アーモンド・スウィート 「ぼく思うんです 先生」と秀嗣
秀嗣の受験勉強は捗っていなかった。どうもテストと言う物が秀嗣と相性が合ってないように思える。秀嗣は授業は楽しい。先生の話しを聞き、黒板の字をノートに書き写すなど、時間を忘れるほど集中できる。知らないことを知るのが大好きだから。しかしテストには身が入らない。以前やった内容を振り返ってるようで好きじゃない。新しい事が知りたい。秀嗣が知らない情報、知識に触れたい。一度聞いたことは何度も聞きたいとは思わない。いちいちどんな内容だったかを問い詰められたくない。
「先生、水素を燃料に動く車ってなんですか?」「先生、火事を一瞬で消す窒素って何ですか?」「先生、原子力は安全なんですか、危険なんですか?」「先生、アメリカ大統領は、今でも世界のリーダーを言えますか?」「先生、円安でこれまで以上の不況がくると言われていたのに、最高収益を出してボーナスが沢山出る会社がある、てどういうことですか?」など、次々と浮かぶ疑問、毎日テレビでネット動画で目にする耳にする情報の正しい知識を知りたい。どう判断すれば良いのか、天野先生の意見が知りたい。
ギリシャ・ローマが分かればアメリカが分かると塾の先生は言ったけど、どう関係するのですか? どう似ているんですか? ローマと同じ終焉をアメリカの辿ると塾の先生は思っているのですか? 思ってないのに、ギリシャ・ローマの歴史の本を読めと簡単に言うのですか。なぜ先生の個人的な意見を言ってくれないのですか。なぜ今日ニュースで言っていたロシアのウクライナ侵攻に関しての感想を言ってくれないのですか。今、現在の方が必要なのではないですか。インターネットやスマホ、マイナンバーカードの情報がわたしたち小学校五年生にも必要なように、アメリカの動向、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル実験、核実験、中国の台湾侵攻の恐れ、ついでの沖縄へも伸びるかもしれない中国の野望の手、知っている必要があるんじゃないですか。何で「お前たちに関係ない」「私は興味が無い」「そんなこと知ってどうする?」「あなたたち出来ることは何も無い、だかから関心を持つ必要がない」というのですか。塾の先生は今まで一度も選挙に行ってないんですね。先生と同じ考えの人が日本国民全体の六割から七割も居て、選挙に行かないから日本は未だにバブル崩壊後――失われた十年、二十年、三十年と重ねて――、いまだに不景気なんじゃないですかね。いつになったら先生は現在の状況に関心を待つつもりですか。大学を出ても、役人任せ、政治家任せ、知らない誰か任せを止めて、自分の意見を持つんですか。いつになったら僕に先生の意見を聞かせてくれるんですか。
先生は先日の地震でも慌てませんでしたね。そして、地震のことを考えるのは無駄だ。いつか来る、しかし、いつ来るか分からない。十年先かもしれないし、学者の言うとおり三十年先かもしれない。私や貴方たちが生きている間には来ないかもしれない。と言っていましたね。避難訓練をして、非常用バッグを用意して置けばそれで十分とも言ってましたね。自分は、自分の家に非常食も用意してないけどと笑って言ってましたね。
先生は地震が来ても生き残ると思っているのですか? それとも自分は助からないと諦めているんですか? なぜ地震の話しを無駄と言うんですか。なぜ地震のメカニズムを話すと、「知ったかぶりして!」と言って責めるのですか。じゃあ、先生に聞いても答えないのはどうしてですか。知っていることを話すと自慢話しになって、空気が読めないヤツ、自慢話しをするヤツと言われるから、空気を読んで言わないのが大人のマナーなんですか。
こんことばかり、塾でも自分の部屋でも考えてしまう。だから受験勉強に身が入らない。バカな空想ばかりしているヤツと天野先生にも、塾の先生にも言われる。時々、ボーッとしている怒られる。
人志は、ぼくの話しに付き合ってくれるだけど。最近はおしゃべり出来てない。月姫とも、三保子とも会ってしゃべってないな。
彩葉と、そんなことやこんなことを話せたら楽しいのに。彩葉とは一度も、そんなことやこんなことを話してない。嫌われたくないから話してない。バカにされたくないから話してないな。だって彩葉は塾の先生と同じようなことを時々いうから。たぶん塾の先生を尊敬しているんだろう。塾の先生と同じように、大人のマナーで話さない、国内の状況、外国の状況がどうなろうと我関せずという態度を取ってるんだろうと思う。
彩葉に話して
それ考える必要ある? と言われた嫌だな。
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