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もしも…旅館の女将に一目惚れされたら…


ガタンゴトン…

新幹線と電車に揺られて僕は京都にやってきた。

旅行が趣味の僕は休暇を使い前から気になっていた旅館に向かっていた。

その旅館は1泊1組限定で、中々予約が取れない。

今回来れたのは奇跡と言ってもいい。

ーー

電車を降り、街から少し離れた旅館に着いた。

〇〇:ここ…だな。

旅館の入口には大きく【乃木荘】と書かれている。

ガラガラ…

〇〇:すいませ〜ん。

??:あ!ようこそお越し下さいました!

中に入ると1人の女性が駆け寄ってきた。

??:本日、〇〇を担当させて頂きます。
女将の井上和と申します。宜しくお願い致します。

綺麗な人だな…

〇〇:はい。宜しくお願いします。

和 :では、お部屋へご案内致します。
お荷物お預かりしますね…って、キャッ!

ドサッ

〇〇:おおっと!

僕の荷物が思ったより重かったのか、
よろけて僕の方へ倒れて来たので
倒れる寸前で抱き留めた。

和 :あ///ありがとうございます///

〇〇:い、いえ!

今、僕の目の前には女将さんの頭がある。

シャンプーのいい匂いが鼻をくすぐる。

和 :す、すぐに離れますので!

〇〇:は、はい///

女将さんは恥ずかしかったのか、
顔を真っ赤にしていた。

それを見ているとこっちも恥ずかしくなってきた…。

ーー

和 :こちらがお部屋になります!

〇〇:お〜

案内された部屋は落ち着いた和室。

和 :差し支えなければ、
この後のご予定を伺ってもよろしいですか?

〇〇:そうですね…あまりこの辺は
来たことがないのでぶらぶらしてようかと。

和 :もしよろしければ…
私がご案内致しましょうか?

〇〇:いいんですか?

和 :はい!
この街にはオススメの所がいっぱいあるので!

〇〇:ではお言葉に甘えて…

和 :かしこまりました!いつ頃お出かけされます?

〇〇:う〜ん、30分後くらいですかね?

和 :では、そのくらいに伺いますね!

ーー

30分後…

コンコン

和 :〇〇様?ご準備はよろしいですか?

〇〇:はい。大丈夫ですよ!

和 :それでは…行きましょうか!

ーー

〇〇:結構人いるんですね…

街に出ると観光のシーズンだからか、
人だかりが出来ていた。

和 :あのぉ…〇〇様?

〇〇:はい?

和 :その…は、はぐれたらいけないので…
て、手を繋いでてもよろしいですか?

〇〇:え?あ、はい!大丈夫ですよ!

和 :あ、ありがとうございます///

ギュッ

僕らは手を繋いだまま、街を散策していた。

ーー

しばらく案内してもらいながら歩いていると…

??:あ!和ちゃ〜ん!!

和 :あ!さくらさん!

〇〇:さくらさん?

和 :私の高校の先輩で
このお団子屋さんの娘さんです!
ここのみたらし団子美味しいんですよ!

さくら:みたらし大好きな私が
作ってるんですからね!

和 :せっかくだから食べて行かれませんか?

〇〇:そうですね…頂きましょうか!

和 :じゃあさくらさん!みたらし団子2つ下さい!

さくら:は〜い!すぐ持ってくるまってて!

さくらさんは店の中に入っていった。

和 :はぁ〜楽しみ〜!

〇〇:そんな美味しいんですか?

和 :はい!

〇〇:ふふっ笑

なんか子供みたいで可愛いな…

旅館で会った時は落ち着いた大人な印象だったけど。

歳も自分と近そうだし…

この歳で女将ってすごいな…


そんな事を考えてると…

さくら:はい!お団子お待たせしました!

和 :ありがとうございます!

パクッ

〇〇:ん!うまっ!

和 :ですよね!
これより美味しいの食べた事ないです!

さくら:ありがとう!ところで〜…

和 :どうしました?

さくら:その人って〜和ちゃんの彼氏?

〇〇:!?

和 :か、か、か、彼氏!?

さくら:だって和ちゃんが
男の人といるの珍しいもん。

和 :ち、違いますよ!〇〇様はうちのお客様で…

さくら:手も繋いでたし。

和 :そ、それは!
この辺を案内するのに
はぐれたらいけないからそれで…

さくら:ふ〜ん。すっごい楽しそうだったけど?笑

和 :そ、それはもちろん楽しいですけど…

さくら:フフッ笑

さくらさんは少し笑うと僕の方を向いて…

さくら:〇〇さん…でしたっけ?

〇〇:はい?

さくら:和ちゃんはとーってもいい子ですよ!

〇〇:え?

さくら:あの旅館、人気の理由…
和ちゃんに会いたい人が多いからなんですよ?ボソッ

〇〇:はぁ…

さくら:もしかしたら…
和ちゃん、〇〇さんのこと好きかも知れませんよ?

〇〇:まさか…こんな綺麗な人が?

さくら:ちなみにこんなにくっついて
案内してるの〇〇さんが初めてですよ?

〇〇:…。

和 :2人で何話してるんですか?

さくら:ん?うちのお団子についてだよ?

和 :そうですか…。

さくら:嫉妬?笑

和 :へ?いや!ち、違いますよ!

さくら:フフッ笑

和 :〇〇様?そろそろ旅館に戻りましょうか。


〇〇:そうですね。

和 :じゃあさくらさん!ご馳走様でした!

