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高村薫 「マークスの山」

第二回目

 直木賞受賞作です。

 主人公には数年毎にマークスと名乗る別人格が現れ、殺人を繰り返します。親からの虐待、貧困などの生い立ち、重度の精神疾患が、殺人の背景にあります。かなり重くて悲惨です。並行して描かれるのが、喧々諤々、丁々発止が繰り広げられる警察内部です。怒号飛び交う男社会が忌憚なく書かれています。他の高村作品でも思いますが、彼女は骨太の社会派の作家です。

 マークスと対峙したのが警視庁の合田雄一郎警部補です。優秀で超絶クールガイ、かっこいいんですよ。高村作品には合田雄一郎シリーズがあって、「マークスの山」(1993年)「照柿」(1994年)「レディジョーカー」(1997年)「太陽の曳く馬」(2009年)「冷血」(2012年)と続きます。2019年最新作「我らが少女A」が発刊されて読みました。「マークスの山」では30歳前半の合田警部補も最新作では東京府中の警察学校の校長になっていました。このシリーズで必ず登場する加納祐介検事、合田の親友であり元嫁の双子の兄です。闘病中の加納元検事は今作品では多く出てきます。どうやら男同士の友情というより以前にはストイックな男同士の愛情があったようです。合田シリーズでは、前の作品にそれを匂わせているところがありましたね。確かに。というわけで硬い小説がジジイになってちょっと艶っぽくなって良かったです。笑
 艶っぽいといえば、高村作品では「李歐」も良かった。官能的な男同士の関係が底辺にあり、ちょっと萌えました。

 高村薫は政治的発言をする事も多く、「モノ言う作家」です。私は納得し腑に落ちることばかり。勉強になります。

「レディジョーカー」「黄金を抱いて飛べ」もお勧めです。


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