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【FX】勝率99.98% PF1252という手法の考察

この記事を要約すると、表題のような素晴らしい手法を思いついた。しかし、検証したら正しくなかった。というものです。
空しい結論ですが、それでもこの記事にはいくらかの価値があると考えます。
なぜなら、この手法の原理自体は、インジケーターやオプション価格を介して多くのトレーダーに利用されているからです。
同じ原理を使った手法に不具合が発生しているのだから、他は大丈夫なのかと見直す機会になると思います。
キーワード:リスクリワード、正規分布、べき分布

免責事項については下記で確認してください。

思いついたきっかけ

webで無料の聖杯を探していた時に、「FX 5分足スキャルピング プライスアクションの基本と原則」の監修者まえがきに以下のような主張を見つけました。

利食いの値幅を損切りの値幅の2倍にしても、現実にはそれぞれの値幅に到達する確率は等しくはないので、真のリスク・リワードは必ずしも1対2ではない。

FX 5分足スキャルピングプライスアクションの基本と原則

1ページほどのまえがきの一部に上記の主張と解説が短い文章でさらりと書かれています。
監修者氏がまえがきで主張したいのは、著者の手法の優位性であり、これはそれを導くための一つの前提として、短く述べられているだけです。
しかしこの主張は、私のリスクリワードの理解は間違っているのではないか、そのせいで私のトレード成績は壊滅的なのではないか、と検証するきっかけとなりました。

(この記事はまえがきを見て思いついたトレード手法の考察ですが、私は監修者氏が相場は正規分布である。と主張しているわけではないと認識しています。そのため、この記事は監修者氏の主張を否定していません。
リンク先でまえがきが読めますのでぜひ読んでみてください。)

正規分布モデルのリスクリワード

一般的に、将来のトレードに対して用いられるリスクリワードとは、予定している損切り幅と利食い幅の比のことです。
勝った場合にいくら得て、負けた場合にいくら失うかに対して値幅の部分に着目した考え方です。
しかし、勝敗は値幅比に反比例する確率になるという前提を適用する場合、損益は常に0になります。
そのため、言葉通りのリスクとリワードを真には表しておらず、事前に手法の優劣を知る手段になりません。
逆に言えば、値動きを適切に表した確率関数を適用したリスクリワードは手法の優位性を示すはずです。

そこで、値動きが正規分布に従うと仮定して、その確率密度関数をリスクリワードに適用します。
正規分布は、インジケータやオプション価格の決定にも使われるため、最も値動きにふさわしい分布でしょう。
下図の正規分布の模式図に示すように、損切り-1σ(標準偏差)と利食い+2σとした場合に、それぞれに至る確率の比はおおよそ16:2です。
損切りと利食いの値幅としては1:2なので、この確率を考慮したリスクリワードとしては約4:1となります。PF(プロフィットファクター)表記なら0.25です。
損失が期待される値になってしまいます。

この1:2のリスクリワード比の場合、常に損失が期待されるかというと、そうではありません。
値幅を小さくして例えば0.25σ:0.5σにした場合は、PFで1.5になり利益が期待されます。
この同じ比率であるのに、値幅を小さくするとPFが変化するということの直観的な理解には、0.25σや0.5σの大きさを考えるのがよいでしょう。
ローソク足の始値を基準とすると、そこから-0.25σや+0.5σのラインは、大半はそのローソク足一本で超えられます。
つまり、決済までの値幅を小さくするほど、それが発生する確率が50%に近づき、どれだけ離れているかよりも、先にどちらに値が転ぶかの方が重要になるという考え方です。

これらのことから、トレードにおいては損切り幅と利食い幅の比だけでなく値幅自体の大きさが損益に大きく効いてきそうなことが分かります。
この原理を知らず画一的なリスクリワードを期待してトレードしていたならば、私の成績が壊滅的であったのも納得できます。

狙うべきリスクリワード

ここまでは切りの良い値を例に出しましたが、より広い範囲のリスクリワード把握のためRを使って勝率及びPFを計算します。
利食い幅を横軸に、それぞれ勝率とPFを縦軸にして、損切り幅は0.25σ、0.5σ、1σの3ポイント選んでいます。

この2つグラフからわかることはいくつかありますが、最も重要なことは3つの損切り幅に関わらず、利食いを大きくとるほどPF、勝率のどちらも落ち込みが激しく、4σ以上ではほぼ0になっていることです。
正規分布においてこの領域はとても起こりにくい確率として、トレードの結果に大きな影響を与えていることになります。
とすると、一般的には好ましくないとされる損大利小、つまり損切り幅を大きくした場合にはどうなるかという興味が湧いてきます。
損切り幅を1σ、2σ、4σとした結果を下図に示します。

一部は表示の範囲外となっていますが、PFのピークが極端に大きくなりました。損切り幅を大きくとるほどにPFが高くなっています。
勝率は利食いが小さい領域で100%に近づいていることがわかります。
グラフの外の値になりますが、リスクリワードが4σ:1σの場合は、勝率99.98%、PF1252です。
素晴らしい結果が得られました。

トレード手法

さらに素晴らしいことに、この結果はそのままトレード手法として使えます。インジケータのサインを待つ必要がないのでエントリー機会は常に存在します。エントリーしたら、設定した値幅分動いたところで機械的に損切り、利食いをするだけです。

設定した価格に到達する時間は待つ必要がありますが、これはエントリー時に決まっているのでチャートに張り付く必要がありません。
もし、決済までの時間を短くしたいのなら、σを小さくつまり時間足をより短期にすることで実現できます。
σを小さくすると利食い幅が小さくなりますが、どうせ勝率はほぼ100%なのだからレバレッジを高くすれば良いのです。

このように極めて高い勝率とPF、エントリーから決済までの自由度などから、この理論はほとんど完璧な手法を生み出しました。

本当でしょうか?何かおかしい気がします。

値動きをバックテストで検証

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