アダムスとは何だったのか【執筆:のり】

【概要】

エヴァ考察、アダムス編です。
まずアダムスの概要について。
アダムスは新劇場版の世界における始祖のようなものです。旧劇場版の始祖である第1使徒アダムに複数形のsがついてアダムスという名前になっていることからも、立ち位置については分かりやすいと思います。アダムがどういう存在なのかは、エヴァファンなら誰もがたどり着くこちらの動画をご覧ください。
アダムスは直接描写されることは1度もありませんでした。セカンドインパクトの回想において、光る巨人が4体写っていたシーンくらいで、他の登場といえば「アダムスの器」のように間接的な用語で現れているくらいです。
このような描写からは、「新劇場版世界ではアダム(っぽい存在)が複数いた」こと以外に何もわかりません。

では、順を追って説明していきましょう。

個人的なモットーですが、「無理があるものは使わない」というのを考察において意識しています。描写を読み解いて組み立てられる考察でなければ、悪い意味でミスリードや騙されたような感覚になって物語として面白くないからです。

【問題提起】

まず私が考えた出発点、そして皆さんに考えていただきたいのは「アダムスと槍はいくつあるのか?」という疑問です。
アダムスが複数体いるのであれば、そのアダムスたちはどこにいるのでしょうか?
旧劇では1本だったロンギヌスの槍は、なぜ複数本登場したのでしょうか?
そしてこの設定は、一体どのような意味を持つのでしょうか?

【アダムスを追う】

では、アダムスから掘り下げていきましょう。
私の考察のベースとなっているのは、アダムスの正体についてファンの間でそこそこ有名な説の1つで、それは
新劇のアダムス=旧劇のエヴァ量産機
というものです。
序~破に顕著ですが、新劇世界は旧劇世界から続いているループ展開の世界であることを匂わせる描写が多々あります。赤い海や月面の血痕(?)なんかはその代表例ですね。

では数を追いましょう。旧劇の量産機は5号機~13号機の合計9体でした。これにアダムスの数が合えばアダムス=量産機説の強力な裏付けになります。

・まず4体
SEELEが用意したMark09~Mark12までの機体は「エヴァオップファータイプ」と呼ばれる機体群であり、NHG(ヴンダー型の戦艦)に主機として組み込まれるために建造されました。このエヴァオップファータイプは明らかに他のエヴァ機体と挙動が異なっており、自由自在に姿形を変えたり、破損がすぐに修復したり、使徒特有の光線を使ったりします。
登場人物が何度もこのオップファータイプのことを「アダムスの器」と呼んでいることから、この4体はアダムスとカウントして間違いないでしょう。「アダムスの器」と言われているので、アダムスから魂が抜かれ、魂を「搭乗」させることで稼働できるエヴァとして建造されたのがオップファータイプだと考えられます。

・さらに4体
意外と見落とされがちですが、シンエヴァ後半、マリが操縦する8号機がオップファータイプ4体を捕食し、NHG戦艦を沈めるシーンにもアダムスの情報があります。ここでマリは沈みゆくNHG戦艦に向かって「ゆっくり眠りな、アダムスたち」と呟いています。
ちょっと不自然じゃないでしょうか。何せ声をかけた相手は冬月が死んだ後の無人の戦艦です。
デザインを担当された制作陣の方がNHG戦艦の構想案をTwitterで公開していらっしゃいました。その絵は巨人そのものでした。すなわち、戦艦が人型になる何らかの理由があったということです。
少し大胆な仮説に聞こえるかもしれませんが
NHGの建造にはアダムスが使われた
その4体はセカンドインパクトに使用されたアダムスの再利用
と考えれば、これらの描写や設定に説明がつきます。

・ラスト1体
これは簡単です。マリがハッキリと13号機のことを「アダムスの生き残り」と呼んでいます。13号機はアダムスのうちの1体を使って作られました。

以上がアダムスの追跡です。

序ラストにて、渚カヲルの棺桶は9個写されていました。
これは「新劇場版世界に関係のある渚カヲルはここからここですよ」という描写だと解釈できます。旧劇量産機には渚カヲルをベースとしたダミープラグが挿入されていたことを考えると、ここでもアダムスの要素が9個あることになりますね。さすがに偶然や無秩序の域を出ていると思わざるを得ません。旧劇量産機はやはりアダムスになったのだと言えます。
また、シンエヴァで無数の棺を写したのは、あれが物語に対するメタ的な展開だったからです。よく言われているようなミスリードではありません。エヴァという作品全体として、これだけのカヲルがいた、というループ表現ですね。

【Mark06の正体】

さて、勘のいい方は気づいているかもしれません。
そしてこうツッコミを入れたいことでしょう。
「おいおい、じゃあMark06は何なんだよ」と。
確かにMark06は、SEELEの仮面をつけた謎の巨人に装甲を装着することで建造された謎多きエヴァであり、ゲンドウ曰く(新劇世界の)エヴァと建造方法が違うとのこと。
しかし「巨人に装甲を着ける」建造は旧劇世界では一般的とされていた方法です。
さらに旧劇世界の情報を持っているであろうSEELEがMark06のことを「本物の神」と呼び、渚カヲルが搭乗した途端に覚醒状態へと変貌したことを思い出してください。旧劇世界の情報についてはゲンドウが「我々に開示されていない死海文書がある」と存在を匂わせています。
こういったことを考えると、ある事実が新たに浮かんでくるはずです。
そう。
Mark06は旧劇世界から持ち越されたアダムを使って建造された
ということです。Mark06の正体は旧劇世界のアダムだったのです。

【意外な合致】

アダムス=量産機説を掘り下げていくと、興味深いところにつながります。
それは、シンエヴァ後半におけるアスカの描写です。
シンエヴァで13号機に食われたとき、アスカはどのようになったか思い出してください。13号機側から「式波アスカのオリジナル&その足元にいる渚カヲル」が出てきて、不気味な笑みを浮かべた「式波アスカのオリジナル」がアスカを引き込みましたね。

あの13号機側から出てきたアスカはいったい何なのか、という問題を複雑に考える必要はありません。式波アスカのオリジナルなんて、惣流アスカ以外に考えられないからです。
問題となるのはもう一歩先です。
なぜ新劇場版の機体である13号機から、旧劇のキャラである惣流アスカが出てきたのでしょうか?

