法律からみた愛犬の埋葬方法(と,弁護士としてのペット問題)

こんにちは,弁護士ねたろうです。今日はちょっと身近なのにニッチな法律のハナシから。


最近ワイドショーでは,紀州のドンファンの話ばかりで,皆さん食傷気味ではないかと思います。私自身,報道の仕方には首をかしげるところはありますが…それはさておき,庭に埋葬された愛犬を掘り起こして捜査を進めているという話があったので,この点に着目してみましょう。

そもそも愛犬を庭に埋葬するって,(特に田舎では)ある意味よくある話だと思うのですが,法律上の問題はないのでしょうか。

廃棄物処理法の可能性?

ペットの遺体については,まず廃棄物処理法の適用の有無が問題になります。というのも,廃棄物処理法2条1項には,廃棄物の対象として「動物の死体」を「汚物又は不要物」として例示しているからです。廃棄物処理法は,「生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ること」を目的としており(同法1条),対象にあたる廃棄物については,同法のルールに従った処理・処分が必要になりますから,自分の判断で埋葬するとマズイことになりそうです。

しかし,廃棄物処理法の「廃棄物」該当性については,環境省及び最高裁判例が,いわゆる「総合判断説」という立場をとっており,様々な要素・占有者の意思も考慮して決めるということになっています。

そのため,「動物の死体」といっても,家畜の死体や路上で轢死された死体は廃棄物にあたりますが,家庭でペットとして飼われていた動物については,飼い主によるその後の埋葬や供養が予定されますから,一般的には廃棄物処理法の適用外であると考えられているようです(参考/大阪府Q&A222)。

(ちなみに,環境省は「動物霊園事業で取り扱われる動物の死体は廃棄物処理法上の廃棄物に該当しない」旨の通知を出しています。)

供養の方法

ということで,ペットの遺体については,廃棄物処理法による規制はありません。とはいえ,他人の敷地や公共の場所に廃棄したり勝手に埋めたりすると,それはそれで他人の財物を毀損していることになりますから,違法の評価を免れません。

そのため,考えられる供養・埋葬の方法としては

(1)飼い主が自らの敷地に土葬する

(2)ペット葬祭業者・ペット霊園業者に依頼する

(3)自治体に依頼する

という方法が考えられます。紀州のドンファン(野﨑氏)は(1)の方法ですから,特に問題はなかったわけです。

なお,犬の場合には狂犬病の関係で,市町村に登録していると思いますので,亡くなった場合にも,市町村に届け出をしなければなりません(狂犬病予防法4条4項)。

なぜこんな投稿を…?

ということで,法的に特に問題がなさそう,ということになりましたが,なぜわざわざこんな投稿をしたのかということを書き留めておきます…(これが本題かも。)

実は私自身,子どものころから犬が好きで,2匹飼っていました。シュナウザーの雑種と,柴犬でした。今はもう天国に行ってしまいましたが,今でもよく思い出しますし,町で犬をみかけると,どうしても目で追ってしまうほどです(そしてニヤニヤしてしまいます。)。そのため,仕事として実際に取り扱った経験はないものの,心のどこかで,ペットに関わる法律問題には興味を持ち続けていました。それもあって,このような記事を書こうと思ったのですが…。それでは収まらない,ちょっとした熱い思いもあったりなかったり。

投稿の裏にある「ぼんやりとした野望」

そもそも,ペットの法律問題って,一般的な弁護士の仕事としてはほとんど認知されてはいません。ごくわずか,この分野で何人か有名な先生がいらっしゃることは存じ上げていますが(渋谷先生などなど),それでも町の弁護士で取り扱ってる人は少ないと思います。

弁護士の取り扱いが少ない一番大きな理由のは「お金にならない」からだと思いますが,一方で,ペットの数は増え,ペットの社会内における地位も上昇しています(家族の一員であるという認識も高まってきました。)。これに伴い,ペットビジネスに関わる業者も増えているはずです。

そこで検索してみると,どうやらこれらペット関係者の人が法律相談をするのは,行政書士が圧倒的多数のようなのです。いや,もちろん行政書士さんは許認可に絡むことが多いですから,ペット業者としては,そういう機会もあるのでしょう。そのこと自体を頭から否定するつもりはありませんし(非弁活動にあたる場合は怒りますが),仕事の奪い合いなどをしたいわけでもないのですが,とはいえ「弁護士も使ってくれよ~。役にたつかもしれないよ」というのが犬好きな一弁護士の本音であります。

ペットの売買や飼育・管理,医療など,色々な問題は実際にあると思います。また,少し前には富山でかなり劣悪な環境で業者が犬を飼育していたというニュースもありましたね。動物愛護を法務からバックアップしたいという気持ちもあります。

いかんせん,最近の弁護士業界は厳しいので「どういう分野に取り組めば安定した売り上げになるか」と言うことが議論されがちです。しかし,私個人この考え方があまり好きではありません。まずは「弁護士としてどういうことをやってみたいか」「法律と言うツールで,自分はどういう形で社会の価値に貢献するか」を突き詰めたうえで,そこから工夫して何らかの収益化につなげていけないかと思案しています。この工夫が一番難しいのかもしれませんが…ニーズとマッチすれば,何かしら面白い仕事ができるのではと思っています。

いずれにしても,色々やりたいことはあるのですが,ペットに関する法律は,その一つとして気になっているところなのでした。

今後も,こういった思いを背景に,勉強がてらちょこちょこと情報も発信していければと思います。



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