矛盾
「先生、どうしてこの世は矛盾に満ちているのでしょうか」
「この世に矛盾などないぞ」
「矛盾だらけではありませんか」
「矛盾などない」
「そんなはずはありません」
「お前の考える矛盾とやらを挙げてみろ」
「たとえば、立派なことを言いながら裏で私腹を肥やす政治家です」
「矛盾も何も実際に存在するではないか。おいしい思いでもしなければ政治家などやってられん。それに『私は裏で悪いことをやっています』なんて堂々と言うバカがいるか」
「そうかもしれません。では、永遠の愛を誓っておきながら浮気する人間は」
「矛盾も何も実際に存在するではないか。浮気心の1つや2つ誰にでもあるだろ。それに夫や妻を愛しながら他の人を愛することだってできる」
「そういうものでしょうか」
「そうだ」
「しかし良いことではないでしょう」
「そんなのお前が決めることじゃない。それに矛盾と善悪は別問題だ。どうやらお前は『理想との乖離』のことを『矛盾』と言っているようだの」
「そうとも言えるかもしれません」
「その理想も誰かの個人的な理想に過ぎないことが多々ある」
「はあ…」
「矛盾という言葉で自分の理想を他人に押しつけないように気をつけるんだぞ」
「はい」
「もういいじゃろ。わしはこれから清純派AV女優のビデオを見るんじゃ」
「先生のような偉い方がそのようなものを見るなんて。矛盾しています」
「地位のある人間や年を取った人間がエロスに興味が無いというのはお前の勝手な思い込みじゃろ。それは事実でもなければ理想的でもない」
「すみません、人生経験が足りなかったようです。しかしAV女優で清純派という表現は矛盾しているのでは」
「それを矛盾と感じるのはAV女優やAV自体が汚いものだという意識があるからじゃ。その心の裏には職業差別や女性差別の意識が潜んでいるから気をつけるんだぞ」
「はい」
「なんなら一緒に見るか」
「せっかくですが、これから休憩するのに忙しいので」
「そうか。若いのにエロスより休憩を取るなんて矛盾したやつだ。理想的なビデオなのに」
めかぶは飲み物です。