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ホットミルクを飲みながら

2010年12月5日発行 ロウドウジンVol.1 所収

 部屋を掃除をしていたらA5中綴じのエロ本が出てきた。なんかみるからに昭和な感じでエロいというよりはノスタルジー。なんと二十年以上前のエロ本『ホットミルク』。とは言ったって、もちろんその頃から買ってたわけではないよ。早熟すぎるでしょ、そうだったら。古本屋で購入したんだ。なんでかって?

 僕にはPCがなかったからだと思うんだけど、古本屋めぐりが趣味だった。二十歳くらいまで、ずっと。街の古本屋さんがメインの戦場だった。当時はまだブックオフみたいなチェーン系の古本屋はあまりなかった。だから街の古ぼけた古本屋。

 最初はゲーム雑誌のバックナンバが欲しかった。ゲームが好きだったから。だから書泉ブックタワーなんかはよく行った。PCが手に入るまでは。その頃は、旅行するわけもなく、カラオケするでもなく、ゲーセンめぐりしたり、自転車をふらふら乗り回したり。

 そういえば、ブンブン丸を集団ゲームでボコボコにしたことがある(笑)。PSの3Dバトルロイヤルゲームなんだけど、一番汚い勝ち方で優勝したんだ。常に二番手みたいな社交術を駆使して。あれが雑誌に載った唯一の経験だったね。

 好きだったゲーム雑誌は『ゲーメスト』。もうないんだけどね。『ゲーメスト』の出版社だった新声社ってのが神保町にあったんだけど、そこに直接買いに行ったり。まあ出版社で直接買うんじゃなくて、その会社がやっていた直販のゲームグッズショップ「マルゲ屋」っていうのが近くにあって、そこだと一般書店より二日くらい前に手に入ったんだ。

 さすがゲーム雑誌の会社があるだけあって、マルゲ屋の近くのゲーセンいくとライターが屯っていたこともあった。『ゲーメスト』のかなり熱心な読者だったから、やっぱりわかるんだよ。もちろん何者かわからないひともいるけど。

 メジャー雑誌の読者コーナーとかと違って、単行本化なんかもまずされないし。だから当時あった類似の雑誌、読者コーナーが面白い雑誌ってわからない。今好きなやつのバックナンバを必死に探すしかないんだ。

 ある日、近所の古本屋でそんな雑誌をどさっと見つけたことがあったんだ。それが『ホットミルク』。数もすごくて、何十冊も! でもそんなにお金もなかったからさ、少しだけ買った。高校生くらいだったかな。

 古いものといえば、音楽とかも古いのが好きだった。同世代とのカラオケでもひとりだけ自分の生まれる前のアニソンとか歌ってた。ドン引き(笑)。同世代でも『スーパーロボット大戦』とかやってるやつらは、そこら辺は分かるんだけど、僕の歌うのは全然。ま、カラオケなんかそんなに行かないんだけどね。

 でも普通に生活してても、そんな古いアニソンに触れる機会なんかない。メインはラジオ。いわゆるアニラジの中でも、アニソン系のラジオが好きで。『青春ラジメニア』というAM KOBE(現ラジオ関西)の番組があって、そういうのをひたすらカセットテープに録音してた。他にも近くのコミュニティFMとかでも結構良いのやってて。そんなのもテープとかMDとかに録音して、日がな一日聞いていた。

 それでも中学時代はJ―POPとかを聞いていた。イントロクイズとか超得意だった。その頃からラジオ自体がすごく好きで、週に四十時間くらい聞いてた。学校にいる以外はずっとラジオを聞いていた。ひとを拒絶する方向(古いアニソンとか)に進んでいったのはその後だね(笑)。

 いまは情報が入らなくなった。いや、入ってはくる。勝手に入ってくるから、残らない。飽食みたいな感じ。ハングリーさを失った。……いまでも遊びすぎなくらい遊んでるけどね(笑)。なにが飽食って感じかも。でも遊びに関しても、限界に挑戦しちゃってるつもり。

 そうそう。遊びってアウトプット系なんだよ。遊んでばかりの僕は情報をアウトプットばかりしてて、全然インプットがない。たとえば、ひとにあうというのがアウトプット的な楽しみだと思ってる。知り合いとかと会うと、特に顕著だよね。どういうことかって?