さくら:どういたしまして!〇〇さん!
旅行楽しんで下さいね!

〇〇:はい!


それから僕たちは旅館へ戻った。
その道中も手は繋いだままだった。


--

旅館に戻った僕は夕食までの時間で
部屋に備え付けてある露天風呂に入っていた。

〇〇:ふぅ…

この旅館は少し高台にあるので街並みが一望できる。

ゆっくりしてるとさっきの団子屋での話を思い出す。

"もしかしたら…和ちゃん、
〇〇さんのこと好きかも知れませんよ?"


井上さんは確かに素敵な人だ。

でも好かれるようなことをした気はない…

〇〇:まさかな…

そんなことを考えているとのぼせそうなので、
僕は風呂から出た。

--

コンコン

和 :〇〇様?

〇〇:はい?

和 :お夕飯の準備が出来ましたので
お持ち致しました!

〇〇:ありがとうございます!

僕の目の前に豪華な夕食が運ばれる。

…ん?待てよ?

〇〇:あの〜井上さん?

和 :どうされました?

〇〇:なぜ2人分置いてあるんですか?

和 :もし宜しければ…ご一緒させていただければ…

〇〇:え!?

和 :ダメ…でしたか?

〇〇:うっ…

少し涙目の上目遣い…。

さっきのこともあり少し恥ずかしい気持ちになる…


〇〇:か、構いませんよ///

和 :ありがとうございます!

井上さんは僕の向かいに座る。

和 :あ!〇〇様はお酒は飲まれますか?
今日いい日本酒が手に入りましたので!

〇〇:せっかくなのでいただきます!

和 :はい!ではお注ぎいたしますね!

そういうとおちょこを2つ取り出し、
日本酒を注いだ。

和 :それでは…乾杯!

〇〇:乾杯!

和 :〇〇様はどのようにして
この旅館を知って下さったんですか?


〇〇:もともと旅行好きで
その界隈では有名でしたので…

和 :そうなんですね!お住まいは東京ですか?

〇〇:そうですね。

和 :そうですか…

何でか井上さんのテンションが下がっていたが、
その後はお酒も進み楽しく会話していた。

--

しばらくすると酔ってきたのか、
井上さんの顔が赤くなってきた。

和 :〇〇さん?

〇〇:はい?

和 :〇〇さんって…
お付き合いされてる方っていますか?

〇〇:いや?いませんけど?

和 :そうなんですか!よかった…

〇〇:よかった?

和 :いえ!こっちの話です!あ、お酒注ぎますね!

そう言って井上さんは隣にやってきた。

和 :今日は楽しんで頂けましたか?

〇〇:はい!井上さんのおかげです!

和 :あ、ありがとうございます///

--

酔いもいい感じで回ってきて眠くなってきた…

〇〇:ふぁ〜…

和 :ふふっ笑 眠くなってきちゃましたか?

〇〇:そうですね…

和 :でしたら…

ポンポン

和 :こちらでお休みになられますか?

〇〇:え!?

井上さんは膝を叩きながらそう言った。

和 :いや…ですか?

〇〇:うっ…

上目遣いでそう言われたら…

〇〇:お、お願いします…

和 :ふふっ笑 はいどーぞ!

僕は井上さんの膝に頭を乗せた。

和 :どうですか?

〇〇:何というか…お、落ち着きます…

これが最善の答えだろう…

和 :あの〜///

〇〇:?

和 :お客様にこういうことを言っていいのか
わかりませんが…
私、〇〇さんの事…好きになってしまいました。

〇〇:え…

和 :お荷物を運ぼうとしてよろけてしまった
私を抱き止めてくださった時から…
かっこいいと思ってしまって…。

〇〇:井上さん…

和 :あーすいません!!
そろそろお布団準備いたしますね!

〇〇:あ…


--

井上さんは布団を準備すると部屋から出て言った。

布団には入ったが、
さっきの出来事で頭が混乱して寝れそうにない…


コンコン

和 :〇〇さん?

〇〇:はい?

和 :その…い、一緒のお布団で寝てもいいですか?

〇〇:え!?

和 :すこし人肌恋しいといいますか…

〇〇:…いいですよ。

和 :え!?

〇〇:その…僕を一緒にいたいな〜なんて…

和 :ありがとうございます!!

僕と井上さんは一緒の布団に入った。

和 :あの…

〇〇:どうしました?

和 :さっきの話…ご迷惑でしたよね?

〇〇:?

和 :今日会ったばかりの人に好きって言われるって
普通に考えたら変ですよね?

〇〇:…

和 :私も変だとは思います!
でも…抑えきれなくて…

〇〇:…ありがとうございます。

和 :え…

〇〇:僕も井上さんみたいに綺麗な人に好きって
言ってもらえて嬉しいですよ。

和 :〇〇さん…

〇〇:それになんとも思ってなかったら
こんな風に一緒に寝ませんて!

和 :嬉しい…

〇〇:だから僕も井上さんのことが
好きなのかもしれません。

和 :ありがとうございます!
あと…1つお願いいいですか?

〇〇:なんですか?

和 :和って…呼び捨てで呼んでくれませんか?

〇〇:…和?

和 :くぅ〜もう我慢できない!

カバッ

チュッ

〇〇:!?

和 :〇〇さん…

〇〇:和…


--

次の日の朝…

服が乱れた眠っている和の横で
転職サイトで京都を探した。


Fin

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