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『HR』これからの採用が学べる小説

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広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を… もっと読む
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2020年3月の記事一覧

第4話『正しいこと、の連鎖』 【2】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第4話【2】 「あの……今日って、どういうアポなんですか」 AA本社の入っているビルと同じような広いエレベーター。高橋と並ぶと、かいだことのないスパイシーな香水が鼻に届く

第4話『正しいこと、の連鎖』 【1】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第4話【1】 待ち合わせは、六本木の某オフィスビル1階にあるスターバックスで。 東京で暮らすようになったのは大学からで、既に7年ほどが経っているが、それまでは東海地方の片田

第3話『息子にラブレターを』 【25】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【25】 中澤工業からの帰りのタクシー。微かにタバコ臭い車内から、遠ざかっていく古びた社屋を見つめる。そしてその背後に建つ四角い工場。 「室長」 視線はそのままに、

第3話『息子にラブレターを』 【24】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【24】 「室長……もう……」 そう言う俺を、室長は手で制した。そして俯く婦人に向かって、言った。 「どうして考えてやらないんです。タカちゃんの気持ちを」 婦人は

第3話『息子にラブレターを』 【23】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【23】 手紙を書いてほしいんです、室長がそう告げると、中澤婦人は驚いた顔をした。 当然の反応だろう。俺だって同じ気持ちだ。思わずチラリと横の室長を伺うが、予想通り、

第3話『息子にラブレターを』 【21】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【21】 「それで、何か思いついた?」 1時間ほど経った頃、相変わらずソファの上でスマホをいじっていた宇田川室長が聞いた。少し前から答えを用意していた俺は、振り返って

第3話『息子にラブレターを』 【22】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【22】 なんだそれ。あまりに「普通」の答えにガッカリする。その魅力が見つからないから苦労してるんじゃねえか。 というより、中澤工業はデメリットだらけの職場だ。工場は

第3話『息子にラブレターを』 【19】/これからの採用が学べる小説『HR』

「何度もそう言ったわ。あなたのせいなんかじゃない。それどころか、きっと息子は、あなたがいてくれたおかげでとても救われたはずだって。……うちの子、繊細な子でね。小さな頃からなかなか友達もできなくて。中学時代には、ちょっとしたイジメも……。それを救ってくれたのがタカちゃんなのよ。タカちゃんと仲良くなってからは、息子も随分明るくなって……だから、そんな風に言わないでって、あなたのせいなんかじゃないって」 沈黙が降りる。遠くから、機械が動く音だろうか、微かな振動音が聞こえる。 室

第3話『息子にラブレターを』 【20】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【20】 「君ならどうするかね、今回の件」 タクシーの中で、宇田川室長は言った。その手には、帰り際に婦人から受け取った募集要項がある。横目でそれを覗き込み、俺は絶望的

第3話『息子にラブレターを』 【18】/これからの採用が学べる小説『HR』

この小説について 広告業界のHR畑(求人事業)で勤務する若き営業マン村本。自分を「やり手」と信じて疑わない彼の葛藤と成長を描く連載小説です。突然言い渡される異動辞令、その行き先「HR特別室」で彼を迎えたのは、個性的過ぎるメンバーたちだった。彼はここで一体何に気付き、何を学ぶのか……。 *目次*はコチラ 第3話【18】 食事が終わり、皆が出ていった後、俺たちはあらためて婦人と向かい合った。ベトナム人スタッフの1人が入れてくれた緑茶。婦人は湯呑みに手を伸ばし、上品な手つきで、口