


咲月:”ほんと!?”


○○:断る理由も無いしね。


咲月:”そしたら、明日10時にカフェの前に来て!”


○○:うん。分かった。


咲月:”そ、それじゃまた明日!おやすみ!”


○○:うん。おやすみ。


ピッ


菅原さんとお出かけか…。


僕はその日の晩、
よほど次の日が楽しみなのかあまり寝付けなかった。


――


次の日…


僕はカフェに向かっていた。


○○:なんか不思議な気分だな…。


通いなれた道を歩いているが、
目的がいつもと違うため新鮮な気持ちだ。


そんな事を考えて歩いていると、カフェに着いた。


咲月:あ!○○さ~ん!


菅原さんが僕に気づいたみたい。


○○:あ!菅原さ…ん?


そこにいたのはいつもカフェで見るのとは
違った雰囲気をまとった菅原さんだった。


その姿に僕は見とれていた。


咲月:?どうしたの?


○○:ああいや!その…いつもと雰囲気が違ったから…。


咲月:変…だった?


菅原さんは上目遣いでこっちを見てくる。


その視線で余計にドキドキしてしまう。


○○:ううん!その…綺麗だなって…///


咲月:あ、ありがと///
          ま、○○さんもいつもスーツしか見てないから…
         か、かっこいいよ!


○○:ありがと///



咲月:そ、それじゃ行こっか!


○○:うん!


――


咲月:着いたー!


○○:ここは…。


着いたのはすこし郊外にある動物園だった。


咲月:さ!いこう!


○○:あぁちょっと待って!


――


ぱぉ~~ん


○○:でっけ…。


咲月:ホントだね…。圧巻。


――


がぉーーー!!


咲月:ひぃぃ!!


○○:迫力あるな~。


――


咲月:うさぎさん!!可愛い~!


○○:(ふふっ笑 子供見たい笑)


――


ひとしきり回った後、隣にある大きな公園にやってきた。


○○:にしても今日はいい天気だな~


咲月:そうだね~


天気は快晴。散歩にはもってこいの日だ。


咲月:そう言えば○○さん、おなか減ってる?


○○:そうだね。


咲月:そ、その~お弁当作ってきたんだけど…。


○○:ほんとに!?


咲月:うん…だから食べよ?


○○:うん!


僕らはベンチに座った。


咲月:はい!これどうぞ!


菅原さんから受け取った箱を開けると…


○○:おお!美味しそう!


中にはサンドイッチが入っていた。


咲月:あとこれ!


水筒を渡された。


咲月:“いつもの”ね!


中身は僕がいつもカフェで頼んでる
カフェラテが入っていた。


○○:それじゃいただきます。


咲月:どう…かな?


○○:うん!美味しい!


咲月:よかった~!
   これ実は今度カフェで出そうと思ってて…。


○○:いいと思う!コーヒーにもよく合うし!


咲月:そうだね!今度から出すから食べてね!


○○:うん!そういえば今日カフェは大丈夫なの?


咲月:週末はおじいちゃんのお友達の人が 
   手伝ってくれるからお休みなんだ~。


○○:なるほどね。


サンドイッチを食べ終わった僕たちは
そのままベンチでコーヒーを飲みながら
ゆっくりしていた。


○○:やっぱりこのコーヒーは落ち着くな~。


咲月:ほんと。おじいちゃんの時からこの豆使ってるけど
   いい味だよね~。


○○:これからも毎日お世話になります。


咲月:…ねぇ○○さん。


○○:ん?


咲月:○○さんって…好きな人っている?


○○:きゅ、急にどうしたの!?


咲月:い、いや!その…○○さん、
   前に彼女はいないって言ってたけど
   好きな人ぐらいはいるのかな~って…。


僕は菅原さんが好きだ。


毎朝、早い時間にも関わらず明るい笑顔で迎えてくれる。


その笑顔に僕は惹かれていった。


○○:うん…。いるよ…。


咲月:へ、へぇ~。どんな人?


○○:その人はいつも会うと笑顔で接してくれる。
   今の僕にはその笑顔が支えになってる。
   僕に元気をくれる。
   その笑顔が見たくて毎日頑張ろって
   思えるそんな人。


咲月:そっか…。その人幸せだろうな…。


○○:え…。


咲月:○○さんにそんな風に想ってもらえるんだもん。
   うらやましいな…。


○○:…。


咲月:こういうこと聞いといて…
   困らせるかもしれないけど…



私、○○さんのことが好き…。



○○:!?


咲月:私がコーヒー淹れる時のワクワクした顔。
   その顔を毎朝見るたびに今日もがんばろって
   思えるの。


○○:…。


咲月:お昼を食べに来てくれるようになってからも、
   おいしそうに食べてる顔を見てたら
   すごい幸せな気分になるの…。


○○:菅原さん…。


咲月:だから○○さんのこと好きなんだなって
   気づいたの。
   でも他に好きな人がいるんだったら諦めるしか…。


○○:ま、待って!


咲月:!?


○○:ぼ、僕も…菅原さんのことが好きです。


咲月:え!?


○○:僕も毎朝、菅原さんの笑顔を見るたび
   今日も一日がんばろって思える。
   いつからかその笑顔を見る為に
   毎日頑張ってるんだって思った。


咲月:…。


○○:だから…僕と付き合ってください!!


咲月:…グスッ。


○○:えっ!?なんで泣いてるの!?


咲月:だって…嬉しいんだもん!


○○:えっ!?


咲月:好きな人から好きって言ってもらえて
   嬉しいんだもん!


○○:…。


ギュッ


咲月:ふぇ!?

○○:ごめん。なんか愛おしくて…。


咲月:うん…。


○○:改めて言うね?僕と付き合ってください。


咲月:はい!喜んで!


僕らはそのまましばらく抱き合っていた。


――



カランコロン


咲月:いらっしゃ…あ!○○!おはよ!


○○:咲月!おはよ!


咲月:そうだ!今日夜家に行っていい?


○○:もちろん!


咲月:やった!じゃお仕事終わったら迎えに来てね!


○○:うん!わかった!


咲月:はい!カフェラテ!今日も頑張って!


○○:うん!


咲月:いってらっしゃ~い!!



ゴクゴク


カップを見ると…。


“今日もかっこいいよ!”


コーヒーも心もあったかいです!


Fin


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?