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徒然

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気に入った俳句、短歌、一言を集めてぼちぼち呟きます。
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#俳句

【昼顔の花に乾くや通り雨 子規】夏らしい雰囲気が伝わるような句。ほんの一時の雨が強い陽射しを受ける花に生命を与えるのか、一時の雨も止んでしまえば花弁に乾いてしまうのか、一瞬の水滴の行方を凝視する描写が見えて好きだ。花草についての句や歌は多いが、これは余り寂しさを感じさせない。

關本ジンイチ
10か月前
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【寝ころんで酔のさめたる卯月哉 子規】20230416
4月に入り春らしくなり、酒盃を傾けて夜を過ごしたのだが、横になっているうちに冷え込んできたようだ、ということか。それとも、春になり動物が目を覚ますように、自身の感性が鋭くなったことを直感したという句か。春の夜は気候が繊細だ。

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【落ちかかる石を抱えて藤の花 子規】20230423
天候の良い日であったので、久しぶりに自宅を出て散歩をしてみた。適当な道を選んで歩いていると、2軒ほど軒先に藤の花が垂れ下りている家があった。自身の生命をつなぎとめようとして、長く下がる藤の花に希望を委ねる春の執念か。

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【春の夜や暗がり走る小提灯 子規】0430
22時を回る時間に電車に乗っていると、いよいよ夜が走り出すという感覚が湧き上がってくる。小さな子ども連れのお母さんが一息ついている座席の前で、首から顔にかけて刺青を彫り込んだ男が大声で笑っている。電車を降りた人々はどこへ帰るのだろうか。

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【蜩や夕日の里は見えながら 子規】0502 今日はよく晴れたと思い授業を始めたのだが、その後に引継や採点等の仕事を終える頃には、町全体が墨を塗られたように暗くなっている。当時の勤め先は母親の実家に近く、子規庵にもまあまあの距離であった。点々と点る家々の灯りを懐かしく思い出す。

5

【ひらひらと風に流れて蝶一つ 子規】0502 この数年、蝶が飛んでいるところを見たことがない。出不精なので、休日は遠くまで出かけることはない。自分の身一つ、風に上手く乗って、行きたいところまで行ってみたいと思うのであるが、ひらひらと舞い上がれるほどの軽さでもない気がしている。

8

【今やかの三つのベースに人満ちてそぞろに胸のうちさわぐかな 子規】0505 野球の試合を見物しているのか、それとも未だ健康が維持できていた頃に試合に加わっていたのか。満塁となったフィールドを見てわくわくしてきたという一首。俳句より短歌の方が字数が多いだけに、喜怒哀楽が伝わる。 

【うつくしき春の夕や人ちらほら 子規】春が訪れて気候が穏やかになってくると、人々の気持ちにものびやかさが生まれて活気に満ちてくる。本来の明るくゆるい兄ちゃんの資質が出ていて好きな句である。夜がきて暗くなる前の下町に、人通りが増えて夕景の寂しさが薄れる感じが良いなと思う。

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