デキる弁護士はただの「法律屋」ではない

こんばんは。弁護士ねたろうです。
今日は、弁護士の意外な?価値を分析してお伝えしてみたいと思います。もっといろんな場面で弁護士を活用していただきたい、という思いを込めて。


法律のプロという本当の意味

弁護士は法律のプロです。これは間違いありません。しかし、ここにいう「法律のプロ」には、実は様々な能力が含まれていると思います。

①法律(ルール)を詳しく知っている
②ルールやその先例をリサーチする能力がたけている
③ルールの解釈のお作法がわかる
④具体的な事案に応じて、ルールの適用結果を見通すことができる
⑤具体的な事案において、問題解決のための法的手段を探すことができる

法律のプロって,パッとした印象は①なんですよね。しかし,正直いうと、ルールだけの詳しさなら、隣接士業の方だったり、それぞれの業界に長い人のほうが詳しいことは多々あります。①知識量だけでは勝負にならないこともあるのです。もちろん弁護士も日々研鑽を積みますが、どうしても限界はあります。

それでも、弁護士が法律のプロたるゆえんは、むしろ上記の②~⑤の方の能力にあります。つまり,調査をして,解釈をして、事例を適切に見立てて、対処法を考える訓練を,受験生の時代から,修習生,そして実務を経て,これでもかというトレーニングを積んでいることに由来します。司法試験が暗記で太刀打ちできないのも,このような能力をはかる必要があるからです。

法律屋という表現では現し切れない能力

上記を突き詰めていくと、弁護士は法律のプロ、というだけには段々ととどまらない価値を持つようになります。

例えば,そもそも具体的な事案を正しく見通すためには,(a)複雑な事情の中から,解決に重要な事実と重要でない事実を選別する力や,(b)混沌とした事実を整理されたストーリーとして組み立てる力が必要です。さらに,そもそもの(c)事実認定能力(供述の信用性判断や,証拠から推認できる範囲)についてもトレーニングを積まなければなりません。

さらに,法律の世界で適切な事案の見立てをするには,(d)論点整理の能力も欠かせません。

企業の不祥事やいじめ事件の第三者委員会に弁護士が呼ばれるのは,もっぱら上記のような力を有すると考えられているからです。

そして,さらにデキる弁護士は,(e)法的な手段にとどまらない,解決の手法を見つけ出すことが上手です。法的手段や裁判はどうしても杓子定規で,全ての問題を解決することはできません。しかし,だからこそ「裁判になるとこうなるな」「裁判では解決にならんな」等という予測をたてながら,あの手この手で交渉をしてみたり,登場人物の人間関係の力学をみながら,ちょっと手を加えてみたりして,事態の解決を図ります。落としどころや,今後を見据えた立ち回り方が見えてくるのです。

ここまでくると,もはや職人芸にも思えますが,結局のところ,日々の法的な問題解決の中で積み上げてきた,事実や論点整理,物事の見立て(アセスメント)の能力を磨きあげてきた賜物なのだろうと感じます。

弁護士の職域は広がっていますが,ケースワーク的な発想をもって福祉分野で協働する弁護士がいたり,あるいは問題解決コンサルティングに特化している弁護士が生まれるのも,弁護士は,このような「法律屋」にとどまらない無形の力を鍛えているからだと思います。不祥事対応なんかもこのような力の延長線かもしれません。


何かあなたのお力になれるかもしれない

「それって法律問題じゃないよね」といって相談に結びつかないパターンは数多くあります。

これは,ユーザー側に上記のような価値が浸透していない(弁護士は法律が絡むときだけのものだと思っている)こともありますし,弁護士側も法律以外の能力に無自覚な人が多いことも原因だと思っています。(もしかすると,それ法律相談じゃないよね,という理由で相談予約を断ることも多いかもしれませんね…)

しかし,もちろん何でもかんでもお役に立てるわけではありませんが,意外なところでお役に立てることも多いのではないかと思うこともあります。こんがらがった問題の交通整理をしたり,法律が絡むかどうかわからないけれど,ビジネス上の課題があったりするときに,「デキる」弁護士に相談してみるというのは,解決のためのカードの1つとしてアリなのではないかと思います。

個人的には,そういった汎用性のある問題解決も提供できる弁護士になりたいと常々頭の片隅で思っているところです。(と,いくら願っても,お力になれないことも多いですが…)

今日はやや抽象的なエントリでしたが(自覚アリ),ちょっとでも伝われば幸いです。



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