これについて自説があるので解説します。
旧劇場版Airのトラウマシーン、皆さんもよくご存じのはずです。
惣流アスカは量産機に食われましたね。全体について経緯を追えば、惣流アスカは旧劇量産機に食われ、新劇13号機から出現した、ということです。
いいですか?
惣流アスカ=「式波アスカのオリジナル」は量産機=アダムスに食われたのです。
この記事でここまで解説してきた内容を把握していただいていれば、もうお分かりでしょう。
惣流アスカの要素(魂?)は量産機に食われたことでその内部に取り込まれ、その状態のままアダムスとなり、さらには13号機の建造に使われたのです。

流れを表すと
惣流アスカが量産機Aに食われる

新劇場版世界に移り、量産機AはアダムスAとなる

アダムスAが13号機の建造に使われる

13号機から「式波アスカのオリジナル」が現れる

ということです。
旧劇でアスカ本体を食った機体が厳密に何号機かはわかりませんが、もしも新旧ともにアスカが「第13号機」に食われていたとしたら、物語として美しい対比になると思いませんか?
ただ、「まごころを、君に」ラストで惣流アスカが生還しているのも事実です。この話題に限りませんが、構造美だけを追うとどうしても新旧で細部のずれが生じますね…。

【槍の行方】

次は槍の行方を追ってみましょう。
シンエヴァでゲンドウとシンジがマイナス宇宙に入る際に、ゲンドウが「我々でない何者かが、アダムス、6本の槍、ゴルゴダオブジェクトを残した」というようなことを言っています。
我々でない何者かというのはSEELEのことで間違いないでしょう。神のことであれば神と呼べばいいからです。
新劇世界のSEELEはおそらくネブカドネザルの鍵によって使徒化しています。しかし知恵の実を失ったわけではないため、老衰で死ぬことはなくても人類補完の過程で消えてしまうという存在です。
そして、おそらく旧劇世界とのつながりを持っているか、あるいはSEELEそのものが旧劇世界のSEELEと同一の存在です。
そういうこともあって、ゲンドウたち新劇ネルフにとってSEELEは得体の知れない存在だったのです。

話を槍に戻します。
アダムスの時と同じく、数を追ってみましょう。
まず旧劇世界において、槍は何本存在したでしょうか。
答えは9+1=10本です。
1…リリスに刺さっていたオリジナルのロンギヌスの槍
9…エヴァ量産機が持っていた灰色のコピーロンギヌス
という内訳です。コピーロンギヌスもカウントしていることに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでは旧劇世界から新劇世界に移る中での変化に注目しているため、量産機とセットになっているコピーロンギヌスを数に入れることにそこまでの矛盾はありません。
10本という本数が、実はカギになってきます。

「いやいや、ゲンドウは6本だと言っているじゃないか。なぜ10本も槍があることになるんだ」とお思いになった人も多いことでしょう。
ところがこのようにカウントすれば、これまたうまくいってしまうんです。

ここで新たな仮説です。
NHG戦艦の建造には、槍が1本ずつ使われた
NHG戦艦には、光の翼を出現させる機能があります。この光の翼の出現という儀式は、セカンドインパクトと同じ方術であることがミサトの口から語られています。
つまりNHG戦艦にはインパクトを起こせるだけの材料が、トリガーとなる覚醒エヴァ以外全て揃っているということです。そこには当然、槍の要素があるはずです。
そして何より、NHGに槍が使われているとすれば、ミサトがヴンダーからガイウスの槍を作り出したことに説明がつきます。ミサトの発想はこじつけかもしれませんが、起きた事象自体は意味不明なご都合展開ではなくなるわけです。

逆転的な考え方ですが、新劇世界の槍が10本になるように内訳を考えてみましょう。
4…セカンドインパクトで消費
2…13号機が持っていた2本の槍(リリスに刺さっていた分とMark06が月から持ってきた分)
4…NHG戦艦の建造に使用され、船体の一部になっている

あたりが妥当でしょうか。
ネルフができた時点、というかゲンドウが自身の計画を始めた段階でセカンドインパクトは起こっているため、すでに4本が失われています。
そうするとゲンドウを始め(SEELEでない)人類が使える槍は6本ということになります。ゲンドウのいう「SEELEが6本の槍を残した」という発言にもつじつまが合いますね。

以上が、槍の経歴についての考察です。
槍の能力などまだ不明な点は多いですが、全く無理のない範囲でアダムス=量産機を補強しつつ槍を追跡できたと思います。

【説明が足りない部分】

以上のように説を展開していくと、登場人物のセリフや出来事の描写などに、矛盾とまではいかないものの、いまだに不明な部分がいくつか残ります。
たとえば
・冬月の言う「人工的なリリスの再現」とは何か?
・槍はなぜ/どのような基準で変形するのか?
といった疑問点です。
何かいい解決案や、面白い説などがありましたらぜひ教えて下さい。

【執筆者情報】

名前:のり
好きなアニメ作品はエヴァ、冴えカノ。レッドブルに漬かりながら生活しています。


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