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徒然

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気に入った俳句、短歌、一言を集めてぼちぼち呟きます。
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#散歩

【落ちかかる石を抱えて藤の花 子規】20230423
天候の良い日であったので、久しぶりに自宅を出て散歩をしてみた。適当な道を選んで歩いていると、2軒ほど軒先に藤の花が垂れ下りている家があった。自身の生命をつなぎとめようとして、長く下がる藤の花に希望を委ねる春の執念か。

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【水汲みに往き来の袖の打ち触れて散り始めたる山吹の花 子規】0507 
花瓶を持って、水を取り替えに流しまで持って行ったのであるが、その往復の間に着物の袖が瓶口にかかり、せっかくの花が散ってしまった。病床から良かれと思ってしたことなのに、望まないことが起きてしまったという無念か。

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【もののけの出るてふ家に人住みて笑ふ声する春の夜の雨 子規】明治30年、30歳の作なので、既に病状は重くなっているはず。それでも、自分の住居をお化け屋敷にたとえて笑う無邪気さ、もしくは皮肉っぽさが見える気がする。実際に訪れて子規が自分の家をどれほど気に入って住んでいたのか分かる。

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【うつくしき春の夕や人ちらほら 子規】春が訪れて気候が穏やかになってくると、人々の気持ちにものびやかさが生まれて活気に満ちてくる。本来の明るくゆるい兄ちゃんの資質が出ていて好きな句である。夜がきて暗くなる前の下町に、人通りが増えて夕景の寂しさが薄れる感じが良いなと思う。

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