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3D工場構築ゲーム『Satisfactory』のプレイヤーと開発元の関係性が素晴らしいという話

アーリーアクセス開始から4年ほど経つ『Satisfactory』(PC)というゲームがあります。

開発はメチャクチャなバグゲー『Goat Simulator』で有名な Coffee Stain Studios ですが、意外なことに高い技術力が光る内容となっており、無数のアイテムを運ぶコンベアやシームレスなマップで動き続ける工場など、どのようなシステムで実現しているかプレイしていて不思議に思う面白いゲームです。

そして、このゲームはSteamのユーザレビューでとても評判が良いです。(記事作成時点で好評が97%)
これは単純に出来がいいことも大きな要因ですが、開発元の誠実さと情報発信によるところも大きく、それによって形成されたプレイヤーコミュニティとの良好な関係性も面白いので、実例を出しながら説明したいと思います。

実例1 : アップデートなどの予定日をよく延期する

さて、さっそく悪口のような章題ですが、これを大真面目に褒めていきます。

このゲームのアップデート予定日とされているものは多くの場合「開発で何も問題が発生しなければ可能な日程」と説明されており、安全マージンが取られていません。
しかしゲーム開発がいつも順調に進むものとは思えませんし、実際によく遅れます。

事前に聞いた日から遅れたことに腹を立てる人もいるでしょうし、悪く言われることを避けるなら余裕のある日程にしたほうがよさそうですが、「透明性のある開発」を標榜してこの方法にしているそうです。
その代わりに、遅れた状況説明なども必要に応じて行っているため、理不尽に腹を立てる人はネットであまり見ないように感じます。

これは開発者による誠実な姿勢と、それに応えるプレイヤーの関係性として一番わかり易いように思います。

※以下は個人的に好きな、「ミロの飲み方解説動画を作ってたのでアップデートが1週間遅れます」という冗談交じりの開発元公式動画

実例2 : 長年放置されたバグ

最近やっと解消された、特殊な移動中に装備品の表示位置がズレるバグ

大半の人からしたらアーリーアクセスのゲームなんてバグがあって当たり前という認識ではあると思いますが、それでもなぜ放置されているか分からなければ不信感は募ります。

なので、この開発元は情報発信と共有の場の提供によって疑問を解消しています。

まず、毎週1時間程度、公式のストリーミング配信で質疑応答の時間を取っています。
これだけたっぷり時間があると質問は出し尽くされており、プレイヤーが疑問に思うような点についてほぼ何らかの回答が出ていると言って過言ではありません。
広報担当もいないような小規模開発なため回答者がプログラマーで、多くを占める技術的な質問もほぼその場で答えています。

以下はその質疑応答などの情報発信を切り抜いた、ファンによるYoutubeチャンネルです。
記事作成時点で8千以上の切り抜きがあります。一つのゲームに関連する開発元からの情報発信が8千以上あるわけです。

そして公式がバグ報告や要望提出のサイトを用意し、開発側からのフォローアップとプレイヤー間の情報共有を一元的に実施できるようにしています。

結果的に正確性の高い情報がプレイヤー間に共有されるため、掲示板やSNSでも質問すれば誰かしらが答えて解消されるようになっているのです。

実例3 : 内容不明のストーリー要素追加が予告されてから4年経過

「ストーリーに関わる」と説明され4年以上、意味ありげに置かれているだけのアイテム

このゲームが完成し、正式リリースされる際にストーリー要素が追加されると予告されています。
ですが、ストーリー要素がどのような内容になるかはほとんど情報がありません。

これは前2つの実例にある透明性の高い開発姿勢と矛盾しており、ゲームシステムに大きく影響するであろう要素が分からないというのは不審なので評価に影響する危険性もあるのではないかと思います。

別会社のゲームですが海洋サバイバルアドベンチャーの『Subnautica』はアーリーアクセス中、徐々にストーリーを解禁してました。開発元はこれと比較した説明をしており、Satisfactoryで同様のことをすると中途半端な体験になってしまう可能性があるからやらないそうです。

この件を含め、「プレイヤーを楽しませること」を前提とした情報の隠蔽は積極的に行っています。
たとえば大きなアップデートの前に以下のようなティザー動画を公開し、わざと思わせぶりにした内容についてプレイヤーコミュニティの議論を呼び込んで盛り上げることが恒例です。

このような手法はプレイヤー側に疑念や不信感があると怒りを買う可能性もあるため諸刃の剣ですが、前述の誠実な対応で信頼を勝ち取っていることにより実現しているのではないかと思います。

プレイヤーと尊重しあい、愛される開発元

最近、アーリーアクセス開始前からコミュニティ対応担当の一人だったJace Varlet氏がインディゲーム開発のため退社し、異例と言えるくらい多くの惜しまれる声がありました。
窓口となったJace氏の貢献は大きいですが、ここまで愛されているのは一重に開発元全体の功績によるものだと思います。

プレイヤーと開発元で信頼関係を構築できづギスギスしているゲームがありますが、Satisfactoryを見ているとコミュニケーション次第で変わることもありえそうな気がします。

公式グッズとして売られているコミュニティ対応担当の抱きまくらカバー


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