 例えば野球好き同士で話しても、何も新しいインプットはないよね。すでに知ってる情報で戦ってるというか戯れてる。アニソン系クラブイベントもアウトプット系の遊び。すでに知っているものを自分の中から取り出して、ひとと対話して。情報の方向性からすると完全にアウトプット。

 知らないひとがたくさん出るなんとかフェスみたいなのはインプット系だと思う。知らないアーティストのことを知る側面がある。ま知識量で他の観衆と戦ってる側面もあるけど。

 アニソンは他ジャンルに比べると絶対量が少ないと思う。だから新曲を追っかけるのも良いけれど、過去にさかのぼっていくとすぐにみんなと同じになれる。インプットの限界がすぐくるってこと。インプットとアウトプットのバランスを考えると、アウトプットでストレスを発散するしかないよね。そういう意味で、アニソン系クラブイベントをとらえても良いんじゃないかな。

 ストレスはあんまりない。たくさん遊んでるから。別の言い方をすると、阿呆になった(笑)。昔に比べてこじらせが少なくなった。いつの間にか何事にも期待しなくなった。ニヒルは幼少の頃からだけど。幼少の頃の自分がどんな感じだったのかわからないけど。

 就職活動はあまり真面目にやってなかった。一発入魂な感じ。ダメなエピソードはたくさんあって、面接が水曜日でさ、コンビニで『週刊少年マガジン』立ち読みして遅刻とか。就活後から卒業までのあいだに大きく変わったと思う。その頃からオフ会みたいなのによく行くようになった。それは社交的になる良いきっかけになった。というか、社交的な部分を内輪な部分から外に出すことができるようになった。

 理由のない突発オフ会みたいな、ああいうところにいくと本当にコミュ力のないひとがいる。もうなんでもありだと思った。無理にコミュニケーションを取らなくても良いと思った。ダメなときはダメだし。

 このオフ会だけみたいな一期一会の関係だと、学校のクラスの友人みたいな長期的なメンテナンスを必要とする関係とはぜんぜん違う。だけど、だからって別にひどい振る舞いをするわけではない。

 あわなかったら仕方がない。無理やり自分を曲げてまで頑張ることはない。最低限の礼儀さえ守っていれば。

 当時はそこまで固く考えていたわけではないけれど、今思うとそうかな。会社でもおんなじよう感じで肩の力を抜いてうまくやれてる。ふたまわりくらい年上の上司に「もっと仕事楽しんだほうが良いですよ」とか言っちゃう(笑)。せめて接待の時くらい楽しんでる素振りくらい見せなさいよ。そうじゃないと誰も得しないじゃん。

 バックグラウンドを共有しないひと、自分と違うタイプ(年齢とか性別とか)。そういうひとたちと会うことが、その手のオフ会に出入するまでは少なかった。バイトも自分の場合はそうだった。印刷所だったんだけど、おんなじような世代ばっかり。だからかもしれないけれど、バイトはすぐ馴染めた。

 お酒を飲むようになったのも大きい。気がついたら社交的になっていた。でも、元からない自分になったとか、性格が変わったわけじゃない。そういう側面が出る、出せるようになったってことは、お芝居やるときに似てる。自分の中にまったくない要素は出せない。そもそも社交性がないひとは、ぼくと同じようには振る舞えないと思う。逆にそういうひとには、ぼくにはできないことがたくさんある。

 社交的に振る舞えるってことは、内部のパラメタのバランスが変わったみたいなもんだよね。表と裏が裏返った感じ。

 最近はエロ本を読まなくなった。発掘された二十年前の『ホットミルク』もぱらっとみただけ。なんなんだろね。この気持ち。自分が変わったってことなのかな。周りが変わったのかもしれない。

 いまやってること? ……会社のトイレに何分こもれるか挑戦している(笑)。こんなにトイレにいて大丈夫なんだろうか、とか自分でも思ったり。その時とか暇だから携帯でエロ画像探してるね。反社会人的だと思うよ、ぼくって。

#エッセイ #ゲーメスト #ホットミルク #ブンブン丸 #エロ本 #ロウドウジン #ロウドウジン1


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