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良い教材がない

 中小企業診断士試験用の経営法務・民法の教材を見て驚いた。
 テキストは、法律の分類から始まり、権利能力・意思能力・行為能力、意思表示の瑕疵、代理、時効、債務不履行、債権者代位権、債権者取消権、保証…と制度の紹介が延々と続く。そこでは、各制度が、どういう事態を解決するために、どういう考え方に基づいて設けられているのかについての説明はない。制度を理解させるという作りにはなっていないのだ。

 一次試験7科目のうちの1科目の、そのまた25マーク中のせいぜい5マークの対策としては、覚えるべき知識をコンパクトに提示すれば足りるということだろうが、かえって、学習を困難にしてしまっている。
 制度の理解がなければ、押さえるべきポイントが分からず、学習は脈絡のない断片的な知識の丸暗記となってしまう。これでは、知識がそのままの形で問われる問題(「著作権の存続期間は何年か」とか)でない限り、正解することは困難だろう。

 テキストを補完すべき問題集も同様だ。その解説は「○○条は〜〜と規定しており、選択肢アは誤り」のような、暗記すべき知識を披露するだけのものが多い。加えて、民法は、範囲の広さに比して過去問の蓄積が少ない。これまで出題されたことのない知識が問われることも多い。

 脈絡のない断片的な知識を際限なく丸暗記しなければならず、しかも点数に結びつかないとなれば、受験生が民法に苦手意識を持つのは無理もない。

 しかし、民法(法律)の学習は、制度を理解することである。一定量の暗記はもちろん必要だが、その際、制度の理解と結びつけて覚えれば省力化もできるし、何より、使いこなせる強固な知識となる。
 今後、本稿では、出題が予想されるテーマを取り上げ、制度の理解に繋がるよう解説していきたい。
 




 






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