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研究者を目指す女性大学院生へ~名前はそのまま~

私は大学教員をしています。日本は、「女性が働く」という観点からするとまだまだ環境として改善すべきところがたくさんあります。でも、それを待つだけではなく、できる工夫をしていって「生きやすさ」を整えていくことも大切です。

「生きやすさ」の工夫において、研究者を目指そうと思っている女性の方々に伝えたいアドバイスは、「名前はそのままで」です。

現在の日本は、夫婦として婚姻すると同じ戸籍に入ったほうが法律的にも税制的にもいろいろと守られることが多いです。そして、女性が男性の姓に変更することが多いでしょう。

このとき、研究者を目指している女性大学院生は、「研究者としての姓」は生まれ持ったものを使い続けるほうが(圧倒的に)良いです。なぜならば、これはこれまでも多くの先達が指摘していますが、研究業績のまとまり方にあります。現在も大学院生であるならば学会発表デビューを果たされている方もいることでしょう。その業績が、姓を変えると同一人物によるものである、と説明することが途端に面倒になってきます。公募において、通常婚姻しているかどうかは、選考における考慮の対象にはなりません、というか、なるべきものではありません。しかし、研究業績リストにおいて姓が混じっていれば、それは「余計な説明・詮索」の状況を生み出しえます。

また、結婚は残念ながら、永遠のものではありません。結婚時の情熱が永久に続くことは保証できません。万が一離婚した場合、再び研究者としても姓を元に戻しますか?ちなみに、離婚しても相手の姓を名乗り続けることは可能ですが、では、再婚になったら?ーこのように、私事において姓が変化しうるため、仕事上は安定した氏名を持っておいたほうが良いと思うのです。

戸籍姓ではなく、旧姓を大学教員として使うにあたって、いまは授業や職員証その他、使用が認められている大学は多いと思います。パスポートにも通称として併記できるようになりました。

ただ、面倒なのは、銀行口座や保険証でこれらは戸籍姓になります。だから、その点はペーパーワークとして2つの姓を使い分ける必要がでてきます。

自分はというと・・、ずっと「生まれもった氏名」で通しています。

つくづくこうしておいて良かったと思います。大学院生のときに結婚したけど、つい最近離婚したので。しかし、痛恨の失敗だと思うのは、博士論文の著者名が、結婚後の姓になっていることです。博士課程のときに改姓届けを出してしまったばっかりに、自動的に新しい姓になってしまった。博士論文が合格し、正式な手続きの前に交渉してカッコ書きで元の姓をいれてもらいましたけども、これはミスったな、と思います。

こういうことは、教えてほしかったと思うわけです。私の研究者人生において、結婚というプライベートな情報の痕跡が残るのが博士論文なのです。

このほか、このトピックではポツポツ書いていきたいと思います。

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