- 運営しているクリエイター
2022年8月の記事一覧
アーモンド・スウィート 猫 いなくなる
月姫は朝から幸せだった。まだ、あの仔猫を飼って良いと許しがあったわけではないが、父も母も月姫の話しを黙って聞いてくれた。
「まず学校に行って来なさい。月姫の仔猫を思う優しい気持ちは分かったから。帰ってきてからちゃんと話そう」父は怒ったり、月姫の話を遮ることなく最期まで聞いてくれた。
「そうよ。仔猫のこと心配だと思うけど、遅刻するわよ。とりあえずお父さんとお母さんに任せなさい。それとも、今日は仔猫
アーモンド・スウィート 仔猫を拾う
今日は朝からの雨だった。月姫が傘を差し、家に急いで向かって歩いていると、子猫が道端に佇んでいた。月姫は足を止めた。早く帰って店の手伝いをしなければならないのに、仔猫たちが入った段ボール箱の前で足が動かなかった。家はおでん屋なので動物は飼えないと昔から聞かされてきた。素直に、ウチでは小鳥はおろか犬も猫も飼えないんだな、と諦めていた。今どき仔猫が道端に捨てられているなんてあり得ないと思った。仔猫は三
もっとみるアーモンド・スウィート しかし、帰る
千々石麿実は、誰に対してもいい顔をする自分をイラ立たしく思っている。基本、麿実は平和主義である。
麿実は幼稚園に上がる前から知っている青山満月と仲が良い。麿実の家と満月の家は歩いて十分もない近さである。登下校時には二人で一緒に来て、一緒に帰る。休み時間も満月の席に麿実が行き、周りに空いてる席があれば座り、二人だけで話している。二人だけの理由は、満月が人嫌いで気難しい性格だからだ。麿実は人と揉
アーモンド・スウィート 映すものは顔か心か
(加瀬)由里子は自分の部屋で、机に置いた鏡に自分の顔を映しため息を吐く。目が細い。口が大きい。鼻が低い。額が広い。頬骨が出っ張てる。可愛い部分がない、と。大人になれば少しは可愛くなれるのか。化粧では間に合わず、整形手術が必要なのではないか。
可愛い顔の子は得だと思う。人は見た目が九割と言われている。その得するのは、人が良さそうだと、優しそうだとか思われる顔ではないはず。美少女、美人、美少年、イ
アーモンド・スウィート 二人目の友達の予感
夜空を見上げていると幸せを感じる。東京は沢山の星が見えないけど、まして神田では見上げても見える星は少ないけど、晴れた日に見上げれば、一つくらいは星が見える。北極星かもしれないし、火星かもしれないし、オリオン座の一部かもしれない、北斗七星の一部かもしれない。
理加は自分の部屋の、勉強机の前の窓から夜空を見上げる時が一番ほっとする。月だけが見える日もある。それでも良い。
今日、初めて珠恵以外の
アーモンド・スウィート 一生の友達
これは二ヶ月前までの話し。正確には五十日前のことだった。今も気持ちは変わらないが、信じられなくなっている。
夕方の時間、家に少しでも早く帰ろうする人々の多い中央通りを神田駅に向かって、塾からの帰り道の秀嗣は自分の世界に入り周りを気にしないで歩いてる。。学校が終わって渡辺珠恵の両親が営っている塾に向かうと、早くても午後四時になる。珠恵のお父さんお母さんに、授業の理解が遅れているところを教わる
アーモンド・スウィート おでん屋を手伝う
柿境月姫の家はおでん屋をしている。月姫は学校から帰るとすぐに店を手伝う。お小遣いの為にでもあるし、お小遣いの為だけでもない。月姫は、ゆくゆくは食べ物商売をしたいと思っている。祖父、祖母は練り物屋を始め、父と母が祖父と祖母が作った練り物を活かすおでん屋を始めた。祖父、祖母が作る練り物も大好きだし、おでんも大好きなので、おでん屋を継いでも良いのだけれど、月姫はアルコールの匂いが好きに成れない。気化し
もっとみるアーモンド・スウィート 寄り道
渡辺理加は最近一人で居ることが多くなった。クラスで珠恵以外に話す友達はいないと言うのが正直な話し出だが、理加自身は認めたくない。
学校が終わったあとに放課後一人で帰って少しも面白くない。時々、校則違反だが寄り道をして帰る。大体が日本橋の大通りにある店を覗くことが多い。よく行くのが、一階に店舗があるお菓子屋で、ガラスのウィンドウ越しに飾られているお菓子を眺めるが好きで、寄り道をしている。
理
アーモンド・スウィート 幼馴染みですが、問題でも?
斎藤礼門土と桑原明安莉の仲は複雑である。たまたま5年2組のクラスメートだから恋人のように、クラス内はおろか学年の中で思われているが、違うと二人は思っている。そして傍目からみれば幼馴染みの男子と女子が仲良く連んでいるとも見えるだろう。しかし、本当の処は互いが相手が自分に気があるじゃないかと思っていて、それで一緒に居てあげてるつもりである。つまり幼馴染み以上恋人未満という宙ぶらりんの間柄で、なのに互
もっとみる