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新春浅草歌舞伎を見て②

前回に続いて第2部の感想を。

Ⅰ.熊谷陣屋

初役の歌昇さんの熊谷、師である吉右衛門さんの熊谷をそばで見てよく勉強していただけあって、役の肚を大事にする播磨屋の芸を体現していると感じた。
なかでも首実検の後、妻の相模に
「コリャ女房、敦盛卿(本当は小次郎。熊谷と相模の実の息子)の御首、藤の方にお目にかけよ」という台詞を言うが、その言い方に息子を失った父親の哀しさ無念さ、でも義経の前で取り乱してはいけないから必死で哀しみを押し殺し、なおかつ(妻よ、お前もさぞかし哀しかろう)という妻を思いやる気持ちも感じ、涙が滲んできた。

この熊谷と盛綱もそうだけど、役者さんにとっては身体的にも精神的にも計り知れないほどの辛さがあると思う。
吉右衛門さんは「十六年は一昔…」のあと花道から下がってからしばらくその場で泣き崩れて立ち上がれなくなることがあったと何かで聞いたことがある。
これを25日間ほぼ毎日演るんだから、どういう精神状態だったんだろう、ちゃんと眠れていたんだろうか…とすら思う。

新悟さんの相模、我が子の首をかかえて哀しみを表現するクドキのあと、首桶にそっと戻して首を撫でる仕草があるのだが、もう役そのもの。完全に母親になっていたと思う。

Ⅱ.流星

これは次回に書こうと思います。

Ⅲ.魚屋宗五郎


初役の松也さんの宗五郎、お酒の飲み方とか徐々に酔いが回る感じとかがもう少しだな。
こればかりは何回も演って体得していくものだから次回演るときにどう変化してるか楽しみにしている。

新悟さんの女房、熊谷とはガラッと変わって宗五郎に尽くす世話女房という感じが出てて良かった。宗五郎はこの女房がいないとホントに駄目なんだなというのが伝わってきた。新悟さん、この浅草歌舞伎で女形のあらゆる役どころをほぼ演ってらっしゃったんじゃないだろうか。まあお姫様は演ってないか…
とにかく今後いろんな役を見てみたい。


次回は推しの種之助さんの浅草歌舞伎での活躍について書きます。