サックスのアンブシュアについて①

前提

 これからアンブシュアについての考え方をまとめていきます。ジャンルの指定は特に記していなければ基本的にはありません。ここで紹介する方法は、サックスという楽器を演奏する上で基本となるもので、そこにはジャンルという垣根はなく共通していることが多くあります。

「自然な状態で楽器を吹く」

 これは、私が今師事している先生から何度も言われていることです。アンブシュアに限らず、楽器を構えた時の姿勢やフレーズの話の時にも「自然に」という言葉が出てきます。今回に限らず私がサックスの話をする時は先生からの受け売りがほとんどなので、私も自然にという言葉をよく使います。
 

 自然な状態とは日常生活の体の使い方を指しています。普段歩いたり人と話したり、授業を受けたり机で仕事をしている時、人は何も意識せずに適切な姿勢をとりますよね(たまにびっくりするくらい猫背の人もいますが…)。あなたがご飯を食べる時の動作は、誰かに教わったものですか?その姿勢は食事の時だけの特別なものですか?答えはノーでしょう。お箸の使い方は習ったかもしれませんが、椅子への座り方はいつの間にかできたはずです。その時の姿勢は、パソコンでの作業や何かを書く時と大差ないはずです。それは座るという動作が共通しているからということと、その姿勢をとるのが簡単で疲れにくいからです。
 座るという動作に限らず、日常の中で自然に行っているような自然な姿勢を演奏に取り入れていこう、という考え方が根本にあります。つまり、楽器を吹くための動作、楽器を吹く時にしか使わない動作を極力減らそうということです。それでは、実際にどうすればいいか見ていきます。

セッティング

 どんなマウスピース、リード、リガチャー、楽器を使うべきなのか、という話題はまた今度別の記事にしたいと思います。この話題もとんでもなく広大で語り出すとキリがない分野ですが、今回は端的にだけ述べたいと思います。
 一つ目は、どんな伝説的なプレーヤーでもタンポが破れた楽器では何も吹けないということです。あまりにも自明の理すぎてわざわざいうことでもありませんが、タンポに限らず、楽器は可能な限り状態を保ちましょう。マウスピースの先端が欠けていたり、リードを半年間使い続けたりしたら何をやってもはっきり言って無駄です。半月で新しいリードに替えろとは言う訳ではありませんが、最低限自分でできる部分はいいセッティングを揃えましょう。

 マウスピースについては今回は何も言いません。割れたり何年もの間代々受け継がれているマウスピースはやめて、何とかお小遣いを貯めて新しいマウスピースが買えるといいと思います。
 リードは少し詳しく書きます。今の日本のサックス三大謎風潮の一つに、硬いリードを使えるやつがすごいというものがあります。最近はちょっとは無くなっているんでしょうか。僕が学生だった頃はまだありました。3半が使えるようになって初めて一人前みたいな雰囲気のことです。
 断言しますが、当然そんなことはありません。なぜそんなことになったのかはわかりませんが、数値が上がった方が何となくレベルアップした気になるからでしょうか。
 話が逸れました。私のお勧めは、一度ものすごく柔らかいリードを使うことです。薄いリードの何がいいかというと、きちんとコントロールしないとまともな音がでないところにあります。今まで硬いリードしか使ってこなかった人は、上手く鳴っていない状態の音を綺麗だと誤解しているケースが目立ちます。硬すぎてなりにくいから紙を歯に当てて噛み、痩せた音をノイズの無い澄んだ音だと勘違いしているのです。しかもその状態は自分では気付き難く、吹奏楽コンクールで演奏を聴いているとその状態に陥っているサックスパートをよく見ます。

 そこで薄いリードを練習の時に使うと、息も楽にたくさん使えるし、噛んでいたら音量が出ないし、かと言ってただアンブシュアを緩めるだけだとピッチもぶら下がって音が汚くなります。また、硬いリードを使っている人は口の周りの筋肉が力んでいることも多いです。なので長時間吹いているとアンブシュアを保つことが難しく、強く噛んでいるので下唇は出血し、しかも音も良くありません。噛み癖を矯正し、口の中のいい状態を見つけるのに薄いリードは最適なのです。

結構な文字数になったので、今回はここで一度終わります。YouTubeにアンブシュアについてもっと実践的な動画も上げていますので、合わせてご覧ください。


それでは次回もお楽しみに!

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