【FX】秘書問題を使ってトレードを厳選するという考察
損益が均一に分布していると仮定するなら、成績がマイナスのトレーダーはトレード回数を減らせば損失が減ることになります。
しかし、そう分かっていても、エントリーする瞬間は大きな勝算をもってトレードするものであり、トレードを我慢するということは簡単にはできません。
そこで、トレードを見送る方が得であると信じられるような理屈を考えてみたい思います。数学的な解法が確立されている秘書問題の手法は、トレードの厳選に役に立ちそうです。
この記事では秘書問題といくつかの派生問題の特性をシミュレーションしています。
自己紹介と免責事項
秘書問題とその派生問題
秘書問題とは、ランダムにやってくる秘書に対してその場で採用、不採用を決定するという条件で、一番良い人物を採用するためにはどのような手法をとればよいかという問題です。
お見合い問題とも呼ばれ、様々な派生問題があります。
数学的な最適解が決まっているので、裁量が入りません。
1.最良選択問題
秘書問題の基本であり、最良の候補者の獲得を目的とするものは、最良選択問題と呼ばれます。
見送ったチャンスを後から選択することができないというところなどは、トレードにも通じるところがあります。
・最良の応募者を選ぶ手法
1.n/e人目までは選択しない。(eはネイピア数)
2.n/e人目以降に、それまでのどの応募者より良い応募者が来たら採用する。
3.n人目まで2の条件を満たせないならn人目を採用する。(前提の1のため)
具体的な数字としては、開始後全体の36.8%が過ぎるまでは様子見してデータを集めるだけで採用せず、36.8%を超えてから、今までの一番良い候補を超えた候補者が現れたらそれを採用する。
nが十分大きいとき、ランキング1位の応募者を採用できる確率が36.8%となることが分かっています。
2.順位最小化問題
現実の問題では必ずしもランキング1位であることよりも、ある程度上位であればよいということも少なくないはずです。
順位を最小化するための順位最小化問題も解かれています。
これは、先の条件の8.だけが変わり、順位の期待値が最も小さくなる手法です。
・順位を最小化する手法
1.残り人数がt%のときr位以内なら採用する
2.n人目まで1の条件を満たせないならn人目を採用する。(前提の1のため)
前の問題では、暫定1位の更新が必要でしたが、この問題では、残り人数に依存して暫定r位の更新で採用できるようになっています。
ここでtの値はt1==25.8%,t2=44.8%,t3=56.4%・・・と次の式から求められます。
具体的には、前の問題と同様に最初の25.8%までは採用せず見送るだけです。
その後44.8%までは暫定1位を更新した場合に採用し、44.8%以降は56.4%まで暫定2位を更新した場合に採用・・・と、面接が進むにつれ採用基準を落としていくという方法です。
これは、応募者が十分大きいと平均的に4位以下を選ぶことができるという期待値を最小化できる手法です。
n=100人で計算した結果を採用8位まで示したものが下記の表です。
この例では、100人目に到達するまでに24位まで採用基準を落とすことになります。計算が手間ですが、平均的に4位以下が採用できるという点は強力な手法です。
3.派生問題1
よりトレードの実際に近くなるような手法として、候補者を選ばないという選択肢がある場合を考えます。
次の手法で必ず1位を選ぶことができます。
・選ばなくても良い場合の手法
1.n-1番目まで採用せず、n番目が確定1位となった場合に採用する
必ず1位が選べるとても強力な手法ですが、チャンスが来る確率が極端に低くなります。待つことができないトレーダーには守れない手法でしょう。
4.派生問題2
問題1、2は暫定上位の更新が採用のトリガーになりますが、n番目までに更新できなければn番目を強制的に採用するルールです。
n番目の採用は、全体の期待値を悪化させているので、n番目だけは候補者を選ばなくてよいケースを考えます
・n番目だけは選ばなくても良い場合の手法
1.n/e人目までは選択しない。(eはネイピア数)
2.n/e人目以降に、それまでのどの応募者より良い応募者が来たら採用する。
3.n人目まで2の条件を満たせないなら採用しない。(前提の1は無視)
派生問題1と最良選択問題の中間の性能を持った解法になると予想されます。
シミュレーション
最良選択問題で1位を選択できる確率は有名な話のようですが、期待値やそのばらつきなど他のパラメータについては、数学的にはあまり興味を持たれないためか、見つけることができませんでした。
トレード手法として利用するのであれば、1位だけでなく期待値や利率に関わる数値を把握しておきたいところです。
そこで、シミュレーションにより、上にあげた4つの手法の特性を確認したいと思います。
シミュレーション条件
n=100、試行回数10万回、
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